札幌U-18の昇格を断り→強豪校へ進学 リーグ降格、全国逸で不甲斐なさ痛感も「来てよかった」

市立船橋高校の佐々木瑛汰【写真:安藤隆人】
市立船橋高校の佐々木瑛汰【写真:安藤隆人】

市立船橋2年生FW佐々木瑛汰

 第104回全国高校サッカー選手権の都道府県予選も佳境に入り、各地では代表校が決まり始めている。ここでは全国各地で繰り広げられている激戦の主役たちのエピソード、プレーなどをより細かくお届けしていきたい。

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 第16回は千葉県予選準決勝、流通経済大柏vs市立船橋のビッグカードから。共にプレミアリーグEASTに所属し、『昨年度準優勝校vs一昨年度ベスト4』という全国大会決勝でもおかしくないビッグカードは、延長戦までもつれ込む激闘の末に4-3で流通経済大柏に軍配が上がった。この試合、市船の最前線で豊富な運動量と切れ味鋭いドリブルと裏抜けを繰り返していた2年生FW佐々木瑛汰の想いとは。

「応援してくれるみんながいたし、背中をずっと押してもらっていた。2点を早い段階で決められても絶対にチャンスは来ると思っていましたし、諦めないでやれはいけると思っていました。それは僕だけではなく、みんなが絶対に逆転できると信じてプレーをしていました」

 1-3で迎えた後半にチームに勢いをつけたのは佐々木だった。まずは後半2分、右サイドを突破したFW勝又悠月の中央へグラウンダーのクロスに対し、ファーサイドから巧みに回り込んでフリーに。シュートはミートの瞬間にボールがイレギュラーした影響で、シュートは大きく枠の上を外れていった。ビッグチャンスを逃し、その場でうずくまり大きく頭を抱えたが、「顔を上げてもう一度スタンドの仲間を見たら勇気が湧いてきた。『次は絶対に決める』と気持ちを立て直すことができた」と、すぐにゴールに向かって集中力を研ぎ澄ました。

 直後の後半3分、DFラインのパス回しから左CB野地透生が前線へロングフィード。これが相手のGKとDFの間に落ちると、すぐに佐々木とFW山本一誓がプレッシャーをかけに行った。飛び出してきたGKに対し、2人の圧を受けながら必死に戻ってきたDFがクリアを試みるも、ボールをミートできずにGKの後ろにボールをこぼすと、スピードを一切緩めなかった佐々木が全速力で追いついてワンタッチで無人のゴールに押し込んだ。

「ボールがバウンドして山本くんも競り合ってくれる姿を見て、『自分が追いついても、こぼれ球であっても、絶対に俺が決める』という強い思いを持って走ることができた。自分のところに転がってきたので、もう先に触るために突っ込みました」

 このゴールで流れを奪い返した市船は山本がPKを決めて、3-3。ついに追いついた。延長戦にもつれ込んでも、彼の運動量、スプリントは一切衰えることなく、激しいフィジカルコンタクトの中でも何度も立ち上がって、ボールに食らいついた。

 だが、気迫も届かず、延長後半アディショナルタイムに決勝弾を浴び、その直後に佐々木もピッチを後にした。タイムアップの瞬間をベンチから見つめることしかできなかった。

「3-3に追いついた後にひっくり返す点を決められなかったことが本当に悔しいです。情けないです」

 悔しさと共に自分の不甲斐なさが次々とこみ上げてきた。

「試合を通じて、収めるべきところでのボールロストがあった。当られてバランスを崩してしまったり、倒れてしまったりして収められないようじゃ上のレベルに行った時に通用しなくなる。もっとフィジカルの部分を含めて、自分を見つめ直していかないといけないと思いました」

 今年は苦しい1年だった。インターハイ出場を逃し、プレミアリーグEASTでは18試合を消化して2分16敗と1勝も挙げられないまま来季のプリンスリーグ関東1部降格が決まった。そして今回、2年連続で選手権予選準決勝敗退を味わった。

「悔しさしかない1年でしたが、市船に来て良かったと思っています」

 中学時代まで地元の北海道で過ごした。北海道コンサドーレ札幌U15に所属し、U-18昇格の話もあったが、高校サッカーに憧れて市船にやってきた。その意思があるからこそ、今年1年間の苦しみも前向きに受け止められた。

「本当にうまくいかないことが多いですが、北海道では味わえなかったものがたくさんあった。得たものはチームに対する思い。チームが勝つことが一番で、自分のやりたいことよりもみんながやるべきことをやらないと勝てないというのを学びました。

 正直、中学までは自分勝手なプレーをしていたのですが、ここではそれは通用しない。自分勝手だけでは点も取れないですし、いつか大きな壁にぶつかると思っていました。市船は守備がしっかりできないと、いくら技術があっても試合に出ることはできない。体力面をつけないとたとえ試合に絡めても何もできないまま終わる。自分に対する厳しさ、仲間への感謝、献身性という面はここで一番伸びたと思います」

 数々の言葉の裏には覚悟と感謝がにじみ出ていた。来年こそ絶対的なエースとしてチームを勝利に導くゴールとプレーをする。強い義務感と責任感を持って、北海道からやってきた多彩な万能型アタッカーは飛躍の一年に向けて、再び走り出した。

(FOOTBALL ZONE編集部)

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