広島から読み解く森保ジャパン 同じシステムも違う役割…最も得意な“展開”

森保一監督が率いた広島時代と比較
10月の強化試合のメンバーが発表された。パラグアイ、ブラジルとの2試合は日本代表の現在地を知る良い機会になりそうだ。
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今回も3-4-2-1システムを前提とした招集メンバーだと思う。このシステムは森保一監督がサンフレッチェ広島を率いていた時の定番だった。ウイングバックに攻撃的な選手を起用するのが特徴的で、広島時代もミキッチや柏好文などがプレーした。
今回も右は堂安律、伊東純也、望月ヘンリー海輝が招集されている。左は中村敬斗と相馬勇紀の復帰組。いずれも突破力のある攻撃的なプレーヤーである。
もう1つの特徴はボランチの構成。1人はビルドアップの際に下がってCBと連係し、もう1人はアンカーポジションに入る。広島では森崎和幸が下がるボランチ、青山敏弘がアンカーだった。日本代表では3バックの組み立て能力が高いので、必ずしもボランチの1人が下がるわけではないが、相手のシステムとの噛み合わせを見ながら臨機応変に下がるボランチは戦術的なキーマンだ。
W杯アジア予選では守田英正がビルドアップの調整役を果たしていたが今回は未招集。田中碧か鎌田大地がその役割を担うのではないかと思う。ただ、アンカーに残るボランチのほうが技術的には難しいので、むしろ田中や鎌田はアンカーにして、遠藤航や佐野海舟が下がった方がスムーズな気もする。いずれにしても攻守の要となるポジションなので、その役割分担は注目される。
広島の2シャドーは1人がパサー、1人がセカンドトップという組み合わせが多かった印象がある。例えばパサータイプが高萩洋次郎、セカンドトップが石原直樹というバランス。今回のメンバーだとパサーとして久保建英、鎌田大地。セカンドトップ型は南野拓実、町野修斗がいる。初招集の斉藤光毅は左サイドかシャドーだと思うが、シャドーならセカンドトップ型になる。
広島時代の森保監督は前任のミハイロ・ペトロヴィッチ監督の戦術を継承していた。押し込んだ際は最大5トップになる超攻撃布陣はそのままハイプレスに移行できる強みがあり、日本代表ではそれがより洗練された武器になっている。一方、このシステムの問題はウイングバックの稼働域が大きすぎるために、ミドルゾーンのブロックが組みにくく、ハイプレスが外された時には中間がなくてローブロックになってしまうことだった。
5トップに対して相手が5バックで対応した場合、双方が横方向へ平べったくなり、そこでカウンターされると5人が置き去りにされるリスクがある。日本代表はプレスバックの速さでカバーしているが、システムの機能性としてハイプレスかローブロックかの二択になりやすい。森保監督時代の広島は、リードするとリスクを軽減してローブロック中心に移行することが多かった。
米国遠征ではそうした先行逃げ切りの流れにはならなかった。メキシコ戦は攻勢の時間帯に決め損ねて0-0。米国戦は先制されたうえに追加点も食らっての敗戦。リスクの大きいプレーが有効な時間はある程度限られているので、日本代表にとって先制点はかなり重要と思われる。
(西部謙司 / Kenji Nishibe)

西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。





















