2年生10番を変えた「強烈な基準」 掲げた打倒日本一…連覇に王手も「満足は一切ない」

愛工大名電で10番を背負う2年生の杉本悠悟【写真:FOOTBALL ZONE編集部】
愛工大名電で10番を背負う2年生の杉本悠悟【写真:FOOTBALL ZONE編集部】

愛工大名電のエースストライカー・杉本悠悟

 第104回全国高校サッカー選手権の都道府県予選も佳境に入り、各地では代表校が決まり始めている。ここでは全国各地で繰り広げられている激戦の主役たちのエピソード、プレーなどをより細かくお届けしていきたい。

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 第1回は愛知県予選準決勝から。第1試合は県1部リーグ2位で、昨年度の覇者&今年度のインターハイ愛知王者である愛知工業大学名電高校と、県1部・4位の東邦高校との一戦。この試合で値千金の決勝弾をたたき込んだ愛工大名電のエースストライカー・杉本悠悟について。

 最前線でチームのために走る、身体を張る、突破を仕掛ける。杉本は172cmと大柄ではないが、抜群の身体能力を持ち、献身的な守備と常にゴールを狙い続ける獰猛さで2年生ながら10番を託されている。

「僕がやるべきことは足を止めないこと。ボールへの執着、勝ちへの執着を持って粘り強くゴールに向かっていけることが自分の強み。ハードワーク、球際、泥臭いシュートと、分かりやすい部分で負けないことが僕の武器です」

 東邦高との一戦でこの言葉通り値千金の決勝ゴールを決めると、終盤は若干足を攣りながらも足を止めることなくハードワークを続け、1-0の勝利に貢献。2連覇に王手を掛けた。

 前半14分の先制ゴールのシーン、左サイドを突破したMF志村隼のクロスに反応し、ゴールファーサイドに飛び込むと、一度は頭上を超えていくが、落ちてきたボールに対して身を翻して右足で巻き込むようにジャンピングボレー。ボールの位置も腰より上だったが、持ち前の身体能力で軸をぶらすことなく右足をミートさせた。

「志村君が突破してくれるというのは信じていたので走り込みました。ファーに流れると分かった瞬間、しっかりとボールに集中して、ゴール方向に押し出すということをイメージして合わせました。最後まで足を止めなかったからこそ、合わせられたゴールだと思います」

 泥臭さとアクロバティックさが加わった圧巻のゴール。「足が攣っても走れるというのが自分の良さだと思っていますし、最後は気持ちで踏ん張れました」と、まさに『炎のストライカー』がチームを力強く牽引している。

「僕はそんなにサイズがないので、最初の反応で負けない、相手の懐に潜り込むなど、相手の嫌なことをしたり、嫌なところに入って行ったりする。そういう面では今日はもっと走らないといけなかったと思っています。去年、前橋育英という強烈な基準をこれでもかと突きつけられたからこそ、満足は一切ないです」

 昨年度の選手権、5年ぶり2度目の出場を果たすと、レギュラーとして躍動した。初戦を6-3で制して迎えた2回戦の前橋育英戦。2-2のPK戦までもつれ込んだ激戦のピッチに後半38分まで立ち続けた。

「あそこまでの激戦になったのは先輩たちがいたから。でも、個人的にはスコア的には粘った形になりましたが、それ以上に実力差はすごく感じました。今までプレスがはまっていたものが簡単に剥がされたり、そのまま崩されて簡単にシュートまで持っていかれたり、『本当に練習から変えないといけないとこの差は埋まらない』と強烈に思いました。あの瞬間から前橋育英のような全国トップレベルのチームを倒すことが目標になりました」

 この一戦を制した前橋育英は選手権王者まで駆け上がり、その時のメンバーが大きく残った今年は3人のプロ内定選手(DF久保遥夢・名古屋グランパス、MF柴野快仁・FC今治、竹ノ谷優駕スベディ・モンテディオ山形)が誕生した。日本一のチームの強さを体感したことで、杉本の意識が大きく変わった。

 日頃の練習から常に100%で取り組んで、スピードの質、アジリティー、そしてゴール前での冷静さと守備面での賢さ。フィジカルだけではなく、いかに持ち味を最大限に活かすかを考えてトレーニングするようになった。

「今年のインターハイでは初戦で(秋田商に)PK負けして、僕もゴールを決められなかった。力不足を改めて突きつけられたので、夏以降はよりゴールへの思いが強くなりました」

 2度の全国でゴールを奪うことはできなかった。だからこそ、選手権で強豪を相手にゴールを決めるイメージが、よりゴールへの枯渇感を生み出した。

「まずは決勝に勝たないといけない。次もゴールを決めて、まずは全国の挑戦権を掴みたいと思っています」

 東海学園高との決勝ではより渇きを求めて、2連覇を決めるゴールをひたすら狙い、炎のストライカーたる所以を見せる。

(FOOTBALL ZONE編集部)

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