千葉に現れた“新参者”「また出たい」 超激戦区で3年連続決勝…躍進を支えるメソッド

日体大柏サッカー部の根引謙介監督【写真:小室 功】
日体大柏サッカー部の根引謙介監督【写真:小室 功】

日体大柏が激戦区千葉で選手権初出場

 高校サッカー界のなかで、全国屈指の激戦区といわれる千葉県に注目すべき存在が現れている。強豪の市立船橋や流経大柏に次いで、ここ数年、急速に力をつけてきたのが日体大柏だ。2015年にJリーグの柏レイソルと相互支援契約を結び、その後、初の選手権出場を果たし、今年度はU-18プリンスリーグ関東2部に昇格。プロ選手も輩出するなど、着実に成果を上げている。現在、チームを率いるのは根引謙介監督だ。柏レイソルからの指導者派遣業務の一環として2019年に同校コーチに就任、2021年から監督を託され、手腕を発揮している。(取材・文=小室功/全3回の1回目)

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 2022年11月12日は日体大柏サッカー部にとって記念すべき一日になったことだろう。強豪ひしめく千葉県予選を勝ち抜き、ついに“選手権初出場”を手繰り寄せたのだから。当時、監督就任2年目を迎えていた根引謙介は万感の思いを込めて、こう振り返る。

「長年、日体大柏のサッカー部に携わってきた人たちの悲願でしたし、それを達成したときの喜びや感動は今でも忘れられません。僕自身は新参者に近いですけど(苦笑)、ここまで頑張ってきた人たちの努力が報われた瞬間であり、チームに関わるみんなの涙を見たとき、本当に勝ってよかったなと思いました」

 2022年11月12日は土曜日だった。県決勝が行われたフクダ電子アリーナに多くの応援団が駆けつけた。第101回全国高校サッカー選手権本大会の出場をかけた大一番だ。対する相手はいわば“常連”の市立船橋。同年のインターハイの県決勝でも相まみえ、2-3で敗れていただけに、日体大柏は雪辱を期していた。

 前半を0-0で折り返し、後半にオウイエ・ウイリアムと古谷柊介がゴールを奪い、2-0で難敵に快勝。日体大柏サッカー部の新たな歴史の1ページが、ここに記された。

 先制点を決めたウイリアムは卒業後、柏レイソルに進み、プロのキャリアをスタートさせ、現在はFC岐阜に期限付き移籍中だ。そして追加点を決めた古谷は関東大学サッカーリーグ戦1部に属する東京国際大の3年生となり、攻撃陣のかなめとしてエースナンバー10番を背負っている。U-23アジアカップ予選に臨むU-22日本代表に選出されるなど、“次なるステージ”に向けて奮闘中だ。

 日体大柏は、初の選手権でベスト8まで勝ち進んだ。“夢の国立”に一歩届かなかったものの、実り多き4試合を戦った。

「選手権にかかわった選手たちが“また出たい大会”と口をそろえますけど、実際に経験してみて、その気持ちがよくわかりました。お正月といえば、高校選手権。サッカーをあまり知らない人でも知っている歴史と伝統のある大会ですからね。メディアの取り上げ方や注目度がまったく違いますし、たくさんの人たちに試合を見てもらえるので、それによって刺激され、成長していく部分があるなと感じました。あのような素晴らしい雰囲気のなかで、試合をする機会というのはなかなかないでしょう。だからこそ、ひとりでも多くの(日体大柏の)選手たちに経験してほしい。千葉を勝ち抜くのは簡単ではありませんが、“続けていきたい”と強く感じました」

3年連続で決勝進出…転機となった“柏メソッド”

 第101回大会以降、2度目の選手権出場はかなっていない。だが、その強さは一過性のものではない。実は2022年から3年連続で、選手権予選の県決勝に進出しているのだ。一昨年は市立船橋に、昨年は流経大柏に敗れ、本大会への道を阻まれたが、「自分たちが日々、取り組んでいることに間違いはない」と、根引監督は確かな手ごたえを口にする。

 絶対的存在の市立船橋と流経大柏をはじめ、八千代、習志野、専大松戸、中央学院など、古豪や新興勢力がそろい、しのぎを削り合う千葉県のなかで3年連続の決勝進出はやはり特筆に値する。ただ、だからといって日体大柏に過信や慢心はない。

「勝ち負けを競っているので、やはり勝ちきることが大切です。その点では、まだまだ足りない部分がある。そこを突き詰めながらチームとしても個人としても成長していけたらと考えています」

 激戦区・千葉に旋風を巻き起こす日体大柏は、2019年に33年ぶりにインターハイ出場を果たし、今年度からU-18プリンスリーグ関東2部に昇格。折り返しの時点で3位と、“さらなる上”を目指し、好位置をキープしている。

 こうした躍進の原動力は、学校側の手厚いバックアップはもちろん、育成年代の指導に定評のある柏レイソルとの提携にほかならないだろう。2015年に相互支援契約を結んだことで、指導者の派遣事業はもちろん、毎週金曜日に日体大柏の1年生チームと担当コーチが柏レイソルのグラウンドにいき、アカデミースタッフのもとで、トレーニングするなど、さまざまな形で交流を深めている。

 いわゆる“柏レイソル・メソッド”の導入が、確かな転機となった。

「選手個々の特徴や強み、キャラクターによって表現されるサッカーに多少の違いはありますが、ボールを大事にすること、攻守に主導権を握りながらゲームを進めていくことなど、目指すサッカーの基本コンセプトは柏レイソルと日体大柏は同じです。毎年、主軸の3年生が卒業するので、チーム作りが難しい面もありますが、むしろそこを前向きにとらえたいと思います。このメンバーで、このグループで、サッカーができるのは1年間だけ。自分たちが志向するサッカーのマックスを目指してやっていこうというような話をしています」

 そして、こう意気込む。

「千葉には市立船橋や流経大柏のほかに日体大柏もいるぞ、と。結果を出すことで、自分たちの存在をもっとアピールしていきたいです」

 チーム強化を託される根引監督は、虎視眈々と狙っている。

(小室 功 / Isao Komuro)



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