ブラジル撃破も…W杯へ「明確な課題」 敵将が分析、露呈した森保J攻略法「フリーになれる」

アルファロ監督はカタールW杯ではエクアドル代表を率いた
10月14日、日本はブラジルに初勝利を収めた。逆転劇での初勝利という展開で、日本代表を取り巻く雰囲気は一気に明るくなった。わずか4日前の10月10日、パラグアイに2度リードされ、終了間際の上田綺世のゴールで何とか追いついたということは忘れられたようだ。
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しかし、ブラジル戦の勝利に沸く今だからこそ、冷静に足元を見つめ直す必要がある。このシリーズで日本のチーム作りにとって最も大きなヒントを残してくれたのは、対戦相手であるパラグアイのグスタボ・アルファロ監督だったからだ。2022年のワールドカップ直前にエクアドル代表を率いて日本と引き分けた経験を持つ知将は、試合後の会見で、今後の対戦相手にとって格好の「日本代表攻略法」となりうる、非常に的確な分析を披露した。
アルファロ監督がまず指摘したのは、日本の攻撃の組み立て方だ。「前半、我々は日本の右サイドからの攻撃に苦しんだ。ウイングバック(伊東純也)、セカンドトップ(堂安律)、インサイドハーフ(佐野海舟)の3人が常にトライアングルを作り、多くの場面で数的優位を作られてしまった」。これは日本の強みである流動的なポジションチェンジを評価したものだ。
だが、彼はそれだけで終わらない。「しかし、日本の攻撃はサイドの幅を使ってくるが、その起点となるのは常に中央だ」。このインサイトに基づき、後半、パラグアイは中央のパスコースを徹底的に遮断した。サイドでボールを持てても、決定的な仕事の入り口となる中央へのパスコースがなければ、日本の攻撃は途端に停滞する。これは、今後の対戦相手が採用してくるであろう、基本的な守備戦術の一つになるだろう。
さらにアルファロ監督の分析は、日本の守備の穴、特にボランチ脇のスペースについて言及する。「この試合の鍵だった」と彼が語ったのは、日本のボランチの動きの癖だ。「日本のセントラルMF2枚は同じように動く。そこで、まず日本の3バックを我々の前線の選手で引きつけておく。そうすると、我々のウイングが内側へ斜めに走り込むスペースが生まれ、相手ボランチの背後でフリーになれる」。
「日本が攻撃する時は中央を固め、我々が攻める時はサイドからワイドに展開する。しかし、フィニッシュは中央から仕掛ける。それがゴールへの最短ルートだ」というアルファロ監督の言葉通り、パラグアイが奪った2得点は、いずれも中央を起点とされたものだった。
1失点目は中央への縦パス1本から、2失点目は中央突破から一度は防いだものの、その後の二次攻撃から生まれた。ブラジル戦の勝利は素晴らしい成果だが、同時にこの「日本の弱点」が今後の対戦相手に示されたという事実を、見過ごすことはできないだろう。
もちろん、これが修正不可能な課題かというとそうではない。右サイドのコンビネーションは、佐野が入った組み合わせは、まだ経験値が浅い。遠藤航や守田英正との連携であれば問題は軽減されるだろうし、佐野自身も大きな可能性を示した。
また、田中碧と佐野という共に低いスタート位置を得意とするボランチの組み合わせだった。このコンビの課題が見えたこと自体が、ワールドカップ本番で同じ轍を踏まないための重要なデータとなる。瀬古歩夢がオフサイドトラップで連携ミスを犯したのも、急造DFラインだったことが大きく影響しており、今後の伸びしろと言える。
重要なのは、この2試合で「何が起きたか」で終わらせず、この経験を「次にどう活かすか」だ。アルファロ監督が図らずも残してくれた「宿題」は、11月の代表シリーズで森保監督がどんな答えを出すのか、という新たな視点を我々に与えてくれた。
そして、こうした課題が見える一方で、大きな収穫もあったことも記しておきたい。所属するコペンハーゲンで出場機会が少ない中、2試合にフル出場したDF鈴木淳之介の台頭だ。DFラインに怪我人が多い現状で、新たなオプションが生まれたことはチームにとって非常に大きい。森保監督が選手のポテンシャルを信じて抜擢し、それに応えた鈴木のプレーは、チームの底上げを象徴していた。
実はメンバー発表の記者会見で、経験の少ない鈴木淳之介よりも経験豊富なベテランを招集したほうがいいのではないか、と質問したのは私だった。今となっては自分の不明を恥じるばかりだ。
ブラジルへの勝利以上に、今回のシリーズが価値あるものだったと言えるのは、こうした明確な課題と収穫の両方を手にしたからに他ならない。勝利の熱狂から一歩引いて、11月以降の日本代表がこの「宿題」にどう取り組んでいくのか。そのプロセスこそが、ワールドカップでの躍進に向けた試金石となるだろう。
(森雅史 / Masafumi Mori)

森 雅史
もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。




















