Jリーグで激増する「大量得点」 原因は酷暑か過密日程か?…看過できない故障リスク

Jリーグで大量得点が激増している要因とは? (写真はイメージです)【写真:松尾/アフロスポーツ】
Jリーグで大量得点が激増している要因とは? (写真はイメージです)【写真:松尾/アフロスポーツ】

6月以降のリーグ戦は4試合に1試合以上のゴールラッシュが見られた

 暑くなったあと、大量得点が生まれる試合が増えた。2024年J1リーグの総得点は1013点。全380試合なので1試合平均2.67点が生まれていることになる。ちょっと多めに見積もって1試合あたり両チーム合わせて4点以上取っていたら、「大量得点」と言っていいだろう。(取材・文=森 雅史)

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 2025年2月はリーグ戦30試合が開催され「大量得点」は5試合。3月は38試合で5試合だった。4月は60試合のうち7試合、5月は58試合で13試合発生している。割合で言えば2月は17パーセント、3月は13パーセント、4月が12パーセント、5月は22パーセントだ。

 これが6月に入ると32試合のうち8試合、7月は22試合で6試合、8月は42試合で12試合の「大量得点」が発生している。6月が25パーセント、7月は27パーセント、8月は29パーセント。6月以降のリーグ戦は4試合に1試合以上のゴールラッシュが見られたということになる。

 気象庁によれば今年の6月から8月の日本の平均気温は1898年に観測が始まって以来最高となった。何人もの監督がこの気象の影響について語っている。と、同時に夏場の連戦の影響についても問題を指摘している。

「大量得点」は、よく言えばサッカーの華であるゴールがたくさん見られていいということになる。一方でサッカーというスポーツが3点差にすれば安全と考えられるほどロースコアであることを考えると、守備が崩壊してしまったとも言えるだろう。

 では、この大量得点が生まれているのは暑さの問題なのか、連戦の問題なのか。暑さについては過去10年のうち、6月から8月の平均気温が今年よりも2.24度低かった2019年と比較することで分かるだろう。

 すると2019年は2月が22パーセント、3月は27パーセント、4月こそ6パーセントと下がるものの5月は27パーセント、6月が33パーセント、7月35パーセント、8月33パーセントと今年よりも大量得点になる確率は多かったのだ。

 では大量得点が生まれたのは日程の問題なのか。最も大量得点が生まれた割合の多かった2019年7月は、3・10日に天皇杯2回戦、6・7日にリーグ第18節、13・14日にリーグ第19節、20・27日にリーグ第20節、31日にリーグ第16節(一部)が開催された。このなかで中2日の6試合では大量得点は生まれておらず、中3日の5試合で2試合が合計4点以上となっている。

 以上のように、2019年のデータでは過密日程が大量得点を生んでいない。では2025年8月はどうか。

 2025年8月は、6・13日に天皇杯ラウンド16、9・10・11日にリーグ第25節、16・17日にリーグ第26節、20日にリーグ第30節(一部)、22・23・24日にリーグ第27節、27日に天皇杯準々決勝、30・31日にリーグ第28節が開催された。中2日で開催された試合が6試合。うち大量得点になったのは2試合。中3日は16試合あって、そのうち2試合は大量得点だった。

 つまり、大量得点と過密日程はあまりリンクしていない。また、気温が低かった2019年のほうが大量に得点が生まれやすかったことを考えると、6年の間に選手やクラブが暑熱対策や体力回復の解決策を見つけてきたとも考えられる。

 ということは、やっぱりシーズン移行せずに夏も試合をしていいのではないか、とも考えたくなる。しかし、実際はこの数字だけで判断することはできない。

 Jリーグがシーズン移行を検討する際に夏場の著しいパフォーマンス低下というデータを忘れてはならないだろう。開幕当初に比べると19.1パーセントほどハイインテンシティの走行距離が落ちている。

 確かにゴールはたくさん見たいが、疲労困憊で守備側の足が止まってしまったことが原因となる得点ではなく、攻守両面で高いレベルのプレーが見られることが望ましい。

 また、暑さと過密日程が招くものは選手の消耗、そして怪我だ。どれくらいの怪我人が出ているのか調べようと思ったが非公開にしているクラブもあるため正確には把握できない。それでもこの2つの要因が合わされば怪我のリスクが大きいのは当然というものだ。

 2026年のシーズン移行後も開幕は8月の第1週が予定されている。開幕直後の攻守不安定な状態で、猛暑といきなりの過密日程ということになれば、来年以降も8月の大量得点が生まれるかもしれない。

 派手な試合は新規顧客獲得のためのプロモーションとしては正解だろう。しかしその背景に怪我人の多さが関係していないか。Jリーグはクラブからヒアリングを続け、医療体制充実のために何ができるかをぜひ考えてほしい。

(森雅史 / Masafumi Mori)



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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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