調子乗り世代が集結「期待に応えないと」 柏木陽介が見据える「岐阜の未来」…恩返しの”引退試合”

引退試合を迎える柏木陽介氏【写真:FOOTBALL ZONE編集部】
引退試合を迎える柏木陽介氏【写真:FOOTBALL ZONE編集部】

引退を決断してから2年…柏木陽介氏が引退試合を迎える

 2023シーズン限りで現役を引退した元日本代表MF柏木陽介氏の引退試合が12月21日、FC岐阜の本拠地・岐阜メモリアルセンター長良川競技場で行われる。この一戦は「ABEMA」で無料生中継されるなか、柏木氏が「FOOTBALL ZONE」の取材に応じ、引退試合への思い、見どころについて語った。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・上原拓真)

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 FC岐阜に所属した2023シーズンで現役引退を決断した柏木氏。引退後の2024年にFC岐阜のクラブアンバサダーに就任し、岐阜にマイホームも建てた。サッカー以外では、鵜飼観覧船の船頭を務めるなど、岐阜県のため精力的に活動する日々を過ごしている。

 引退後に驚いたことは各地で開催されているサッカーイベントの多さ。「ビックリしています」としながらも、「サッカー界は知らないところでも盛り上がっている」とサッカーの盛り上がりを実感することが多いという。

「今までだったら、現役時代には触れ合う機会がなかったけど、全国各地でそういう機会を作って、サッカーのレベルを上げていきたいんだなみたいなところもすごく伝わって。それぐらいサッカーの盛り上がりを実感してるってところが一番、印象的ですね」

 そのなかで、12月21日に岐阜の本拠地・岐阜メモリアルセンター長良川競技場で柏木氏の引退試合が行われる。かつて、浦和レッズで共闘した名手たち、元日本代表の名手たち、岐阜にゆかりのあるレジェンドも駆けつける。

 参戦するメンバーは「YOSUKE FRIENDS」と「KASHIWAGI GENERATIONS」の総勢49人。浦和時代に共闘したミシャことミハイロ・ペトロヴィッチ監督が「YOSUKE FRIENDS」の指揮を執り、岐阜での監督経験もあるラモス瑠偉氏が「KASHIWAGI GENERATIONS」をまとめる。

 阿部勇樹氏、興梠慎三氏ら浦和時代にピッチで共闘したメンバーを中心にした「YOSUKE FRIENDS」と、槙野智章、内田篤人、安田理大といった日本代表で共にプレーし、「調子乗り世代」と、同世代の代表組を中心とした「KASHIWAGI GENERATIONS」が対戦する構図になる。

 調子乗り世代と言えば、ゴールパフォーマンスにも期待が高まるが、「年齢的に恥ずかしい」とニヤリ。それでも、「期待には応えないといけないかな」。とっておきのパフォーマンスが披露されるかもしれない。

 柏木氏は前後半に分かれ、2つのチームでプレーする。「本当に来てくれる全員とプレーしたい」。両チームの選手には「真剣にやってほしいな」と真剣勝負を望んだ。

「FRIENDSで言うとミシャサッカーを作り上げたメンバーで、それを存分に体現してほしい。調子乗り世代とか、僕らの同世代は、みんな仲が良くてコンビネーションの部分が、時間が経っても負けてないと思っているので。そういうのがぶつかり合って、『サッカーってすごいな』とか。『普段一緒にプレーしてなくても、繋がってやれるのがサッカーのいいとこだよね』というところを見てほしい」

 そして、根底にあるのは、再起のきっかけとなった岐阜への思いがある。「岐阜でやらなきゃ意味がない」。この引退試合のキービジュアルにも差し込まれた「仲間に感謝、岐阜から未来を」という言葉のとおり、この一戦を岐阜への恩返しの1つにしたいと力を込める。

「たくさんの人の支えがあってここまでやってこれたし、たくさんの人が『柏木陽介だから』と言って来てくれる。やっぱり、自分は岐阜で再起できたと思っています。家を建てて岐阜に住んでるってとこも含めて、岐阜でやらなきゃ意味がないし、名手と言われる選手たちが集まってこういう試合ができるのが1つのきっかけというか。僕から岐阜の未来を、どういう風にみんなで作っていくのかとか、どういう風に考えていきたいのかっていうのが、多少なりともみんなが想像できるような日(試合)になればいいかなと思っています」

 なかでも、「今でも合うのかな」と、浦和時代にホットラインを築いた興梠氏とのプレーを心待ちにしている。現役を退いた選手も多く、「今でもどれだけ合うのかなっていうところも試したい」とワクワクした気持ちをのぞかせた。「各々の特徴を生かせるような、みんながそれを引き出し合えるような試合になればいいかな」と、この一戦を展望する。

 引退試合に向けては、岐阜ユースの練習に参加し、コンディションを整えているという柏木氏。「ユースの子たちに歯が立たない」と現役時代との差を痛感する一方で、「キレを出せる選手ってあんまりいないとは思うんで、なんとか大丈夫かな」と笑った。

 最後に、「スタジアム全てがその日、一日中笑顔になってもらうために僕が1番やらなきゃいけない」と、最後の90分に向けて決意を口にした。

「今のサッカーってすごくハードな試合が増えてきて、笑顔を見せられる時間が少なかったりする。昔だとちょっと相手チームでもふざけ合いながら、それが笑顔につながったりすることもあった。ふざけるというか、お互いこう削った後でもなんか笑いながら『ナイス』と声をかけるみたいに、そういうところもサッカーのすごい良さだと思っているので、そういう相手との繋がりも大事にしたいです。

 プレーしてる選手たちが真剣にやりながら、笑顔でやっているところを見せることで、見ている人たちも自然と笑顔になって、『今日見に来てよかった』『引退してもやっぱ技術は落ちないんだな』『やっぱオーラあるよね、カッコイイよね』というところも含めて、そういう部分も見てもらえたら一番嬉しいかなと思います」

 柏木氏にとって岐阜での再スタート。「最初の打ち上げ花火っていうわけじゃないですけど、そんなぐらいの気持ちではいます」。新たな一歩を踏み出す90分となる。

(FOOTBALL ZONE編集部・上原拓真 / Takuma Uehara)



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