カズが104日ぶりに復帰 練習で見せる確実性…今後は”ジョーカー”起用か「期待するのはゴール」

三浦知良が後半43分から出場
JFLアトレチコ鈴鹿のFWカズ(三浦知良、58)が18日、104日ぶりにピッチに立った。三重県東員町のLA・PITA東員スタジアムで行われたヴィアティン三重とのダービー戦、0-1の後半43分に交代出場。同点を狙って果敢に攻め込んだがゴールはなく、チームは0-1で敗れた。カズの試合出場は7月6日の同じヴィアティン三重相手に先発した「プロ40周年記念試合」以来で、今季3試合目。自身の持つリーグ最年長出場記録を58歳234日に更新した。
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交代出場した瞬間、敵味方なくスタンドが沸いた。アディショナルタイムを含めて7分間、ピッチを駆け回った。交代直後には中盤のパス回しに参加して左サイドを崩す起点となり、終了間際には右クロスに合わせて絶妙なタイミングでゴール前に詰めたが、いずれもシュートに至らず。「何回かいい形はできていた。(クロスの)精度が上がれば、フィニッシュまで行けたと思う」と振り返った。
決して状態はよくなかった。7月はベンチに入っていたが、8月のリーグ中断期間に右足首を痛めた。その後も少し無理をすると他の部位にも痛みが出て、チーム練習にも合流できず。9月にリーグ戦が再開してからも、前節までベンチ外が続いていた。
山本富士雄監督はカズの状態について「万全ではないけれど、よくはなってきている」。全体練習に参加できるようになったことで、ベンチに入れることを決断したようだ。もっとも、カズ自身も「コンディションはまだまだ」。山本監督は「動きはよかった」と評価したが、左太もものテーピングなど痛々しさは隠せなかった。
58歳、無理をすればさらに悪化する可能性もある。それでも本人と話し合って起用に踏み切った山本監督の決断の裏には、FWに負傷者が相次ぐ苦しいチーム事情もある。この日も前節の沖縄SV戦で先制ゴールを決めた得点源の福元友哉主将が負傷退場した。
「カズの得点感覚に期待して何とか1点とってほしかった」と山本監督。常時ベンチ入りしている時から「起用するのは点が欲しい時で、期待するのはゴール」と話していた。最前線で起用し、ゲームを読む経験と高いシュート技術でゴールを生む。シュート練習でも、誰よりも確実に決めるのがカズ。だからこそゴールを期待する。
「スコアや試合展開を見て起用を決めた」と山本監督。攻めこまれている状況では最前線で起用しても孤立するだけ。しかし、この日はリードした三重が守りに入ったこともあって、ポゼッションしながら人数をかけて攻め込む形ができていた。1点とって引き分けに持ち込み、勝ち点1が欲しい状況。ラストパスの精度が今一つで決定的な場面は作れなかったが、今後もこの起用になりそうだ。
もっとも、心配なのは万全でない状態で出場したカズの状態。この日の動きで「今後も期待できる」と山本監督は話したが、本人は自身の状態について「どうでしょうか」と言葉を濁した。試合出場の反動で、痛みがぶり返す可能性もある。
一番の収穫は「ピッチに立てたこと」と話したが、残り5試合のリーグ戦に向けて不安も隠さない。「(コンディションを)もう少し上げていかなければならないけれど、難しい調整になる。1か月半でシーズンが終わるので、コンディションをどう作るか考えていかないと」と話した。
前節はベンチの外からの的確な声掛けでチームをまとめ、12試合ぶり勝利に貢献した。この日は勝ち点こそ奪えなかったが、カズ自身も山本監督もチームも手応えを掴んだ。順位の14位は変わらず、地域リーグ降格圏の16位が迫る。「ポイント(勝ち点)をとるために粘り強さも必要になる。執念を持ってポイントを奪うことにこだわっていければ」。残留争いに向けて、カズは言った。
(荻島弘一/ Hirokazu Ogishima)
荻島弘一
おぎしま・ひろかず/1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者として五輪競技を担当。サッカーは日本リーグ時代からJリーグ発足、日本代表などを取材する。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰。20年に同新聞社を退社。




















