3年生で掴んだトップチーム初先発「苦しかった」 “新たな選択肢”としての自負「自分が勝たせる」

帝京の村田幸基【写真:FOOTBALL ZONE編集部】
帝京の村田幸基【写真:FOOTBALL ZONE編集部】

帝京3年のDF村田幸基「自分がチームを勝たせるという思いでやっています」

 9月13日に行われたプリンスリーグ関東1部・第11節、帝京vs山梨学院の一戦で先制弾を叩き込んだのは、この試合がトップチーム初スタメンとなった3年生のセンターバック村田幸基だった。

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 前半15分、左サイドのフリーキックでFC今治への内定が決まっているMF久保恵音のキックに対し、ファーサイドで187センチの圧倒的なサイズとジャンプ力を活かしてヘディングシュートを突き刺した。守っても空中戦の強さと対人の強さを発揮し、ビルドアップでも安定したプレーを見せ、3-1の勝利に貢献してみせた。

 前述した通り、この試合が村田の3年間通して初のトップでのスタメン。1週間前の第10節の鹿島学園戦に至っては、初のトップでの公式戦出場を途中出場で果たしていた。

「1年の時にルーキーリーグに少し出られていて、『このままいけるのかな』と甘い考えを持っていましたが、そこからが本当に苦しかった。みんなレベルが高くて、昨年は1年間ずっとセカンドチームでT3リーグ(東京都3部リーグ)に出場をしていました。今年こそと思っていたのですが、4月に負傷をして7月に復帰。本当に思い通りにいかないことばかりでしたが、決して心が折れることはありませんでした。『わずかかもしれないけど、どこかでチャンスは来る』と信じてやっていました」

 村田の今季公式戦初出場は8月29日のT2リーグ・修徳戦だった。この試合で途中出場をして1ゴールを挙げると、このパフォーマンスを見た藤倉寛監督は決断を下した。

「CBの中川慈司が負傷離脱した影響もあって、CBを誰にするか悩んでいました。村田はずっとBチームで努力を重ねてきた姿を見てきたので、起用しようと思いました」(藤倉監督)。

 千載一遇のチャンスで、村田は藤倉監督の期待にプレーで応えてみせた。中川の復帰は間近だが、村田の台頭によって、中川を本来のポジションであるボランチやサイドバックで起用する可能性も出てきた。今、村田は負傷者の穴埋めではなく、完全にチームの新たなオプションになっている。

「今までずっと出られなかったからこそ、仮に誰かの穴埋めで出られたとしても、試合に出る以上はチームを代表して出ているという自覚と責任を持って全力でやる気概は持っています。全部勝つ、自分がチームを勝たせるという思いでやっていますし、これからもそこは変わらないです」(村田)

 強い信念が言葉の端々から伝わってくる。「なぜそこまで強い思いを持っているのか」と聞くと、その理由をこう口にした。

「僕は数ある選択肢の中で、自分の意思で決断をして帝京の門を叩いたからこそ、どんなことがあってもやり抜かないといけないんです」

 柏レイソルU-12から鹿島アントラーズつくばジュニアユースに進んだ村田は、学業優秀だったこともあり、ユース昇格が叶わないと分かると、すぐに高校進学で複数の道をピックアップした。村田には千葉県トップレベルの進学校である専修大学松戸高、そしてサッカーの名門校である帝京と、もう1つ全国トップレベルの強豪校という、3つの選択肢があった。

「勉強で行くならば専大松戸が一番良かった。でも、やっぱりサッカーに全力で打ち込みたい気持ちもあって、本当に悩みました」

 そのなかで最終的に判断をしたのが帝京だった。

「日比(威)先生(現・順天堂大学サッカー部監督)と、根本裕一監督(現・鹿島つくばジュニアユースコーチ)とのつながりで練習会に参加をさせてもらって、サッカーの質、日比先生の人柄を含めて『ここで勝負したい』と思いました」

 帝京にはアスリートコース、進学コース、特進コース、インターナショナルコースがある。村田も他の選手同様にアスリートコースに進んだが、「勉強は絶対に疎かにしないと決めていた」と進学を決めた時から文武両道を掲げており、入学時にはすでに志望大学も難関私立大に決めていた。

「サッカーは本当にレベルが高くて、毎日ついていくのに必死でした。勉強もアスリートクラスは特進などと比べて授業のスピードが少しゆっくりなので、自分で時間を見つけて勉強して、特進のペースを上回れるように工夫してやっています」

 ある意味、進学校に行っての文武両道よりも、サッカーのレベルが高くて競争が激しく、勉強面でも自分で進捗を管理しないといけない分、難易度は高いと感じる。だが、村田は今年6月の模試で文系(国数英)において、全コースを含めて学年1位を獲得。英検も準1級の一次試験を合格している。

 ここまで村田が勉強に打ち込める理由は、桐光学園でGKとしてインターハイ準優勝を成し遂げ、現在は国際基督教大学(ICU)に通う兄・侑大の存在が大きかった。

「兄は昔から英語が得意で、家ではいきなり英語で話しかけられることもありました。サッカーもハイレベルな環境に身を置いて、全力で打ち込んで結果を出して、勉強も一切手を抜かずに、第一希望に進んだ兄の背中を見て、僕も英語を駆使して海外で活躍したいという強い思いがあるんです」

 現時点の目標は入学時と変わらず、帝京で全国制覇をして、10個目の星を獲得することと、第一志望の大学に受かって、もう1つの夢に向かって走り出すこと。まさに今、その両方を手に入れるチャンスが訪れている。

「まだまだ何も手にしていないので、これまで通り両方でやるべきことをやるだけです」と話すとおり、村田の両足はきちんと地に付いている。これからも周りに流されることのない信念を持って文武両道を貫き、その先にある目標を達成する瞬間と、新たな目標が生まれることに胸を躍らせながら、ただひたすらに己が信じた道を前に進んでいく。

(FOOTBALL ZONE編集部)

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