決勝に敗れて涙「親にも感謝」 Bチームから這い上がった苦労人…後輩に示した「何百回の自主練」

市立船橋3年生MF小林空翔
第104回全国高校サッカー選手権の都道府県予選も佳境に入り、各地では代表校が決まり始めている。ここでは全国各地で繰り広げられている激戦の主役たちのエピソード、プレーなどをより細かくお届けしていきたい。
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第17回は千葉県予選準決勝、流通経済大柏vs市立船橋のビッグカードから。共にプレミアリーグEASTに所属し、『昨年度準優勝校vs一昨年度ベスト4』という全国大会決勝でもおかしくないビッグカードは、延長戦までもつれ込む激闘の末に4-3で流通経済大柏に軍配が上がった。この試合の途中からキャプテンマークを巻いた3年生MF小林空翔は下から這い上がってきた『不屈の男』だった。
「自分としても『僕はこれくらいできるんだな』と思えたし、送り出してくれた親にも感謝しかありません。成長した姿をピッチで見せられて良かったと思います」
試合後、小林は目に涙を浮かべて言葉に詰まりながらこう思いを口にした。左ウィングバックとしてスタメン出場をした彼は、立ち上がりから何度もスプリントを繰り返して攻守においてハードワークを続けた。リードを広げられても、ひたすらボールに食らいつき、守備で身体を張って、攻撃にもロングスプリントをしてカウンターに厚みをもたらした。
ハーフタイムには交代を告げられたMF小川夢成からキャプテンマークを託されると、タイムアップのホイッスルが鳴り響くまで、最後まで気丈にかつ勝利への執念を持ってピッチ上のリーダーであり続けた。
「どんなにうまく行かなくても、市船サッカー部としての誇りが僕らを支えてくれたと思います。負けたことは本当に悔しいですが、今までで一番自分らしさが出た試合でしたし、見ている人たちを熱狂させられるような、感動させられるような試合ができたと思います」
涙を流しながらも彼がこう口にするには理由がある。千葉県出身の彼はウィングスU-15からずっと憧れていた市船の門を叩いた。
しかし、昨年まで千葉県1部リーグに所属するBチームの試合も満足に出られなかった。高校3年生になった今年はBチームのキャプテンに就任。Aチームに上がることもあったが、前期はプレミアリーグEASTのベンチ入りすら叶わなかった。それでも彼は一度も折れることはなかった。
「僕は技術がない分、みんなより走って戦わないといけない。だからこそ、出られないのは頑張りが足りないし、周りの信頼を掴めていない証拠。もっと走る、もっと戦うということを常に頭に入れながら練習に臨んだし、武器を身につけないといけないと思って、左利きなので左足のキックを自主練などで何百回も繰り返し蹴って磨いてきました」
Aでベンチに絡めなくても、Bに落ちてきても、彼は一切ネガティブな雰囲気をチームに持ち込まずに、練習では人一倍声を出して周りを盛り立ててきた。この真摯な姿勢と、磨いてきた運動量、ハードワーク、左足のキックが評価をされ、プレミアEAST後期開幕からスタメンに大抜擢。そこからガッチリとレギュラーの座を掴み取ってみせた。
第15節の鹿島アントラーズユース戦ではAチーム初ゴールをマーク。続く第16節の青森山田戦では初のAチームでキャプテンマークを巻くと、そこから選手権予選が始まるまで全てのリーグ戦でキャプテンマークを託されるまでになった。
「どの立場でもチームのためにやり切る。こうしてキャプテンマークを任せてもらえるのは、僕としても誇らしいことですし、監督やスタッフから信頼を得られるのは嬉しい。もちろんプレミアで1勝もできていないことや、こうして選手権予選もここで負けてしまったことは悔しいし、責任を感じます。でも、後輩にこうやってずっとBチームにいても、最後にこういう立場としてピッチに立つこともできるんだよと示せたのは誇りです」
トータルで見ると苦しい3年間だったかもしれない。だが、彼は不断の努力によって大きな教訓を得ることができた。
「どんな状況に置かれても、やり続けることの大切さ。苦しくても、諦めないで自分を信じてやり続けることの大切さ。市船で学んだことをこれからも生かしていきたいと思います」
大学でもサッカーを続けるつもりだ。この先、サッカー選手としても、一人の社会人になっていっても、この教訓が彼の人生を逞しく支え続けていく―。
(FOOTBALL ZONE編集部)



















