Jユース→強豪校の監督就任「行き詰っていた」 “教員”とは違う…選手との関係作り「見ているよ」

日体大柏で監督を務める根引謙介氏
2006年をもって11年間のプロ生活を終えた根引謙介は、セカンドキャリアとして指導者の道に進んだ。古巣・柏レイソルのスクールコーチをはじめ、各カテゴリーを担当。そして、2019年に日体大柏のコーチとなり、その2年後から監督を任されている。Jクラブにサッカー人生のルーツを持つ根引監督は、高校サッカーという新たな環境に身を置き、指導者としての視野を広げている。(取材・文=小室 功/全3回の3回目)
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「二つ返事で、引き受けました」
日体大柏サッカー部での指導を依頼されたとき、根引謙介監督に迷いはなかったという。
「現役を退いてから柏レイソルのアカデミーで指導を続けていましたが、自分のなかで少し行き詰っていたというか、ほかの風景を見てもいいころなんじゃないかと感じていました。そうすることで、今まで積み上げてきたものが一度、整理できるだろうし、新たな発見もあるはずです。指導者としての視野が確実に広がるだろうと思っていました」
柏レイソルのアカデミー出身で、“部活”や“選手権”とは無縁のサッカー人生を送ってきた。心機一転、高校サッカーという未知の世界に指導者として足を踏み入れた。
柏レイソルのアカデミーと、日体大柏のサッカー部。取り巻く環境や掲げる目標に違いがあると思われるが、チーム作りを進めていくうえで、どのような点を重視しているのだろうか。
「大枠というか、ベースの部分は変わりません。自分がやりたいプレーをするのではなく、チームが勝つために必要なプレーをする。そこをまず理解させることが大切だと考えていますね。サッカーはやはりチームスポーツ。チームとしての目標は何なのかといえば、相手より1点でも多く点を取って勝つことです。そのなかで、自分の個性や強みを表現してほしいし、仲間と連係しながら、攻守に主導権を握って躍動してほしい。そこを常に目指しています」
さらに、こう付け加える。
「選手たちには形じゃないよ、と伝えています。相手の陣形や特徴、狙いを見て、どうやって攻めるのか、どうやって守るのか。臨機応変にできるのが、やはりチームとして重要だと考えています」
選手との距離感を大切にしている
高校のサッカー部の監督といえば、同校の教職員が務めるのがほとんどだろう。日体大柏のサッカー部に携わって、かれこれ7年目に入る根引監督は、いわゆるプロの指導者。選手との距離感をはかるうえで、どのような点に注力しているのか。
「部活というのは、やはり学校があっての活動なので、学校での生活がすごく大切だと思いますね。僕自身は教員ではありませんが、日体大柏のサッカー部には顧問の先生がいますし、コーチングスタッフのなかにも同校の先生がいますから、そういう方々としっかりコミュニケーションをとって、選手たちの普段の様子を把握するようにしています。高校生というのは、いろいろなことに興味を持ち始める時期です。サッカー部以外の友達との関係も広がっていくでしょう。どこに引っ張られるのか、分からない年代でもあるので、ピッチのなかだけではなく、学校での生活にもしっかり目を配りたいと考えています」
だからといって、事細かな規律で縛っているわけではない。
「身だしなみや授業中の態度、登校時間など、学校には学校のルールがある。それをシンプルに守りましょう、当たり前のことを当たり前にやりましょうといっているだけです。たとえば、ふだん遅刻が多く、時間にルーズな選手は、切り替えのところでさぼったり、そういった傾向が見てとれます。ピッチの外がピッチのなかに影響するよ、ピッチの外となかはつながっているよ、と。選手たちに、そういう話をよくしますね」
千葉県のサッカー強豪校の仲間入りをした日体大柏の部員総数は101名と、なかなかの大所帯だ。A、B、C、1年生の4つのチームに分かれ、活動している。Aチームを中心に指導する根引監督は、可能な限りほかのチームの練習にも顔を出し、選手たちのちょっとした変化や成長を見逃さないようにしている。
「AとBが一緒に練習したあと、Cと1年生が練習するといったスケジュールを組みますが、担当コーチとともに(監督である)自分がグラウンドにいることで、Aチーム以外の選手にも“ちゃんと見ているよ”と伝えています。選手にとって、それが何よりのモチベーションになるでしょうから」
選手権予選に向けて着々と準備中
Aチームは現在、U-18プリンスリーグ関東2部で奮闘中だ。2012年、学校の名称変更前の柏日体時代に同リーグを戦っているので、二度目の挑戦となる。
「序盤戦はなかなか勝ちきれず、という感じでしたが、粘り強く戦い、試合を追うごとにもり返しました。リーグ戦の半分を終わった時点で3位と、1部昇格が十分に狙える位置にいるので、ここからさらに勝ち点を積み上げていきたいです」
リーグ後半に入ってから足踏み状態が続くものの、チームの目標はプリンスリーグ関東1部、次いで高校年代の最高峰であるU-18プレミアリーグへの昇格にほかならない。そして、もうひとつは二度目の選手権出場だ。そのための課題を、どこに置いているのか。
「プレー強度ですね。球際の強さだったり、アプローチの速さだったり、切り替えの素早さだったり、ひとつカテゴリーが上がると、そういう細かい部分のレベルが高くなるなと実感します。そこを念頭に置きながら日々の練習に取り組まなければいけないし、プレー強度の高い相手とトレーニングマッチを組むことで、少しでも改善していきたいです」
今年6月8日のインターハイ県決勝で、U-18プレミアリーグEASTに属する流経大柏と激突し、日体大柏は1-3で敗れた。立ち上がりから相手の“圧”に押されてしまい、ゲームの主導権を握れずにいた。
課題が浮き彫りになった。それを成長の糧に変えていく。
「流経大柏との試合のなかで、感じたもの、得られたものがたくさんあって、間違いなく自分たちの“ものさし”になっています」
今秋に控える第104回全国高校サッカー選手権の県予選のなかで、日体大柏は4年連続の決勝進出を目指す一方、流経大柏との直接対決が実現すれば、リベンジのチャンスでもある。今いるメンバーで、このチームで、最大出力をもって、挑む。
(小室 功 / Isao Komuro)





















