森保監督に求めたい「コアメンバー+新戦力」 W杯まで残り8試合…土台引き上げに「3つの注文」

森保一監督に求める3つの注文【写真:荒川祐史】
森保一監督に求める3つの注文【写真:荒川祐史】

パラグアイ、ブラジルの南米勢と2連戦

 10月のパラグアイ代表(10日=吹田)・ブラジル代表(14日=味スタ)との2連戦に挑む日本代表メンバー27人が2日に発表され、9月シリーズから7人が入れ替わった。

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 2026年北中米ワールドカップ(W杯)最終予選を戦ったコアメンバーでは、三笘薫(ブライトン)が招集外となり、前回不参加だった田中碧(リーズ)、中村敬斗(スタッド・ランス)が復帰した。

「9月を振り返って成果と課題を考えた時、いわゆるコアメンバーであってもW杯出場を決めた3月から招集していなくて、6月、9月とかなりの期間が空いた中、ベースの部分で意思共有、戦術共有をしていかないといけないという問題点が出た。今回はベースをどれだけ強固にできるかにフォーカスしたい」と森保一監督は記者会見で強調。W杯常連国のパラグアイ、世界最高峰のブラジルを相手にチームの土台を引き上げていく構えだ。

 そんな指揮官にまず注文したいのが、コアメンバーとそれ以外の積極的な融合だ。

 9月のメキシコ戦(6日=オークランド)・アメリカ戦(9日=コロンバス)2連戦を改めて見てみると、初戦は遠藤航(リバプール)、南野拓実(モナコ)、板倉滉(アヤックス)、堂安律(フランクフルト)ら主力級をズラリと並べ、内容的に上回りながら、0-0のドロー。ある程度の手応えを掴んだが、11人総入れ替えに踏み切ったアメリカ戦は0−2の完敗。3時間の時差・長距離移動を伴う中2日の超過密日程ということもあり、大幅なスタメン変更はやむを得ない部分もあったが、慣れない組み合わせに戸惑いを覚える選手がいたのも事実。連携面にギクシャク感が見られたのも確かだろう。

 ボランチを例に取ると、メキシコ戦にスタメン出場した遠藤と鎌田大地(クリスタルパレス)はかつてシント=トロイデンで共闘していた間柄であり、2022年カタールW杯前から代表でも長くプレー。鎌田がボランチに入った回数はそこまで多くないものの、お互いの特徴をよく理解している分、スムーズな関係性が光った。

 しかしながら、アメリカ戦でコンビを汲んだ佐野海舟(マインツ)と藤田譲瑠チマ(ザンクトパウリ)は時間の経過とともに距離感が遠くなり、1失点目を喫した前半20分以降はお互いにボールを受けるアクションが停滞。結果的に守備一辺倒の展開になってしまった。

「ボールを受けるのを怖がっていた? そういう時間帯もあったと思いますし、それを減らさなければいけない」と佐野が言えば、藤田の方も「2人の距離感がうまくコントロールできなかったというのが率直な感想です」と反省しきりだった。このコンビは6月のオーストラリア戦(パース)に続く2回目。その時も同じようなノッキングを起こしており、「遠藤や鎌田、田中、守田英正(スポルティング)ら代表の戦いに慣れている選手と佐野ら新顔を組ませた方が良さが出る」という意見も複数の関係者から聞こえてきたほどだ。ゆえに、10月シリーズではそういうチャレンジをしてほしいところ。田中の復帰によって森保監督もトライしやすい環境になったはずだ。

 守備陣にしても、メキシコ戦でポジティブな印象を残した板倉、渡辺剛(フェイエノールト)、瀬古歩夢(ルアーブル)のところに、森保監督が絶賛する22歳の鈴木淳之介(コペンハーゲン)を加えた構成で戦うなど、変化をつけてもらいたい。

 2018年夏の代表監督就任後、森保監督は代表シリーズの際、「主力中心・サブ中心」という2チーム編成で戦うケースが少なくなかった。カタールW杯にしても、2戦目のコスタリカ戦は大幅メンバー変更に踏み切っている。そういった「2つのユニット」で動かそうとすると、代表経験の少ないメンバーの融合は進まないし、組み合わせの多様化によるチーム活性化は期待できなくなりがちだ。

 北中米W杯までの代表戦は今回のパラグアイ・ブラジル戦を含めて8試合程度しかない。うち2試合は大会直前のテストマッチだ。となれば、融合を進められるのは、この10月と11月くらいしかない。貴重な機会を最大限有効活用し、各ポジションで「コアメンバー+新戦力」という構成を積極的にトライしてほしいところだ。

 2つ目の注文としては、若い世代の起用時間をより増やしてもらいたい。前回は2001年生まれ以降のパリ五輪世代を8人招集。すでにコアメンバー入りしている久保建英(レアル・ソシエダ)、鈴木彩艶(パルマ)以外のブレイクに期待した。しかし、結果的にインパクトを残したのは望月ヘンリー海輝(町田)くらい。鈴木唯人(フライブルク)と関根大輝(スタッド・ランス)、細谷真大(柏)、佐野航大(NECナイメンヘン)は今回、落選という形になってしまった。

 そういった面々に代わって今回は斉藤光毅(QPR)をA代表に初招集。鈴木淳之介も呼び戻した形だが、序列を重んじる傾向の強い森保監督は代表実績の乏しい若手にあまり時間を与えないだろう。それでは、パリ世代の底上げ、選手層の拡大も叶わない。

 特に斉藤に関しては、三笘が不在で、中村もフランスリーグ2部降格によって立場が流動的になっているだけに、思い切って使わない手はない。カタールW杯からのメンバーが大半を占めるウイングバック(WB)にはフレッシュな人材が出てきてほしい。本番までに久保より年下の人材をどこまで戦力にできるか。それも10月2連戦を含めた今後への重要テーマになってくる。

 最後の注文はFW陣の2トップ起用である。9月シリーズではアメリカ戦の終盤に上田綺世(フェイエノールト)と町野修斗(ボルシアMG)の2トップにトライしたが、時間が短すぎて中途半端な形で終わってしまった印象も否めなかった。

 今は上田、町野、小川航基(NECナイメヘン)という長身FWが揃っているのだから、彼らをうまく使いながら空中戦で勝負する形も構築していけるはずだ。特にパラグアイ戦は堅守が相手の特徴ということで、外からの崩しが重要になってくる。

 前線にターゲットが2枚いれば、1人が競って、1人がこぼれ球を拾いながらゴールを狙う形も作りやすい。その場合、3バックのままだと2列目は1枚になってしまうが、鎌田も久保も、堂安にしてもトップ下で十分プレーできる。手堅い守りを強引にこじ開けられるような前線の新たなコンビを作っていくことが、9月シリーズ無得点だった攻撃のテコ入れにつながるのではないか。そこも指揮官には考えてほしい点だ。

 特に1番目に挙げた選手の融合については、真っ先に取り組んでほしい課題。6日からスタートする代表合宿で森保監督がどのようなアクションを起こすのか。そこを注意深く見守っていきたいものである。

(元川悦子 / Etsuko Motokawa)



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元川悦子

もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。

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