森保J戦士も…「今季Jの驚き選手」を厳選 JFLからの苦労人、得点ランク独走日本人FWも

J1〜J3を対象にサプライズベストイレブンを選出した【画像:FOOTBALL ZONE編集部】
J1〜J3を対象にサプライズベストイレブンを選出した【画像:FOOTBALL ZONE編集部】

J1〜J3から驚きをもたらした選手を厳選

 1年間にわたる熱い戦いが繰り広げられた2025年のJリーグ。筆者の総括に代えて、驚きをもたらした“サプライズ11”を選出した。

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梅田透吾(清水エスパルス)

 権田修一(現・ヴィッセル神戸)に代わる正GKとして当初は沖悠哉がゴールマウスを守っていたが、7月20日の横浜FC戦で今シーズン初めて、リーグ戦のスタメンに。そこから驚異的なセーブを連発して、昇格組である清水の勝利を支えた。終盤戦に大量失点を喫した試合もあるが、彼の存在抜きに清水の残留は語れない。怪我に泣かされなければ、もっとブレイクは早かったかもしれないが、さらにスケールアップしていくために、試合に出ながら経験を重ねていきたい。

鷹啄トラビス(水戸ホーリーホック)

 駒沢大からプロ入りがかなわず、病院で介護の仕事をしながらJFLのTIAMO枚方でアピールを続けた。そして念願の加入を果たした水戸で、開幕時はベンチ入りできるかできないかという立場だったが、J2第9節の札幌戦からセンターバックのスタメンに定着。以降、累積警告で出場停止となったホームの山口戦を除く全ての試合でフル出場を果たした。身体能力に加えて、集中力の高さが目を引く。JFLからJ2、J1へとステップアップを果たしたのは努力と信念の賜物だろう。

新井一耀(V・ファーレン長崎)

 ジェフ千葉から移籍した昨年6月に、右前十字靭帯断裂および右膝外側半月板断裂という大怪我で長期離脱。復帰まで半年以上を要した。しかし、そこからポジションを取り戻すと、高木琢也監督に交代してからも、ディフェンスリーダーとして守備を安定させた。そして悲願のJ1昇格。奇しくも過去5シーズン過ごした古巣の千葉がプレーオフにより昇格したが、32歳になってなお成長を感じさせる新井が、J1でどこまで戦えるかは楽しみだ。

安藤智哉(アビスパ福岡)

 今治(当時J3)からポテンシャルの片鱗は見られたが、J2大分、さらに福岡で覚醒的にパフォーマンスを伸ばして、日本代表にまで上り詰めた。顎の負傷を保護するために装着したヘッドギアが話題を集めた部分もあるが、1対1の強さはもちろん、迫力のある持ち上がりなど攻撃面も評価を高めている。ドイツ1部のザンクト・パウリ移籍が秒読みと報道される安藤。W杯の最終メンバーに選ばれるかも注目される。

須貝英大(京都サンガ)

 甲府時代はキャプテンも務めたが、J1初挑戦となった鹿島では2年続けて、なかなか定位置を掴めなかった。しかし、出番を得れば能力の片鱗は見せており、京都ではサイドの「アクセル」として攻守の運動量と勝負強さが発揮。上位躍進に大きく貢献した。あわや優勝というところまで行っただけに、悔しさも残るシーズンになったかも知れないが、間違いなく須貝という選手の価値を押し上げるシーズンになった。

中心選手として活躍をした小泉佳穂【写真:荒川祐史】
中心選手として活躍をした小泉佳穂【写真:荒川祐史】

J3優勝&昇格に導いた立役者

中川敦瑛(柏レイソル)

 昨年から特別登録選手であり、大卒ルーキーとして飛躍を期待するファンサポーターも少なからずいたかも知れない。しかし、最後まで優勝争いを演じるチームの中盤でフル稼働するまでの活躍はサプライズだろう。序盤戦でブレイクし、日本代表にまで選ばれた熊坂光希の負傷離脱は柏にとって大きなピンチになり得た。しかし、タイプの異なる中川が違った持ち味で攻守に躍動して、流動的なスタイルを進化させた感すらある。

河井陽介(カターレ富山)

 J2昇格の立役者の一人とも評価されていたが、今シーズンは前半戦なかなか出番がないまま小田切道治前監督が解任。安達亮監督になってからも数試合はベンチに入るか入らないかという状況が続いたが、残留をかけたラスト10試合で中盤の引き締め役であると同時に、経験豊富なテクニシャンらしいパスワークでチャンスの起点となった。90分フル出場した最終節は4-1で秋田に勝利“富山の奇跡”を演出した。その後、契約満了が伝えられたが、36歳MFの奮闘に、惜別の声が止まない。

細井響(横浜FC)

 タイトな守備と非凡な走力を生かした幅広いカバーリング、そして彼の代名詞となった高速のロングスロー。粗削りながら、全てがハイスケールなプレーぶりで、新潟医療福祉大学からの特別指定選手にして、早くもプロの舞台でインパクトを残した。結果チームはJ2に降格してしまったが、正式な1年目から圧倒的な活躍を見せることができれば、選手としての飛躍の道もひらけてくるだろう。

小泉佳穂(柏レイソル)

 浦和の恩師であるリカルド・ロドリゲス監督が就任した柏で、1年目にして戦術リーダー的な存在に。可変性の高いポゼッションのクオリティを高めるだけでなく、ゲームコントロールでもセンスを発揮した。7得点4アシストという数字も立派だが、それ以上に攻撃のリズムを作り、アクセントを付ける仕事ぶりが素晴らしかった。キャリア初となるベスト11は当然の評価だろう。

田中パウロ淳一(栃木シティ)

 松本山雅を契約満了となったのが2022年の冬。合同トライアウトにも参加したが、直後に所属先が決まらず、SNSで自己PRを続けた。当時、関東リーグだった栃木シティに加入が正式に決まったのは翌年の2月。そこからJFLを勝ち抜き、再挑戦となったJ3で鋭い仕掛けと決定力を見せて、11得点14アシストを記録。J3昇格1年でのリーグ優勝とJ2昇格に導いた。

橋本啓吾(テゲバジャーロ宮崎)

 昨シーズン二桁得点の12ゴールを記録したが、そこから25得点に倍増。ダントツのJ3得点王となった。圧倒的な競り合いの強さに加えて、クロスに合わせる技術が高く、ゴール前のファーサイドは“橋本ゾーン”とも言うべきもの。ショートカウンターからの中央突破でも衝撃的なゴールシーンを生み出した。昇格を決めたプレーオフの決勝は体調不良で欠場となったが、大エースと呼べる活躍だった。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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