森保Jは米遠征で何を得た? オプション用意は進歩か…解決必須な”長いチェックリスト”

森保Jはアメリカ遠征で0ゴール【写真:JFA/アフロ】
森保Jはアメリカ遠征で0ゴール【写真:JFA/アフロ】

森保Jは9月シリーズで0ゴールに終わった

 日本代表はメキシコ代表戦に引き分け、アメリカ代表戦に負けたことで問題点がいくつもくっきり浮かび上がってきた。それぞれは間違いなくワールドカップ本大会までに解決されなければいけないだろう。

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 一方で、この2試合でどんなテストができたかということも大切となる。なぜならワールドカップに向けたチェックリストのうち、何が終わって何が未完了なのかを考えなければいけないからだ。

 そこで、個人のプレーの出来以外に今回の2試合で何が確認できたのかというのを整理しておこう。

1. 3月以来召集のなかったメンバー、板倉滉、菅原由勢、伊東純也、南野拓実、三笘薫、前田大然、堂安律、上田綺世が合流して機能できるかどうか試せた

2. それまでの出場機会が4試合の渡辺剛、7試合の瀬古歩夢を起用した3バックが試せた

3. それまでの出場機会が1試合だった関根大輝、2試合だった鈴木唯人を2試合とも起用して経験を積ませることが出来た

4. これまでE-1選手権でだけ起用されていた荒木隼人、望月ヘンリー海輝を起用してどこまでできるか試せた

5. これまで試す機会が少なかった鎌田大地のボランチを2試合とも試すことが出来た

6. 三笘薫と堂安律の2シャドーを試すことができた

7. 7月のE-1選手権で試した長友佑都のセンターバック起用をアメリカ相手にも試すことができた

8. 瀬古歩夢がサイドバックとしてどこまでプレーできるか試すことが出来た

9. 望月ヘンリー海輝が自陣からのロングキックのターゲットとして機能するかどうか試した

10. 現在の守備陣にケガ人が多い時点でディフェンスの人材を試せた

12. 3バックから4バックに変更したときにどんな問題点が出るかチェックできた

12. 相手が3バックでウイングバックが開いたときのサイドの対応がチェックできた

13. 4バックと3バックというシステムのミスマッチのときにどこのポジションで問題が起きるか試せた

14. 3-2-4-1(3-4-2-1)、3-1-4-2、4-2-3-1など多くのシステムを試すことができた

15. アメリカ国内の試合を経験することができた

16. アメリカ国内移動を時差まで含めて経験することができた

ざっと考えただけでもこれだけのチェックを行えた。もちろんこれ以外に個人のパフォーマンスと適性、組み合わせも試していたはずだ。

オプションを用意している点は進歩か

 また、メンバー発表の際に森保一監督は「(メキシコ戦は)すべての局面で激しいプレッシャーの中でプレーをしなければいけない」「(アメリカは)個々の強度は高いですけど、より組織的に守備をしながら早い攻撃に繋げていく」と語っていた。

 いずれもアジアの国々との戦いでは見られなかったレベルだ。その意味では、アジア基準から世界基準への感覚の調整をすることができたというのがこの2試合の一番大きな意義だったのかもしれない。

 一方で、今回試そうとしてチェックできなかったことは何か。次のことが考えられる。

A. ゴール。決定機は作ったものの得点は生まれなかったのでさらに別の攻め方を構築する必要が生じた

B. 流れの中でのシステム変更。アメリカ戦は相手がシステムを揃え膠着状態に陥った。その前半戦の間にシステムを変更しミスマッチを生み出すような戦い方ができなかった。

C. 時差対策。今回も行っていたはずだが、中2日ということもありうまくいかなかったのではないか。今後更なる研究が必要だと思われる

 選手個人の問題を除けば、この3つが大きいのではないだろうか。

 いずれにせよ、長いチェックリストを確実に潰していくしかない。2022年カタールワールドカップの前は時間的な制約からほぼオプションを構築できなかったことを考えると今回は進歩している。それでも、まだまだやるべきことが多いのがしっかり分かったのは、いいことだ。

 10月にはFIFAランク43位パラグアイ、5位ブラジルとの戦いが待っている。パラグアイは2010年南アフリカワールドカップのベスト16で、ともに初のベスト8をかけてPK戦まで戦った相手。堅守は健在で今回の南米予選18試合で10失点しかしていない。またブラジルも本大会では優勝のダークホースに上がるだろう。そこでもまた多くのチェックがなされるはずだ。そして今回出た問題点が解決されることが求められている。

(森雅史 / Masafumi Mori)



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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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