日本代表FWが目指す「9.5番」 ドイツで磨いた分厚さ…上田綺世にも負けない“武器”

町野修斗がドイツで高めたフィジカル「身体ができてきた」
北中米ワールドカップ(W杯)まで残り7か月。大舞台でのまだ見ぬ景色を目指して、森保ジャパンは11月に今年最後の2連戦を迎える。W杯へ向け、強い気持ちを持つ日本代表FW町野修斗がFOOTBALL ZONEのインタビューに応じた。(取材・文=林遼平/全3回の3回目)
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欧州に渡って3年目、町野修斗は苦難の日々を乗り越えドイツの地で確かな成長を遂げてきた。
もともと高い能力を見せていたゴール前のクオリティーに加え、ポジショニングや作りのところ、フィニッシュの部分でボックス内に入っていく動き出し、そして第2回で取り上げたようにクラブから要求されたインテンシティーの高さや守備の練度を含め、さまざまな面で一段とレベルを上げてきた。Jリーグ時代を知る人ならば、ひとつひとつのプレーの質に確かな変化が出てきていることが分かるはずだ。
欧州に渡った当初は筋トレの量にも驚いたようだ。日本との違いに戸惑うことも多かったというが、その積み重ねが今の分厚い身体を形成するに至った。
「試合に90分出たあとにスクワットするの? みたいな感じでした。たぶん体重も2、3キロ増えていると思います。(欧州でより)筋トレをするようになってから、ある程度、身体ができてきたなと思い始めるようになって、ブンデスでも活躍できるようになったので。そこのやりがいというのは感じています」
また、ブンデスリーガでプレーすることによって、各チームの偉大なストライカーたちと凌ぎを削ることで見えてきたものもある。
「やはりボックスで存在感を出せる選手が多いですよね。(ハリー・)ケインだったり、(パトリック・)シックだったり、(ヴィクター・)ボニフェイス、(ベンヤミン・)シェシュコ(現マンチェスター・ユナイテッド)も。ボックス以外のところは他の選手より優れている部分はあると思いますけど、ボックス内での存在感というのはまだまだ出していかないといけないなと。そこは今シーズン、改めて思っているところです」
タフな環境に身を置くことで、精神的にも、肉体的にも、ピッチ上の動きでさえもレベルアップを遂げてきた。そんな町野は今、自身のプレースタイルをどう捉えているのか。理想とするプレーヤー像を聞いてみた。
「9.5みたいな感じですかね。10(番タイプ)でもないし、9(番タイプ)でもないというか、その間というのがしっくりくるかなと思っています」
町野らしい面白い答えだった。最前線で点を取ることに全てを費やすのではなく、だからといってポジションを降りてボールを動かすようなプレーだけに固執するわけではない。
「ポストプレーができて、2列目を生かせて、それで結局ボックス内では点を取れる選手というイメージですね」
町野が持つ自信「両足と頭で点が取れるのは武器」
まさにそれは万能型ストライカーと言っていいだろう。
実際に近年の町野は言葉通りのプレーをピッチ上で表現している。最前線のポジションで起用された時には、巧みなポストプレーでパスワークを活性化させ、最終的にはゴール前でフィニッシャーとして活躍。シャドーのポジションやトップ下のようなポジションで起用された際には、いいタイミングでボールに関わり、攻撃にリズムを生み出しながら積極的にゴール前へと入っていく動きを繰り返している。得点数だけでなく、アシストや起点となるパスが増えているのは、自身の描くプレーヤー像がピッチに反映されている証拠だろう。
そして、それは今後、日本代表で生き残っていくためにも重要な要素となる。現在の日本代表には上田綺世や小川航基らストライカータイプの選手が多い。その中でも、周りをうまく生かしながら得点に絡んでいけるのが町野の特徴と言っていい。
「僕は2列目を生かすのが得意なので、そういったプレーと、やはり両足と頭で点が取れるというのは武器かなと思っています」
来年の北中米ワールドカップまですでに1年を切っている。悔しさだけが残った前回大会を経て、町野はW杯に向けた強い思いを明かした。
「今、本当にそこは大きな夢の1つ、目標の1つ。まずはチームで活躍して、代表に呼んでもらえるように頑張りたい」
その目標にたどり着くために――。町野はここから必要になってくることを言葉にした。
「もうどんな状況であっても点が取れる状態で、日本代表に、ワールドカップに向かうというのがかなり大事だと思っています。得点の嗅覚というか、ゴールを決める癖をつけて、自分の中でいい状態にしていくことが大事かなと思っています」
新天地であるボルシア・メンヒェングラットバッハでは、決していいスタートを切れたわけではない。ただ、ホルシュタイン・キールの時のように、日々、成長を遂げていければ、自分のポジションを掴むことができるはずだ。そこで確かな結果を残し、日本代表でも目に見える数字を追い求める。今までと同じように、ひとつひとつ着実に積み重ねていくことで夢の舞台への切符を掴み取っていく。
(林 遼平 / Ryohei Hayashi)

林 遼平
はやし・りょうへい/1987年、埼玉県生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と、憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。




















