W杯まで半年…森保Jに滑り込む19歳逸材 識者イチオシ“第2の鈴木淳之介”

A代表未招集の逸材たち【写真:ムツ・カワモリ&AP/アフロ】
A代表未招集の逸材たち【写真:ムツ・カワモリ&AP/アフロ】

鈴木淳之介はブラジル撃破に貢献した

 10月シリーズのパラグアイ戦、歴史的な初勝利を飾ったブラジル戦でセンターバックの鈴木淳之介が見せたパフォーマンスは、多くの日本サッカーファンを驚かせた。怪我人が相次ぐ守備陣の中で、これまでA代表では6月のインドネシア戦1試合のみ出場のニューフェイスが、南米の強豪を相手に圧倒的なボール奪取力と冷静な対人対応を披露。特にブラジル戦では韓国戦で2得点を決めた“メッシーニョ”こと、18歳の新鋭エステバンとも互角以上に渡り合い、ピッチ上で堂々たる存在感を示し、3-2の逆転劇を支えた。

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 森保ジャパンに新風を吹き込む一方で、まだA代表に未招集、あるいは最終予選やその後の強化試合に呼ばれていない有望選手も多い。ワールドカップ最終メンバー発表まで、残された時間はおよそ半年。前回カタール大会でも、本大会1年前の段階から伊藤洋輝(バイエルン)や町野修斗(ボルシアMG)が一気に台頭して滑り込んだように、ここから再び新戦力が現れてもおかしくない。

 まず注目すべきは、ロス五輪世代だ。U-20ワールドカップ組を中心に、国内外で確かな成長を遂げる選手がいる。19歳の小杉啓太(ユールゴーデン)はスウェーデンの強豪でレギュラーを掴んだ左サイドバック。代表の3バックでは左ウイングバックが有力となる。攻撃面では左足の高精度クロスに加え、縦への推進力が魅力。大きくはないが、ユース時代ではセンターバックとしても奮闘しただけに、1対1の守備が安定しており、局面での冷静さが光る。基本ポジションは三笘薫や中村敬斗と重なるが、彼らとの併用など、戦術的な柔軟性をチームにもたらす可能性がある。

 市原吏音(大宮アルディージャ)は10代から大宮の主力として活躍し、昨年はJ2昇格の立役者の一人となった。U-20日本代表でもキャプテンを務め、その明るいキャラクターとプレーで世界に名前を知らしめた。近い将来の欧州挑戦も視野に入れていると見られる中で、現在はJ2ながら大宮をJ1昇格に導くことで、A代表入りの可能性がグッと近づく。同じセンターバックで、早くもスペインで奮闘する喜多壱也(レアル・ソシエダ)は現在Bチームだが、スペイン2部で経験が積めていることは大きく、久保建英が主力を張る“ラ・レアル”でのトップ昇格は代表入りに直結する。

 中盤で、ここからA代表で台頭してもおかしくないのが中島洋太朗(広島)だ。U-20ワールドカップは今年2度目となる脳震盪の疑いで辞退したが、広島ではボランチとシャドーの両ポジションで、攻撃の組み立て役、明確なアクセントとして異彩を放つ。意外性のあるミドルパスなど攻撃面での見どころが多い一方で、守備でタイトに行けるところも見逃せない。ACLエリートでは、東アジアとはいえ国際舞台で堂々としたプレーを見せており、川辺駿や田中聡といったE-1組の中盤勢と日常的にしのぎを削っている環境もプラスだろう。

 同世代のFWでは後藤啓介(シント=トロイデン)も注目株だ。ロス五輪世代のエース候補として期待されるが、大岩剛監督がパリ五輪前の段階でも、その名をしばしば挙げていたほど、将来を嘱望されている。先日のU-20ワールドカップには参加していないものの、U-23アジア杯予選では得点力に加えて、前線からの精力的な守備と鋭い動きでチームを牽引した。柔軟なポストプレーに加え、サイズに頼らないタイミングの良い抜け出しも持ち味で、成長曲線は右肩上がり。ボックス内でのフィニッシュにも磨きがかかっており、ベルギーでゴールラッシュを見せることができれば、上田綺世、小川航基、町野修斗が揃う“大型FW枠”に食い込む可能性がある。まだ荒削りながら、面白い逸材としては齋藤俊輔(水戸ホーリーホック)をあげたい。

海外組にはポテンシャルを秘めた逸材が

 海外でプレーする未招集組の中にも、ポテンシャルを秘めた選手が多い。ブレーメンのGK長田澪(ミオ・バックハウス)はドイツU-21代表に招集されたばかりだが、A代表は日本を選択可能だ。鈴木彩艶が絶対的な守護神に君臨し、大迫敬介や早川友基がハイレベルな競争を繰り広げるポジションではあるが、若くして欧州5大リーグでゴールマウスを任される(直近の2試合は欠場)長田が加わることで、良い意味で厳しい空気をもたらすことができるだろう。もちろんパリ五輪の守護神だった小久保玲央ブライアン(シント=トロイデン)も突き上げの候補になってくる。

 FW坂本一彩(ウェステルロー)もベルギーで評価を高めており、森保監督が欧州視察した時に、真っ先に名前があがった一人だ。鋭い裏抜けと得点感覚を兼ね備える万能型で、チャンスと見れば高速ドリブルから、そのまま危険なシュートに持ち込むこともできる。そのほか、左ウイングバックの候補では畑大雅(シント=トロイデン)、E-1選手権で森保ジャパンを経験し、その後欧州へ渡った綱島悠斗(アントワープ)も見逃せない存在だ。ボランチとセンターバックのポリヴァレントである綱島は望月ヘンリー海輝のように“飛び道具”としての価値も高い。

 国内では、Jリーグの前半戦でブレイクした中村草太(サンフレッチェ広島)が怪我から想定より復帰に時間がかかっていたが、広島はACLエリートや国内カップ戦など、まだまだ試合数も多いだけに、復調すれば中島らと共に、猛アピールが期待できる。サイドアタッカーながら、Jリーグでゴールを量産する伊藤達哉(川崎フロンターレ)は海外経験が豊富で、2019年のコパ・アメリカなど過去に森保監督の指導を受けている。もし呼ばれても、すんなり入れるということではアドバンテージだ。半田陸(ガンバ大阪)も初招集から不運な怪我に泣かされたが、現在は異常なほどのタフネスを発揮しており、終盤戦で好調のチームを支える。良質なビルドアップと高強度の守備は世界での戦いを想定しても頼もしい。

 本大会を前に、代表復帰が期待される欧州組のタレントとしては、ベルギーで存在感を高める大型ボランチの伊藤敦樹(ヘント)がいる。さらに攻守のパワーとクオリティを兼ね備える岩田智輝(バーミンガム)、チャンピオンシップ(イングランド2部に相当)の首位チームで主翼を担う坂元達裕(コベントリー)、今後の方針次第では怪我で離脱中の冨安健洋、町田浩樹と共にスタンドからブラジル戦を見守った右サイドの俊英、毎熊晟矢(AZ)にもチャンスはありそうだ。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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