日本はW杯へ「格下の気持ちで挑む必要ない」 ブラジル撃破で英記者確信…主力不在も「大きな自信」

日本のブラジル撃破に英記者が見解【写真:徳原隆元】
日本のブラジル撃破に英記者が見解【写真:徳原隆元】

日本はブラジル戦に3-2で逆転勝利

 森保一監督率いる日本代表(FIFAランク19位)は10月14日、東京スタジアムでブラジル代表戦(同6位)と対戦し、3-2で歴史的な初勝利を飾った。かつてアジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ(W杯)を7大会連続で現地取材中の英国人記者マイケル・チャーチ氏が、この試合を総括した。(文=マイケル・チャーチ)

【PR】DAZNを半額で視聴可能な学生向け「ABEMA de DAZN 学割プラン」が新登場!

   ◇   ◇   ◇

 歴史が動いた。信じられない結果だ。その達成の仕方もなおさら注目すべきものだった。日本はブラジルを相手に、後半からその力を存分に発揮して3-2で逆転勝利を収めた。ハーフタイムの時点ではまるで信じられないような展開だが、ふさわしい勝利だったといえるだろう。

 この勝利は監督や選手にどれほどの自信を与えるだろうか。日本のファンでさえ畏敬の念を示す強豪国に対し、これほどドラマチックで、力強い勝利がこれまでにあっただろうか。

 サムライブルーが2点のビハインドを背負ってハーフタイムを迎えた時、日本にはブラジルが持っているような断固とした強い意志が欠けているように感じられた。カルロ・アンチェロッティが率いるブラジは2度のチャンスで2ゴールを奪い、楽々と勝利に向かっているように見えた。

 劣勢のなかで日本もいいプレーを見せてはいたが、チャンスを作っても何も生み出すことはなかった。味の素スタジアムで一戦はフラストレーションの溜まる試合になりそうだった。

 最初の15分間に中村敬斗は4回、ブラジルの守備を崩す決定的な場面があったが、いずれも実を結ぶことはなかった。あるいは、堂安律が守備をこじ開け、上田綺世が至近距離からゴールを決めるチャンスもあったが、シュートは驚くべきミスになった。

 その一方で、ブラジルは対照的にブルーノ・ギマランイスからの鋭い縦パスを受けたパウロ・エンリッヒが先制点を決め、谷口彰悟がラインを上げるのをためらう一瞬の隙を突いてガブリエウ・マルティネッリが鈴木彩艶の守るゴールを破って2点目を奪った。

 日本にも明るい兆しはあった。堂安律は右サイドを走り回り、久保建英とはテレパシーで通じ合っているような関係を保っていた。ワールドカップ(W杯)でも、この2人が相手の守備を切り裂く未来を予感させた。

 佐野海舟はパラグアイ戦ほど効果的ではなかったにせよ、5人の入れ替えを行ったなかで、彼をスタメンに残した森保監督の決断を正当化させるには十分なパフォーマンスだった。

 日本は確かにいい試合の入りをした。南野の鋭いパスに抜け出した中村がチャンスを迎え、それを決めきることはできなかったが、そういったパターンが序盤から確立され、それは45分を通して継続していた。

 スタッド・ランスでプレーする中村はボールを持てば質の高いプレーを見せるが、来年のW杯でもファーストチョイスになるであろう三笘薫ほどの鋭さを見せる場面はなかった。

 こうして日本は2点のビハインドを背負ってロッカールームへ戻った。重要なのはここからだった。

 日本をポジティブな展開へと導く鍵は堂安だった。ボールを持っている時も、そうでない時も本当に素晴らしいパフォーマンスを見せていた。日本代表として最高のパフォーマンスだったかもしれない。スコアシートに名前が載ることはなかったが、その存在は際立っていた。

 堂安は久保と、久保との交代で出場した伊東純也ともうまく連携する素晴らしい能力を持っている。深い位置まで戻って守備をする献身性や規律のあるプレーも見せ、まさにオールラウンドな活躍だった。

 DFファブリシオ・ブルーノのミスから南野がゴールを決めた日本の1点目は幸運も絡んでいた。だが、同点弾は堂安が起点を作った。クレバーなパスを伊東へ届け、彼のクロスから中村が押し込んだ。

 そして、上田が伊東のコーナーキックから前半のミスを帳消しにする素晴らしいヘディングシュートを決めた。後半に入り、わずか19分の間に3得点を奪って試合の流れを一変させた。

 この試合は森保監督体制において、ドイツ相手の2度の勝利やカタールW杯のスペイン撃破と並ぶ最高のパフォーマンスだったといえる。確かに、これはフレンドリーマッチに過ぎないが、アンチェロッティ監督の下で着実に成長していたブラジルを相手に日本が堂々と渡り合ったのだ。

 それも三笘薫、遠藤航、伊藤洋輝、守田英正、板倉滉といった選手がいないなかでの結果だ。選手層も分厚い。日本にとって大きな自信となっているはずだ。

 もはや格下の気持ちでW杯に臨む必要はない。この試合の結果は、このチームが来年の夏に大きなインパクトを残すことができることを示した。ベスト16での悲劇的な敗退はもうたくさんだ。日本代表は真のチャレンジャーとしてW杯を戦うことができるだろう。

(マイケル・チャーチ/Michael Church)



page 1/1

マイケル・チャーチ

アジアサッカーを幅広くカバーし、25年以上ジャーナリストとして活動する英国人ジャーナリスト。アジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ6大会連続で取材。日本代表や日本サッカー界の動向も長年追っている。現在はコラムニストとしても執筆。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング