長崎スタジアムシティ開業から1年 チームに与えた影響…田河社長が語る「嬉しい誤算」

長崎の代表取締役社長を務める田河毅宜氏「開業がゴールではなく、スタート」
V・ファーレン長崎の本拠地「PEACE STADIUM Connected by SoftBank」を核とする複合施設「長崎スタジアムシティ」の開業から、10月14日で1年を迎えた。スポーツを軸とした地方創生の新たな可能性を見出した前例なき挑戦。長崎の代表取締役社長を務める田河毅宜氏がインタビューに応じ、反響の大きさやスタジアムの未来図を語った。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・工藤慶大/全2回の2回目)
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今年でクラブ創設20周年を迎えた長崎は、昨年まで諫早市にある「トランスコスモススタジアム長崎」を本拠地として、歴史を積み重ねてきた。しかし、「街なかスタジアムになったことで、長崎県民でも初めてサッカーを見に来たという方々が増えたんです」と田河社長が語るように、既存のファン層を超え、これまでサッカーに接点のなかった長崎市民をスタジアムへと向かわせたのだ。
「これはあのスタジアムの持つ魅力、ふらっと立ち寄れるとか、ただサッカーを観戦するだけではない価値提供みたいなところが強みとなって、新しい初めての観戦体験をしてもらっているお客さんが増えています。1年経ってみて、そこの成果というのはすごくクラブとしても嬉しいと捉えています」
年間来場者数は、8月の時点でJ1時代を超えるクラブ史上最高に到達。平均来場者数も、約2倍に跳ね上がっているという。利便性の高い立地と、観戦だけにとどまらない複合的な体験価値が後押しし、「予想以上の結果として出ているのは、新規のお客さんです。こんなに多くの方々に初めて来ていただけるとは想定していなかったので、そこは嬉しい誤算です」と田河社長は明かした。
総事業費約1000億円と言われる前例のない挑戦だったが、「日々やりながら改善していく。開業がゴールではなく、スタートという感覚」と試行錯誤を続ける。「スタジアムを作って終わりではなく、そこから始まる新しいビジネスだと思っています。そこに関してはもがきながらやっています」と力を込める。
そんな新スタジアムの熱量とともに、チームも32試合を終えて16勝11分5敗の勝ち点59で、J1自動昇格圏内の2位につける。特筆すべきは、16試合で9勝5分2敗というホームでの勝率の高さ。それも後半アディショナルタイムのゴールで勝ち点を拾ったのが4試合もある。田河社長はスタジアムとの相乗効果は偶然ではないとし、専用スタジアムが与える心理的なアドバンテージを語った。
「サポーターの皆さんの応援の声が選手にダイレクトに届くスタジアムなので、試合をするたびにゴール裏を中心に、皆さんの熱量がすごく高まっているのは、クラブとして感じています。これはすごく大きな力になっていますし、応援の声をダイレクトに貰っているというところですごくありがたく思っています」
また、次なる一手として、「もっともっとアウェーのお客さんにも来てもらえるような、アウェーチームのサポーターの方にも選ばれるようなスタジアムに今以上になっていきたい」と今後の展望を明かす。クラブは長崎全域への経済波及効果を目標に掲げており、長崎県、長崎市などの行政や観光業界とも手を組み、試合だけではなく観光も楽しんでもらえるような仕掛け作りを目指す。
2年目に向け、スポーツの枠を超えた地方創生のモデルケースとして、さらなる進化を遂げる長崎スタジアムシティ。「パッケージツアーやグルメを考えるなど、アウェーチームのサポーターの皆さんに支持されるような取り組みに力を入れていきたい」とした田河社長は、長崎を訪れるのがワクワクするような新たな仕掛けを約束する。J1昇格へと突き進むチームとともに目が離せない。
(FOOTBALL ZONE編集部・工藤慶大 / Keita Kudo)





















