負傷者続出の日本代表…4バックも「可能性はゼロじゃない」 組み合わせの最適解は?

長友佑都も言及「これだけCBが欠けてると4にする可能性はゼロじゃない」
2026年北中米ワールドカップ(W杯)に向け、底上げを図らなければいけない日本代表。9月のアメリカ遠征では、ホスト国のメキシコ、アメリカ相手に無得点で未勝利だっただけに、10月のパラグアイ(10日=吹田)、ブラジル(14日=味スタ)相手には、必ずゴールを奪って内容ある好ゲームを見せなければならないだろう。(取材・文=元川悦子)
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攻撃面の活性化は急務の課題だが、同時に負傷者続出の守備陣の再編も重要なテーマと言っていい。森保一監督就任後、最終ラインの軸を担ってきた冨安健洋、伊藤洋輝(バイエルン)、町田浩樹(ホッフェンハイム)が長期離脱中。若手の有望株・高井幸大(トッテナム)も新天地に赴いてから怪我などで出場機会がなく、9月以降は選外が続いている。そして今回、リーダー格筆頭の板倉滉(アヤックス)も負傷し、活動直前に辞退を強いられた。
幸いにして、最終予選序盤に3バック中央を担っていた34歳のベテラン・谷口彰悟(シントトロイデン)が戻ってきたものの、アキレス腱断裂から復帰後の初代表ということで、どこまでやれるか未知数なところもある。
「今まで組んでいたメンバー、ずっと出ていたメンバーがどんどんどんどん1人ずつ欠けて、今はもう本当に前戦っていたスタメンの選手がいないくらいの状態になっている。もちろん簡単ではないと思いますね」
W杯4回出場の長友佑都(FC東京)も顔を曇らせたが、いかにしてこの陣容で南米強豪2か国の攻撃を封じるのか。今回参戦しているメンバーの底力が試されるのだ。
そこで気になるのが、パラグアイ戦とブラジル戦の最終ラインの組み合わせ。指揮官がこれまで通り、3バックをベースにするなら、やはり世界最強レベルのブラジル戦にベストの編成でのぞむはずだ。
そこで参考になるのが9月のメキシコ戦(オークランド)。この試合では、右から板倉、渡辺剛(フェイエノールト)、瀬古歩夢(ルアーブル)という並びで戦い、強豪相手に非常にいい守りを見せた。それを踏まえ、渡辺と瀬古をそのまま起用し、もう1枚に谷口を入れて、右から渡辺、谷口、瀬古という並びにするのが、いい感覚を持ち込める最適解ではないか。
ただ、前述の通り、谷口は強度やコンタクトの部分でやや不安もあるため、日本が主導権を握れる時間が長くなるパラグアイ戦に起用して様子を見るという手もある。
その場合、パラグアイ戦で橋岡大樹(スラヴィア・プラハ)、谷口、安藤智哉(福岡)という組み合わせでトライし、勝負のブラジル戦では森保監督が高く評価している22歳の成長株・鈴木淳之介(コペンハーゲン)を抜擢するのが、いいアイディアではないか。
鈴木淳之介ならば、スピード対応は問題なくできる。180センチと小柄ではあるものの、大柄な選手が揃うデンマーク1部で日々経験を積んでいるのも大きい。
「外国籍の大きい選手だったり、デンマーク人も平均身長がみんな大きいんで、全員身長が185センチ以上のチームもありますし、そういうなかでバチバチやれるのは、すごくいい経験かなと感じます。高さへの対応は自分の弱点だと思っていますけど、身体を当てたり、ずる賢くいろんなことをやってます」
こう語るように、本人も自信をつけている様子。W杯を8か月後に控え、今回チーム最年少のDFに世界最高レベルを体感させるのは、本大会を視野に入れてもメリットは少なくない。
一方で、10月シリーズでは4バックに再トライすることも考えられる。長友も「これだけセンターバック(CB)が欠けてると4にする可能性はゼロじゃない」と合宿初日に話していたが、8日の非公開練習後にDF4枚が並んでハイボールをクリアする練習を実際に行っていたのだ。
我々報道陣が確認できた組み合わせは、右から望月ヘンリー海輝(町田)、渡辺、安藤、鈴木淳之介という並びだったが、それ以外のパターンも試していると見られるだけに、どうなるかは分からない。
長友はこの練習に参加せず、長谷部誠コーチとパス交換をするにとどまったが、実際に試合で4バックにシフトするとなれば、長友も両SB要員と位置づけられるはず。彼やマルチ型の鈴木淳之介、橋岡、望月らはSBでも計算できる仕事ができるだろう。主力CB不在の今こそ、あえて4バックにトライして、W杯本番で使えるかどうかを確認するのも一案ではないか。森保監督の判断が待たれるところだ。
「W杯でベストメンバーで戦えるかと言ったら、必ずしもそうではないと思う。もしかしたら、もっと欠けるかもしれない。そのなかで選手がいないから諦めたらそれで終わり。今いる選手で100%の力を出す、チームとしても個人としても全力を出すっていう部分を求めていかないと思います」
長友もこのように強調していたが、この先、怪我人が本当に戻ってこられるという確証はないのが現実だ。
離脱者に目を向けると、冨安は無所属で調整を続けているものの、これだけ長い期間、ピッチに立っていなければ、トップフォームを取り戻せるとは言い切れない。伊藤に関しても、同じ箇所の怪我を再発させているだけに、復帰できたとしても慎重な取り組みが求められるだろう。町田も復帰がW杯前にズレ込みそうだし、高井も冬の移籍期間のレンタル移籍が噂されていて、どうなるか分からない。
そういう苦境にあるため、森保監督も今回のメンバー発表時に「アメリカでやっている選手」と37歳の吉田麻也(LAギャラクシー)の存在に言及したほどだ。
けれども、日本代表の未来を考えると、できるだけ若い選手も入れながらW杯に挑んだ方がいい。そういう意味では、やはり瀬古や鈴木淳之介ら2000年代生まれの選手が絶対的主軸になってくれるのが有難い。今回2連戦で彼らがどれだけ堂々たるパフォーマンスを見せるのか。そこに期待しつつ、まずはパラグアイ戦の最終ラインの編成、連係面、安定感をしっかりと見極めたいものである。
(元川悦子 / Etsuko Motokawa)

元川悦子
もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。





















