練習だけで異例の招集決断「タツみたい」 重ねた伝説のFWの姿…森保監督が上田綺世と出会った日

逆転ゴールを決めた上田綺世【写真:ロイター】
逆転ゴールを決めた上田綺世【写真:ロイター】

上田はパラグアイ戦でも同点ゴールを決めた

 日本代表(FIFAランク19位)は10月14日、東京スタジアムで行われたキリンチャレンジカップ2025でブラジル代表(同6位)と対戦し、3-2で歴史的勝利を飾った。後半26分にヘディングで決勝点をマークしたFW上田綺世(フェイエノールト)について、森保一監督は「努力を重ねてくれて、今日の得点もそうですけど、世界のトップ基準で点を取ってくれる素晴らしいストライカーに成長してくれた」と高く評価した。

【PR】DAZNを半額で視聴可能な学生向け「ABEMA de DAZN 学割プラン」が新登場!

 指揮官は上田と出会った日のことを今でも覚えている。2017年10月に東京五輪代表の監督に就任。初の活動となる12月のM-150杯(タイ)に向けて、メンバー選考が大詰めを迎えていた中、選ぼうと思っていたFWが負傷するアクシデントが発生した。新たなストライカーを探していた中、大学関係者から「面白い選手がいる」と勧められたのが、当時法政大1年の上田だった。

 大会まで時間がなく、法政大の練習を視察した。そこで身体能力の高さに目を奪われた。「タツみたいだ」。その姿を広島時代に共にプレーし、日本人離れした能力を持つ元日本代表FW久保竜彦氏と重ね合わせた。公式戦を直接視察することなく、練習を見て異例の招集を決めた。

 特大の期待を掛けてきたが、なかなか代表では結果を残せなかった。代表デビューは2019年の南米選手権(ブラジル)。東京五輪世代を中心に臨んだ大会では全3試合に出場したが、ゴールはおろか、シュートは枠さえ捉えることができなかった。多くの批判を浴びたが、その後も指揮官は代表に呼び続けた。代表初ゴールは、自身15試合目となった2023年6月のエルサルバドル戦。19年のデビューから約4年かかった。

 東京五輪の監督時代から上田に口酸っぱく言い続けたのは、前線からの守備の大切さ。この日のブラジル戦の後半7分、上田が相手DFファブリシオ・ブルーノにプレッシャーを掛けたことでミスを誘発し、南野拓実のゴールが生まれた。森保監督は「あの時(南米選手権の時)は走力はまだまだでしたが、今日は攻撃にも守備にも絡んでくれた。得点力を上げながらも、攻守一体となって全員で戦っていくという方針のもと、チームに貢献してくれるようになったことを嬉しく思います」と目を細めた。

 10日のパラグアイ戦での後半アディショナルタイムの同点ゴールに続き、歴史的勝利をもたらす一撃を決めた上田。指揮官が見い出したストライカーは、名実共にエースとなった。

(FOOTBALL ZONE編集部・井上信太郎 / Shintaro Inoue)



page 1/1

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング