W杯まで8か月…森保監督の期限はどこに? 22歳を初招集、メンバー固定の“過去の例”

日本代表を率いる森保一監督【写真:徳原隆元】
日本代表を率いる森保一監督【写真:徳原隆元】

森保監督は来年3月まで、たくさんの選手をテストし、固めるつもりはないはずだ

 パラグアイ戦、ブラジル戦に向けた日本代表発表の際、森保一監督に聞いた。怪我人のためにメンバーが次々に入れ替わっているDF陣について、もうある程度計算できる選手たちで固めてコンビネーションを築いたほうがいいのではないかと思ったからだ。(取材・文=森 雅史)

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「ワールドカップ(W杯)までの残り時間が少ないなかで、今回、代表出場がまだ1試合の鈴木淳之介選手を招集されました。チームを熟成させる時間を考えたら、例えば中山雄太選手のような経験のある選手を入れておいたほうがよいのではないでしょうか。その点について、どうお考えですか」

 森保監督は「そういう選手たちを召集したほうが、実はチームの活動は安定するとは思っています」と答えつつ、実績のある選手は「チームスタッフも含めて彼らがどのぐらいやれるかは、コンディションさえよければ想像がつくところがある」と続けた。

 鈴木は湘南ベルマーレに在籍していた7月5日のヴィッセル神戸戦で足首を負傷。その後、移籍したコペンハーゲン(デンマーク)でもリハビリを続けていた。8月25日のリーグ戦でベンチ入りすると、9月24日のカップ戦で初出場し、ヨーロッパデビューをフル出場で飾った。

 続くリーグ戦では8分間の出場にとどまり、その後、チャンピオンズリーグ・リーグフェーズ第2節のカラバフ(アゼルバイジャン)戦で前半のみプレー。そして続くリーグ戦で初めて90分間出場を果たした。

 客観的に見れば、怪我明けでやっとリーグ戦フル出場を果たしたばかりという状況で、あと1か月様子を見て呼んでもよかった気がする選手だ。しかし今回の強豪との戦いにあえて招集したということは、来年のW杯メンバー入りをきちんと念頭に置いて招集したということだろう。つまり森保監督はまだチームを固めるつもりはないということになる。

 確かに2022年カタールW杯の際も怪我人が続出し、メンバー構成には苦心したようだった。あまりに早くから固めるとアクシデントに対応できないという考えもあるのだろう。特に森保監督は、就任直後の第1戦が地震で中止になったり、新型コロナウイルスの流行で数多くの予定が狂ったりと、想定外の事態に見舞われ続けている。

 そのため保険をかけたくなる心境は理解できる。しかし、本当にまだ固めなくてコンビネーションはできるのだろうか。過去の例を考えてみよう。

 2014年、アルベルト・ザッケローニ監督はどうだったか。当時、チーム関係者が「ザックにサプライズなし」と言うほど、ザッケローニ監督はメンバーを固めていた。そのため2014年の1月からメンバー発表直前までの試合に招集され、本大会に呼ばれなかった選手は6人に留まった。

 2018年、3月のヴァイッド・ハリルホジッチ監督の解任、その後の西野朗監督の就任という出来事があったにせよ、1月からW杯メンバー発表までに招集されながら本大会のメンバーから漏れてしまった選手は10人になる。

 では2022年はどうだったか。この年は新型コロナウイルスの影響のためW杯予選が長引き、通常よりもW杯前の試合数が多かったという事情があったが、1月以降W杯までに召集されたものの、本大会では招集されなかったメンバーは11人にのぼった。

 2018年はコーチとしてW杯に臨んだ森保監督にとって今回は3回目の本大会ということになる。そして過去2大会では、直前まで多くの選手を試しながらコンディションを見極め、本番に向けてチームを作り上げてきた経験を持っている。

 そして2014年は1分2敗、2018年と2022年はベスト16進出という結果になった。そのため、最後まで広く選手を見て多くの選手に基本的な部分を理解させておき、直前にチームの完成度を急速に高めたほうがいいと考えているのだろう。

 こうやって調べていくと、私の記者会見での質問は完全に的外れだった。森保監督は来年3月まで、たくさんの選手をテストし、固めるつもりはないはずだ。

 その森保流の、あるいは日本サッカー界が培ってきたノウハウが通じるかどうかは来年にならないと分からない。しかし、この試行錯誤は日本がさらに上のレベルになるためには、必ず通らなければならない道だということだけは明らかだ。

(森雅史 / Masafumi Mori)



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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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