怪我人続出の森保Jに現れた“救世主” まるで両利き、矢印を折るプレー…現代のニーズ満たすCB

鈴木淳之介は10月14日のブラジル戦にフル出場し、勝利に貢献した
負傷者続出で守備陣崩壊も懸念されていた中、パラグアイ戦とブラジル戦に出場した鈴木淳之介の評価が急上昇している。
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W杯アジア予選のインドネシア戦で初出場したのが6月。しかし、9月の米国遠征には招集されていない。左CBが全滅状態だったにもかかわらず、鈴木が招集外は意外だった。メキシコ戦では瀬古歩夢、米国戦では長友佑都が左CBでプレーしたが、フィットしていたとは言い難い。
伊藤洋輝、町田浩樹、冨安健洋が負傷で招集できず、安藤智哉を招集したが負傷で辞退。左CBがいない中、唯一そこを本職としている鈴木を呼ばない手はないはずだが、コペンハーゲンへ移籍したばかりなのでクラブ側との話し合いで見送ったのかもしれない。今にして思えば、鈴木がいれば米国遠征の2試合の結果も違っていたかもしれない。それほど10月の2試合で鈴木は存在感を示していた。
身長180センチはCBとしては高い方ではないが空中戦は強い。ブラジル戦では1対1でエステバンを立て続けに止めてドリブルへの対応力の高さをみせていた。ただ、それ以上に攻撃力が鈴木の持ち味だ。
右利きだが、左利きかと思うほど両足が利く。昔から左側のDFは左利きであることが重視されてきたが、現在はむしろ両足利きが求められるようになっている。相手のプレスが速くなっているので、どちらの足でも扱えて正確にフィードできるのが当たり前になってきたのだが、鈴木はそうした現代のニーズに合っている。
日本代表もそうだが、前線からマンツーマンでプレッシングする傾向が強くなった。逆にそれをかわせる技量がDFに求められている。鈴木はファーストタッチでプレスを外すのが上手い。プレスに来る相手の方向性をずらす、いわゆる「矢印を折る」プレーができる。速く寄せてくるということは、その矢印から外れたところにボールを動かされると反応が遅れる。相手のプレスが速ければ速いほど矢印を折りやすくもなるわけで、おそらく鈴木はそれを理解しているから、相手のプレスに慌てることがない。
相手のハイプレスに強い。現代サッカーにおいて、これはかなり大きなアドバンテージのある資質だと思う。
ハイプレスとは逆に、相手が5バックのローブロックを組む傾向も強くなっている。この点でも鈴木は前進してゲームを作る能力が高く、相手が5-4-1のブロックの場合にとくに有効だ。というより、左右のCBの前進からの効果的なパスがないと打開するのが難しいのだ。
もともとはMFだった。湘南ベルマーレでCBにコンバートされて才能が開花した。さらにコペンハーゲンでは右サイドを担当して安定したプレーをみせている。湘南でのブレイクから夏に海外移籍、さらに日本代表での抜擢と活躍。まさに昇り龍の勢い、現在最も注目される選手の1人だろう。
(西部謙司 / Kenji Nishibe)

西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。






















