強豪校2年生…サッカーは「中学からなんです」 学童の”キックベース”で培った意外な能力

東海学園の小田嶋俊介【写真:FOOTBALL ZONE編集部】
東海学園の小田嶋俊介【写真:FOOTBALL ZONE編集部】

東海学園の2年生アタッカー小田嶋俊介

 第104回全国高校サッカー選手権の都道府県予選も佳境に入り、各地では代表校が決まり始めている。ここでは全国各地で繰り広げられている激戦の主役たちのエピソード、プレーなどをより細かくお届けしていきたい。

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 第3回は愛知県予選準決勝から。第2試合は県1部リーグ1位で、一昨年度の覇者&全国ベスト8の名古屋高と、県1部・3位の東海学園高との一戦。東海学園の最前線で豊富な運動量と両足でパスや正確なトラップを見せた2年生アタッカー・小田嶋俊介には、非常にユニークな成長譚があった。

 この試合、4-4-2のツートップの一角としてスタメン出場をした小田嶋は、ポストプレーから裏へのスプリントを見せる一方で、中盤に落ちてボールを受けて両足のキックでボールを散らすなど、ゲームを組み立てる面でも存在感を見せた。

 ゴールという結果はなかったが、強い興味を抱いたことで、1-0で勝利して5年ぶりの決勝進出を果たした後に話を聞くと、「サッカーを始めたのは中学生からなんです」と発した言葉から、小田嶋のユニークな過去を知ることができた。

 愛知県で生まれ育った小田嶋は小学生時代、放課後のキックベースに夢中になっていた。

「学童保育でキックベースをよくやってきて、それが大好きでした。当時はサッカーに興味はなくて、小学校にもサッカークラブがありましたが、やろうなんて思っていませんでした」

 夢中になっていくうちに、「もっと遠くまで飛ばしたい」と思うようになっていった。右足で何本もパワーキックを蹴る中でふと考えた。

「ピッチャーからの左にずれたボールは左足で蹴った方がいいんじゃないか」

 わざわざ回り込んで右足で無理に打つより、左足でそのまま蹴ってしまった方が遠くに飛ばせるし、進塁出来る。そう思った小田嶋は左にずれたボールを右と同じタイミングで走り込んで左足で思い切り蹴り上げるようになった。

「当時、サッカーをやっていなかったので『利き足』という概念がなかったんです(笑)。ただ右のほうが蹴りやすいから蹴っていたのですが、効率を考えて左で蹴るようにしたら、気付いたら両足で遠くまで飛ばせるようになったんです」

 小学6年生になった時、左右両足からパワーのあるキックを放つ小田嶋少年の姿に、一緒にキックベースをやっていた学童保育の指導員から思わぬ言葉をかけられた。

「サッカーをやってみたらどうだ?」

 その言葉に最初はキョトンとしたというが、指導員から地元にあるFC HOTTS(ホッツ)を紹介されると、中学進学と共に入団をしてサッカーを始めることになった。

「みんな小学生からサッカーをやっていた人ばかりだったので、最初は戸惑ったのですが、両足で蹴れることが武器だと分かって、どんどんのめり込んで行きました」

 中学3年間でサッカーの知識、基礎と技術を楽しみながら磨いて行くと、「高校でもサッカーを続けて全国を目指したい」と強く思うようになった。1学年上の先輩が進学し、かつ熱心に誘ってくれた東海学園高に進学すると、より磨かれた両足のキックと豊富な運動量を駆使し1年の終わりから頭角を表し、2年生からスタメンの座を掴める存在にまで成長をした。

「夏休みが終わってから一度スタメンを外れてショックだったのですが、そこでコーチから『腐らずにやり続けろ』と言われて、ハッとして自分を見つめ直しました。中学生から純粋にサッカーが楽しくてやってきて、高校でレギュラーを掴んで少し気の緩みというか、浮かれてしまっていたのかなと。だからこそ、危機感を持ちながら、もう一度自分が両足を使えることの意義を考え直したことで、普段の練習で自分が何をすべきかをはっきりすることができました」

 純粋な気持ちを取り戻したことで、今予選の準々決勝の大同大大同高戦でスタメンに復帰し、準決勝でもスタメンとして長所を発揮してみせた。

「みんなで勝利に向かって一丸となれる素晴らしいチームだからこそ、この仲間と一緒に全国に出たい。そのために決勝でもチームのために走って、チャンスをものにしたいと思っています」

 夢の全国まであと1勝。遊びの中での工夫から得た特技を、心から好きになったサッカーで唯一無二の武器に変えて見せた小田嶋の成長物語はまだまだ続く。

(FOOTBALL ZONE編集部)

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