58歳カズの言葉は「重みが違う」 同僚が証言…最年長出場記録更新も「ゴールは可能」

三浦知良が2試合連続の途中出場で勝利に貢献「攻撃としてはよかった」
JFLアトレチコ鈴鹿のFW三浦知良(カズ)が、2試合連続の途中出場でチームの勝利に貢献した。カズは10月26日、ホーム四日市市中央陸上競技場で行われたFCティアモ枚方戦の後半43分から出場。リーグ最年長出場記録を58歳242日に更新した。チームはリードを守り3-1で勝利。JFL残留に向けて前進した。
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「前半から主導権を握り、ゲームをコントロールできていた」。カズは試合を振り返って言った。昨季は2戦2敗、今年6月のアウェー戦でも0-3と完敗した苦手な相手から2年ぶりの勝利。「準備してきたことができた」と山本富士雄監督も満足そうな表情だった。
前半26分にMF小野寺亮太が先制ゴールを決めると、後半16分にはFW田中直基が頭で加点。同35分には1点を返されたが、2分後にはMF渡辺吏海(りう)のクロスが相手のオウンゴールを誘って3点目となり、試合をリードした。
もっとも、終盤はピンチの連続。残り2分、カズをピッチに送り出した山本監督の指示は「最後、試合を締めてほしい」だった。今季低迷する原因の1つが、試合終盤の守備崩壊。アディショナルタイムの失点など集中力を欠いて自滅することも少なくなかった。
山本監督は「カズがピッチの中でかける声は、我々がベンチから出す声よりも影響力がある」と話し、怪我で欠場したゲームキャプテンのFW福元友哉も「経験のあるカズさんの言葉は、重みが違う」という。3か月ぶりに出場した前節はヴィアティン三重に0-1とリードを許した場面でゴールを期待されたが、この日は豊富な経験でリードしたまま試合を終わらせることを求められた。
アディショナルタイム5分を含めた7分間、カズは前線でロングボールを蹴ってくる相手選手にプレッシャーをかけるとともに、積極的にチームメートとコミュニケーションをとった。この試合でJFL初出場のルーキーFWオボナヤ朗充於(ろみお)に声をかけるなど、メンタル面でもチームに大きく貢献した。
不安視されたアディショナルタイムも守備は崩れることなく、2点のリードを守って3-1の快勝。GK伊佐山緑心(えにし)の好守や2点差あったことも大きかったが、ピッチに立つだけでチームを落ち着かせ、試合を「終わらせた」カズの存在感も光った。
さらに、ラストプレーではスタンドも沸かせた。DF坂本敬の右クロスに反応し、ニアに走り込んで相手DFと競り合いながら右足で今季初シュート。後方からの難しいボールにうまく合わずボールは右に外れたが、観客からは大歓声と拍手が送られた。
シュート直後に試合終了の笛が鳴った。カズは「右サイドの(坂本)敬が上げると思ったので、ニアに走れば来るかなと」と最後のプレーを振り返った。同点を狙った前節はゴール前でクロスに合わせることができなかっただけに「攻撃としてはよかった」。さらに「あの時間からでもゴールは可能」と少ない出場時間でもゴールを狙っていく貪欲さを口にした。
山本監督も期待するゴールへの嗅覚と抜群のポジショニングが生んだシュートに「あれはさすが。得点を期待してたいし、期待できるプレーだった」と話した。前回の枚方戦はシュートわずか4本で敗れたが、この日は今季2番目に多い11本。試合に臨んでテーマに掲げていた「シュートで終わる、を出してくれた」と喜んだ。
リーグ最多得点を誇る枚方の攻撃を1点に抑え、今季チーム最多タイの3点を奪って快勝。カズも最後のシュートで得点の期待が高まるなど最高の試合だったが、厳しい残留争いが終わったわけではない。
勝ち点を27に伸ばした鈴鹿だが、13位は変わらず。14位に同勝ち点のYSCC横浜、地域リーグへの降格圏内の15位には勝ち点23で横河武蔵野FCがいる。同19で最下位の飛鳥FCとの次戦(11月2日)を含めて残りは4試合。「チームは勝ったけれど、残留争いをしている状況は変わらない。残留を第一に考えて、次の飛鳥戦に向けて準備をしたい」と、カズは厳しい表情で話した。
(荻島弘一/ Hirokazu Ogishima)
荻島弘一
おぎしま・ひろかず/1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者として五輪競技を担当。サッカーは日本リーグ時代からJリーグ発足、日本代表などを取材する。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰。20年に同新聞社を退社。





















