“トップスコアラー”の日本代表は「圧倒的」 開幕5戦5ゴール…量産秘訣は邪魔にならない「9.5番」

日本代表FW上田綺世はオランダ1部で得点ランクトップ
フェイエノールトが5戦5勝でオランダ1部リーグの首位を走っている。日本代表FW上田綺世は5得点の活躍。ブリニュエル・ウィルムソン(フローニンゲン)と並ぶリーグトップスコアラーだ。
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上田は典型的な9番(CF)である。
パワフルでDFを背負っても圧倒的に強い。第4節のスパルタ戦では2得点しているが、最初のゴールは上田の強さがよく表れていた。ペナルティエリア内で縦パスを受けると、右足のコントロールから左→右のダブルタッチ(合計トリプルタッチ)で背後のDFかわして決めた。その間、上田は左腕でDFをブロックしていて寄せつけず。
パスを受ける前はDFの背中側にポジションをとっていたが、急にDFの前に入ってきてクサビのパスを引き出している。上田は常にDFの背中側にポジションをとる。マークしているDFがボールと自分を同一視野に収められない場所にいて、そこから動くのでDFの反応が遅れる。この時もそうだった。
最初にDFの背中側をとる上手さ、そこからの動きの的確さ、そしてシュートのパワーと精度が格別。右足でも左足でも打てて、ヘディングも強い。縦パス、横からのクロスボール、どちらも得点に変換できる。
スパルタ戦の2点目はミドルシュートをGKが弾いたところをすかさず押し込んだ。こうしたこぼれ球を拾って決めるのも得意。シュートの正確さもあるが、常にボックス内にいるからである。
上田にないのはドリブルシュートだ。1人2人とかわしてシュートを決めるようなプレーはない。また、圧倒的なスピードもない。同じCFでもキリアン・エンバペのようなタイプではなく、ボックス内で勝負する。
セム・スタインの加入は上田にとって追い風になっていると思う。スタインはトゥエンテから加入したトップ下の選手。昨季は得点王とMVPを獲得していた。加入早々にキャプテンを任されていて期待の大きさがうかがえる。しかもまだ23歳。
スタインは4-2-3-1システムのトップ下だが、実質的にはほぼストライカーだ。組み立てる能力も高いのだが、中盤ではシンプルに味方にボールを預けてゴール前へ行く。得点チャンスには常にボックス内にいたいようで、その時はほぼ上田と同じ場所にいる。ポジションは「10番」だが「9番」に近い。こういうプレースタイルだから昨季6位だったトゥエンテで得点王になれたのだろう。
ゴール前で上田とスタインは重なっていて、そうなると互いに邪魔になりそうなものだが、この2人の場合は逆に互いに都合がいい。どちらも得点力に優れているが、ドリブラーではない。そしてどちらもワンタッチパスが上手い。孤立するより近くに味方がいた方がプレーしやすいタイプだからだ。
いる場所が近いので、どちらかが潰れたら、もう1人がフリーになりやすい。DFを抜くというより外してシュートする2人なので、コースが開かない時に隣にパスすればチャンスになるという安心感もあるだろう。「9番」と「9.5番」は相性の良い組み合わせである。
(西部謙司 / Kenji Nishibe)

西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。




















