“史上最速”から歴史的勝利まで…森保Jの13試合から識者が厳選 2025年に価値を高めた5選手

鈴木淳之介は最も評価を高めたセンターバック
森保ジャパンは来年の北中米W杯に向かう2025年の活動を、ボリビア戦の勝利で締め括った。史上最速でW杯出場を決めたバーレーン戦から“国内組”で挑んだE-1選手権、9月のアメリカ遠征、10〜11月シリーズを合わせて13試合。この間には初招集から台頭した選手もいれば、常連でありながらさらに成長を示し、チームでの重要性を高めた選手もいる。今回はテーマ別に森保ジャパンで価値を高めた5人を取り上げる。
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FW上田綺世(フェイエノールト)
2025年の代表戦では6試合で2得点1アシスト。その数字以上に、力強いポストプレーやゴールに向かう危険なオフ・ザ・ボールの動きで、多くの得点シーンに関与してきた。下半期はオランダリーグでの好調を代表のパフォーマンスにも還元。ブラジル戦では歴史的逆転勝利の3点目を決めた。小川航基(NECナイメヘン)、町野修斗(ボルシアMG)と良い競争関係にあるが、今や“頼れるエース”と呼んでよい存在だ。本人はストライカーとしてのさらなる成長とともに、W杯の本大会まで、まず何より大事なのは「怪我をしないこと」だと強調する。上田が万全な状態で本大会に臨むことは、世界一を掲げる森保ジャパンの躍進に欠かせない要素の1つだろう。
DF鈴木淳之介(コペンハーゲン)
2025年に最も評価を高めたセンターバックと言っていい。湘南ベルマーレでの活躍を受け、すでに突破を決めていた6月の最終予選2試合に招集されると、インドネシア戦で3バックの左に入り、圧巻のボール奪取と前向きなビルドアップで存在感を示した。その後、海外挑戦を表明してデンマークの名門コペンハーゲンへ移籍。9月のアメリカ遠征は負傷の影響で入らなかったが、10月シリーズではパラグアイ戦、そして歴史的逆転勝利となったブラジル戦に連続フル出場。特にチェルシーで活躍する18歳の逸材エステバンを封じたことは大きな話題となった。ガーナ戦ではセンターバックから左ウイングバックにポジションを移すテストも。伊藤洋輝(バイエルン)、町田浩樹(ホッフェンハイム)ら“カタール組”が怪我から復帰してきても、ハイレベルな競争を続けていけるだろう。
GK早川友基(鹿島アントラーズ)
終盤戦までJ1首位を走る鹿島で、度重なるビッグセーブと正確なロングフィードを武器に評価を上げた。国内組で臨んだE-1の中国戦で代表デビューし、2-0の勝利と優勝に貢献。フルメンバーが揃った9月、10月シリーズも続けて招集され、鈴木彩艶(パルマ)、大迫敬介(サンフレッチェ広島)という日本のトップレベルのGKから大きな刺激を受けた。その2人が欠場した11月シリーズではガーナ戦、ボリビア戦のゴールマウスを守り、2-0、3-0の完封勝利を支えた。ここまで代表での失点はゼロ。優れた観察眼と、プレーの流れに応じた的確なポジショニングが安定感の源になっている。代表活動から多くの刺激を受ける中で、将来的な海外挑戦という選択肢を否定してはいないが、成長のために何が必要かを冷静に判断していく姿勢を示している。
ロス五輪世代の大型ストライカーも選出
FW後藤啓介(シント=トロイデン)
ジュビロ磐田時代から森保監督が注目していた大型FWは、ベルギーで着実に成長を見せ、今年最後の活動となった11月にA代表の扉を開いた。191cmのサイズを生かすだけでなく、運動量にも自信を持つ。ガーナ戦は後半30分から1トップ、ボリビア戦は後半37分から左シャドーで投入。「失点ゼロで終える」という監督の使命を受け、守備のタスクを精力的に遂行しつつ、攻撃でも可能性を感じさせた。21歳の北野颯太(ザルツブルク)、19歳の佐藤龍之介(ファジアーノ岡山)とのヤングアタッカー・トリオは明るい未来を感じさせた。ガーナ戦では菅原由勢(ブレーメン)のクロスに飛び込み、ボリビア戦では上田・町野と並ぶ“3タワー”が誕生。遠藤航(リバプール)を追い越す動きからポケットに侵入した板倉滉(アヤックス)に連動し、ゴール前で合わせに行ったが、惜しくもボールは来なかった。与えられたチャンスで結果を残せなかったことを本人は悔しがるが、上田などから得た大きな刺激を胸に、まずはベルギーでのゴール量産を狙う。
MF鎌田大地(クリスタル・パレス)
前向きなパスセンスを存分に発揮していたカタールW杯までの第1次・森保ジャパンから、さらに進化を見せているのが、幅広い状況判断とプレー選択の質だ。最終予選はシャドーで出場することが多かったが、9月のメキシコ戦ではキャプテン遠藤航(リバプール)とボランチを組むなど、鎌田が言うところの“6番”の役割を担う機会も増えている。8番と6番、試合の中で時間帯に応じて2つのポジションをこなせるため、シャドーに選手交代が多い森保監督にとって90分を計算しやすい存在だ。クラブでもボランチがメインポジションだが、代表ではビルドアップの中心を担いながら、よりゴールに向かうプレーが増える。ボリビア戦の先制点は、中盤での起点からタイミングよく攻め上がり、久保建英(レアル・ソシエダ)のパスを胸トラップで収め、そのままフィニッシュに持ち込んだ見事なゴール。代表での責任感も増し、南野拓実(モナコ)、堂安律(フランクフルト)とともにチームを引っ張る存在になっている。
(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)

河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。





















