メキシコ戦は「不安の兆候」 前回W杯の“屈辱的敗北“を彷彿…英記者指摘「才能を最大限に生かすべき」

英記者がメキシコ戦を総括【写真:AP/アフロ】
英記者がメキシコ戦を総括【写真:AP/アフロ】

英記者チャーチ氏がメキシコ戦を総括

 日本代表は現地時間9月6日、アメリカ・カリフォルニア州オークランド・コロシアムでメキシコ代表と対戦し、0-0で引き分けた。かつてアジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ(W杯)を7大会連続で現地取材中の英国人記者マイケル・チャーチ氏が、この試合を総括した。

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 平凡。期待外れ。逃した好機。メキシコとの試合をどのように表現するかは自由だが、心を動かすものとは程遠いものであったことは間違いない。

 確かに日本は試合を支配していた。確かに主審は力量不足に見え、メキシコの選手がラグビータックルを仕掛けても警告以上の罰を与えようとはしなかった。そして、確かにこれは親善試合にすぎない。

 だが、そこにあったのは優位性を勝利に結びつけることができない日本代表の姿だ。アジア以外の相手に対して、何度このようなことを繰り返してきたのだろうか。真っ先に思い浮かぶのは2022年ワールドカップ、コスタリカ戦での屈辱的な敗北だ。

 幸い、この試合に懸かっているものは何もなく、相手のメキシコも奇襲で日本を打ちのめすほどの力もなかった。ハビエル・アギーレ監督率いるチームは一度だけ決定機を作ったが、鈴木彩艶が難なく防いでみせた。

 確かに、森保一監督は守田英正や田中碧といった選手を欠いてこの試合に臨んだ。しかし、それでもスターティングラインナップは十分に強力で、堂安律、三笘薫、久保建英、上田綺世といった攻撃陣が揃っていた。

 鎌田大地がいつものシャドーの位置ではなく、深い位置に下がったのはやや意外だったが、守田や田中が不在の場合にその役割が担えることを証明した。

 日本は精力的にプレスをかけ、メキシコ守備陣を苦しめていた。そのプレスは機能している部分もあったが、それが得点にはつながらなかった。むしろ日本はボールを保持するのに苦労し、メキシコのゴールを脅かす場面はほとんどなかった。

 序盤に久保が放ったロングシュートはメキシコGKルイス・マラゴンに珍しくセーブを強いた。堂安も渡辺剛からのロングボールに反応し、あと一歩でゴールというところに迫った。しかし、ゲームを支配した時間に見合う成果は得られなかった。

 これからどうなっていくのか。これは単なるテストマッチの1つにすぎない。しかし、小さな不安の兆候でもある。日本には機敏な動きと粘り強さを生かして相手の守備の綻びを突くだけのタレントが揃っている。しかし、彼らの力はこの試合では発揮されなかった。

 火曜日のアメリカ戦ではそれができるのだろうか。可能性はある。そうあってほしいとも思う。だが、マウリシオ・ポチェッティーノ監督率いるチームは韓国に0-2で敗れた直後で、すでに批判にさらされている監督への重圧はさらに高まっていくだろう。

 森保監督にはそのような心配はない。しかし、自分のチームがどうすれば優位性を得点へと結びつけられるのかについて頭を悩ませているはずである。ここはサイドブレーキを解除し、日本が誇るタレントを最大限に生かすべき時だ。

 これらの試合で失うものは何もない。思い切って仕掛け、堂安や三笘をより攻撃的な位置に上げるべきだ。ウイングバックとしての起用では彼らの才能が無駄になっている。久保も本来のプレーメーカーとして起用しよう。そうして選手の力を最大限に引き出す。そうしなければ、メキシコ戦で感じたフラストレーションは続くことになるだろう。

(マイケル・チャーチ/Michael Church)



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マイケル・チャーチ

アジアサッカーを幅広くカバーし、25年以上ジャーナリストとして活動する英国人ジャーナリスト。アジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ6大会連続で取材。日本代表や日本サッカー界の動向も長年追っている。現在はコラムニストとしても執筆。

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