W杯得点王「現役だからこそ伝えたい」 無料イベント開催、自費でプレゼント…原点となった母の存在

チャリティーイベントを開催した宮澤ひなた(左)と佳汰【写真:(C) MK Management】
チャリティーイベントを開催した宮澤ひなた(左)と佳汰【写真:(C) MK Management】

現役選手だからこそ伝えられる熱量 世界のトップ選手とピッチに立つ意味

 なでしこジャパン(日本女子代表)のMF宮澤ひなたが、兄の宮澤佳汰(久野FC・神奈川県2部)と『宮澤兄妹サッカーフェスタ in 寒川町』を12月25日に神奈川県寒川町で開催した。小中学生を対象とした参加費無料のチャリティーイベントは昨年6月にスタートして6回目を迎える。そこには、宮澤兄妹が「現役選手である今だからこそ伝えたい」という子供たちへの想いと、家族の絆が凝縮されていた。

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 イングランド女子1部のマンチェスター・ユナイテッドに所属する宮澤ひなたは、「引退してからではなく、現役中にピッチで感じるものをそのまま表現して、その雰囲気を(子供たちに)感じ取ってもらいたい」と熱く語る。

 21日にウインターブレイク前の最終戦を終えて帰国したばかりの彼女が放つ「現役選手としての熱」こそが、子供たちに伝えたいメッセージだ。欧州の名門チームでプレーし、なでしこジャパンで活躍する選手と、“一緒にサッカーができること”に意味を見出している。

 ほんの数日前までイングランドのウィメンズ・スーパーリーグ(WSL)やUEFA女子チャンピオンズリーグ(UWCL)でチームの中心として世界のトップ選手と渡り合ってきた選手と同じピッチでプレーする子供たち。ミニゲームでボールを追いかけると、超一流のスピードやテクニックに子供たちは「ものすごい速さだよ」「上手すぎる!」と嬉々としていた。

「子供たちに、サッカーだけでなく外で身体を動かすことやチャレンジする楽しさを、伝えられたらいいなと思います。半年に1回のサッカー教室は、自分にとってのモチベーションにもなっています。それが代表や普段のチームでのパフォーマンスにつながります。よりもっと多くの人にプレーを見てもらいたいという気持ちが強くなりますから」

半年おきのサッカー教室のため奔走して協賛金は寄付 原点は母親への感謝

 冬の中断期間と、オフシーズンの6か月おきに全国各地で開催しているイベント。兄妹で企画段階から携わり、行政や協賛企業とのやり取り、キッチンカーや用具確保などさまざまな手配や設営などにふたりは労を惜しまない。前日には自らも参加してのぼりを立てるなど準備を行った。参加費無料で用具不要としているのもこだわりだ。

「参加費や道具がないことが理由で参加を躊躇する方もいると思う。でも『サッカーが好きならおいでよ』と言える環境をもっと増やしたい」と、その理由を語る。協賛金は日本国内のサッカー格差を是正する団体へ寄付。参加者へ配るプレゼントはすべてポケットマネーから出している。

 このような思いの原点には、幼少期からサッカーに夢中になる兄妹をひとり親で支えてくれた、母親の存在がある。

 佳汰は「母はどれだけ忙しくても、必ず僕たち一人ひとりの時間に合わせて夜に2回、食卓にいてくれた」と、常に優しく見守ってくれたことを振り返る。ひなたも「母のおかげで本当に好きなことをやらせてもらいました。大人になってから、母が仕事を2つ掛け持ちしながら、どこに自分の時間があるんだろうというくらい、全てを笑顔でこなしてくれた凄さに気づきました。サッカー選手としてイベントができるのも、母のおかげです」と、感謝の気持ちでいっぱいだ。

来年の抱負を漢字一文字で 内気だった少女時代から自信をつかんで進む道

 2026年に向けて、ふたりは漢字一文字で抱負を語った。現在は地域リーグを主戦場にしている佳汰は、「戦」という字に想いを込めた「刺激し合えるライバルでもある妹に負けないよう「戦う」と決意で臨みます」と決意表明した。

 イングランドで3シーズン目を過ごしている宮澤ひなたは「進」という字を力強く書いた。「なかなか試合に出られなかった時期や、怪我(2023年12月の右足首骨折)をした時期が長くありました。でも、今年から試合に出始めて、チャンピオンズリーグにも出場できて、やっと1歩進めました。今はまだ、スタート地点に立っただけかなと思って、次に進むという意味もあります」と語る。真剣な表情で、続けて想いを吐露した。

「来年は、(W杯の出場権をかけた)アジア杯もありますし、まだまだ先に進みたい。ここからが勝負だと思っています。このイベントもまだまだ進めていきたいですし、いろんな意味を込めて、『もっともっと前進していきたい』と『進』という字にしました」

 その様子を見ていた兄の佳汰は、「内気で全然喋らなかったんですよ」と、幼き日の妹について思いを馳せた。2年前に移籍したイングランドで言葉の壁にぶつかりながら「話すことの大切さ」を学んだという。2023年の女子W杯得点王となり、今やなでしこジャパンの中心としてプレーすることで、子供たちの憧れの存在として、自らの言葉で発信することの責任を強く自覚している。

「自信がついてきたのもあります。代表では年齢的に若い子が増えてきて、彼女たちがやりやすい環境作りをしたいし、負けていられないという複雑な感情があります。自分の責任感がピッチ内外関係なく、今まで以上に変わってきていると感じています」

 クリスマスに約120名の子供たちに夢を与えた26歳。サッカーを通じて誰かを幸せにするという使命感とともに、2026年も自らが信じた道を突き進んでいく。

(砂坂美紀 / Miki Sunasaka)



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