選手権経験の指揮官が苦悩「通用しない」 東京大会が目前…デフサッカーを通じて「一番伝えたいこと」

デフリンピックの100回目が日本で開催される
日本サッカー協会(JFA)が11月6日、都内でデフサッカー日本代表壮行会を開催した。男子代表、女子代表のメンバーがそれぞれ登壇し、14日から行われる「東京2025デフリンピック」に向けて決意を語った。
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デフサッカーは通常のサッカーと同じ11人制。聴覚障がい者のサッカーで、競技中は補聴器を外すことが義務付けられていることから「音のないサッカー」としても知られる。ピッチ上では主にアイコンタクトや手話でコミュニケーションを取りゴールを目指す。
今回は東京で開催される記念すべき100回目となるデフリンピックの競技の1つとして、 大会の開幕に先立ち、14日から25日まで福島県のJヴィレッジで開催される。6日に発表された「SAMURAI BLUE」と同じ新ユニフォームを着用して大会に出場する。
男子代表の指揮を執るのは齋藤登監督。JFLのアトレチコ鈴鹿や東久留米総合高校(東京)での指導経験を持つ指揮官は、7月に監督に就任。そこから4か月で迎える大一番に向けて、「ここに至るまで選手たちは困難を乗り越え、そして今、素晴らしいチームを築いてくれた」と大会を迎えるまでの過程に触れ、「仲間を信じ、最後まで共に戦い抜く強い団結力」をチームの強みと話す。
自身4度目のデフリンピックとなるキャプテンのGK松元卓巳は「このような壮行会、たくさんのメディアの方に来ていただくことはありませんでした。このような素敵な場所が初めて」と感慨深げに話し、「今まで皆さん支えてくださった方、またデフサッカー、デフスポーツの歴史を築いてくれた先輩や仲間たちのおかげでもあります」とこれまで尽力してきた選手、関係者に感謝の思いを伝えた。
マレーシアで開催された2023年の前回大会では決勝でウクライナ代表に1-2で敗れて準優勝。優秀ゴールキーパー賞を受賞した松元は「最低でも世界一、最高でも世界一」という目標を話し、「必ず金メダルを持って帰ります。強い覚悟で臨んでいきます。皆さんのお力も借りて一緒に戦っていきたい。ともに戦ってください」と共闘を呼びかけた。
女子代表の山本典城監督も「女子サッカーはまだ国際大会でメダルを獲得したことがないので、金メダルを目指し、そして必ずこの日本で新しい歴史を作ります」と話せば、女子代表キャプテンのGK伊東美和は「自分たちが戦う姿で、聞こえる、聞こえない関係なく、障がいあるなし関係なく、たくさんの皆様方に感動や勇気を与えられるように戦ってきます」と各々がいろいろな思いを持ってこの大会に臨む。

壮行会後の囲み取材では、齋藤監督が「元々高校サッカーを随分長いこと指導していたんですけども、やはりこのデフサッカーの世界は初めての経験で、今までのその指導法やコーチング法が通用しない」と苦悩を吐露。それでも「選手たちが理解を示してくれた」と、デフサッカーでの指導に手応えを感じてきたという。
「最初は本当に手探りでしたけれども、徐々に徐々に、選手たちも理解を示してくれて、今はスムーズに私が伝えたいことを受け取ってくれるし、それもパフォーマンスとして表れるようになって来たと思っています」
そして齋藤監督は「これを皆さんに伝えたい」と、デフサッカーをプレーする選手たちから学ぶべき姿勢を力強く伝えた。
「当然人格者として素晴らしいんですけども、それ以上に、当たり前のように必ず顔を見て会話をするわけですね。それが気持ちいいし、彼らも自分の思いを伝える時に、悔しいことは悔しいっていう表情をするし、面白いことは笑顔で伝えるし。だからそれが、人にとってこんなに顔を見て、表情豊かに話すことが大切なんだなってことを教えてもらっている」
囲み取材の最後には「一番ね、伝えたい」と繰り返し、「こうやって健常者も、そういうコミュニケーションの取り方をしたら、本当に人間関係良くなるんじゃないかと常に感じています」と競技だけにとどまらない、人としての在り方について自身の思いを話した。



















