森保Jを苦しめる難敵 鉄壁の守備だけじゃない…アフリカの“曲者”が持つ意外な武器

チュニジアはアフリカ予選を無失点で突破した
来年の北中米ワールドカップ(W杯)のF組はオランダ、日本、チュニジア、そして欧州プレーオフB(ウクライナ、ポーランド、スウェーデン、アルバニアの勝者)で構成される。4チームすべてに一定の実力があり、カタールW杯では無かった“3位抜け”も含めて、どこにもチャンスがある。
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前回はW杯優勝経験国ドイツ、スペインが同組で、日本はチャレンジャーの立場だった。それがドイツ、スペインを撃破した一方で、2試合目でコスタリカに敗れたことを考えても、本大会はなかなか下馬評通りに行かないものだが、今回は本命のオランダも含めて実力差がより拮抗していると見られるだけに、また違った難しさになりそうだ。
試合の環境としてはダラスで初戦を迎え、そこからメキシコのモンテレイに飛び、再びダラスに帰ってくる流れは移動距離を含めても悪くない。モンテレイは標高500メートルほどだが、メキシコシティやグアダラハラに比べると、特別な高地対策が必要なほどではない。暑さに関してもNFLのカウボーイズが本拠地とするダラスのスタジアムは開閉式で、モンテレイは現地時間の22時キックオフということで、そこまで気にする必要はない。ただし、キックオフの時間が大きく変わってくるところは要注意だろう。
初戦の相手は前回ベスト8のオランダだ。元オランダ代表のレジェンドであるロナルド・クーマン監督が率い、欧州予選では安定した戦いぶりを見せた。中盤の中心にフレンキー・デヨング(バルセロナ)を置き、ボール保持を基本としつつ、サイド攻撃やクロスからのフィニッシュにも強みがある。カタール大会でブレイクしたコーディ・ガクポ(リバプール)の得点力は注目ポイントだが、最前線から攻撃を牽引するメンフィス・デパイ(コリンチャンス)、堂安律のPSV時代の同僚であるドニエル・マレン(アストン・ビラ)の警戒も怠れない。
最終ラインはフィルジル・ファン・ダイク(リバプール)とマタイス・デ・リフト(マンチェスター・ユナイテッド)のセンターバックが高い対人能力、卓越した状況判断で守備を安定させながら、攻撃的な中盤を支える。日本にとっては、デ・ヨングの自由を与えないことが重要だ。中盤のプレッシングとボール奪取をどこまで行えるかが、試合の流れを左右するだろう。前半からポゼッション合戦に付き合うか、前回大会のように前半は耐えて後半のギアアップを狙うか、そうした試合運びも問われる。
第2戦はモンテレイでチュニジアと対戦する。FIFAランキングこそ40位と高くはないが、アフリカ予選を9勝1分、無失点で突破した守備組織の完成度が高い。ただ予選後の親善試合を見ても、組織的に守備を固めるだけでなく、中盤の核であるエリス・スキリ(フランクフルト)など、サイドチェンジを起点としたダイナミックな攻撃やハンニバル(バーンリー)による鋭い縦パスなど、多様なアプローチを持つ。
オランダ戦に比べて、日本がボールを持つ時間が長くなる試合展開は容易に予想できるが、その分、背後のリスク管理は常に求められる。スキリやハンニバル、キャプテンマークを巻くフェルジャニ・サッシ(アル・ガラファ)から一発でフィラス・シワト(クラブ・アフリカン)ら前線の屈強なアタッカーに渡ってしまうと、気が付けば日本の守るゴールネットが揺らされているという危険もある。またセットプレーの得点力が高いチームでもあるので、なるべくチャンスを与えないことに加えて、いざ与えた時の耐久力も問われてくる。
第3戦は6月25日、再びダラスで欧州プレーオフBの勝者と対戦する。どのチームが勝ち上がっても対策が難しい相手になるだろう。ただ、世界一を目指す森保ジャパンから見ると、ベスト8に輝いた2006年W杯から5大会ぶりの出場を目指す、FIFAランキング28位のウクライナを筆頭に、ポーランド、スウェーデンという欧州の“準列強国”はどこが来ても、決勝トーナメントを戦い抜くための格好の指標になりうる。最も不気味なのはアルバニアかもしれないが、おそらく森保ジャパンのスタッフが来年3月の欧州プレーオフに現地入りして、しっかりと分析するはずだ。
森保ジャパンは優勝を目標として掲げる。1位または2位で突破した場合は、ラウンド32で優勝候補のブラジルか前回ベスト4のモロッコと対戦する可能性が高い。一方で3位通過の場合はラウンド32で、開催国(アメリカ、メキシコ、カナダ)の組の1位やE組のドイツと当たる可能性も生じるが、最初から“3位抜け”を狙うプランは森保監督にも選手にも無いだろう。
自分たちの強化をしながらも、対戦相手の動向を探る。その両面をいかに精度高くやっていけるか。ここから7か月が森保ジャパンの躍進に直結すると言っても過言ではない。
(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)

河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。













