「新ルール」で激変…日本代表GKも証言「全然違うので大変」 消える“不名誉ゴール”

早川友基がGKの新ルールについて話した【写真:徳原隆元】
早川友基がGKの新ルールについて話した【写真:徳原隆元】

「8秒ルール」について早川友基「GKが頭を使うシーンは増えています」

 GKはボールを取らなくなった。「8秒ルール」でプレーが変わってきている。Jリーグでは8月から「8秒ルール」=「GKが自分のペナルティーエリア内で、ボールを放すまでに手や腕で8秒を超えてコントロールした場合、CKが与えられる」が施行された。(取材・文=森 雅史)

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 このルール改正は国際サッカー評議会(IFAB)から2025年3月26日に通達されたもので、世界各国で7月1日以降に導入することになっている。そのため、日本ではシーズン途中だがJ1リーグの中断期間が終わったところで適用された。

 この以前は「6秒ルール」だった。GKは6秒以内だったらボールを手で保持することが可能で、それ以上ボールを持っていれば、その地点から相手に間接FKが与えられることになっていた。

 だが、ほとんどこの「6秒ルール」はないに等しかったと言えるだろう。もしもきちんと適用されていたら、試合終盤にボールをキャッチして倒れ込み、ゆっくりと立ち上がっていたらその地点から間接FKとなるはず。だが、おそらくほとんどの人がそんな場面を見たことがなかっただろう。

 これは反則に対して罰則が重すぎたということも一因となっている。いつからカウントされていたか分からない秒数を過ぎてしまうと、いきなりペナルティーエリアの中の間接FKというのでは、プレーしているほうはとても神経質にならざるを得なかったはずだ。

「8秒ルール」ではこの間接FKをCKに代え、そしてしっかりと反則を取ってGKがプレーを遅らせる時間を減らそうとしている。そのために大切なのは、いつからカウントを始めたか、しっかりと周囲に分かるようにすることだ。

 そこで主審がカウントしている時間をプレーヤーに伝えるため、残り5秒からは大きく手を挙げて指を折り、声に出してカウントするようになった。しかし、この秒数がしっかりカウントされるようになったことで、GKのプレーが変わった。日本代表GKの早川友基は言う。

「苦しい時間やフィールドプレーヤーが疲れているときはボールを前に出せない。だからGKが頭を使うシーンは増えています。たとえば、フィールドプレーヤーが動けなくなっているときは、転がってきたボールをトラップして相手が来るのを待ってキャッチするよりも、取らずにボールをそのまま流し、ゴールラインを割らせてゴールキックにしたほうが(時間が稼げて)よかったりします。そういう見極めの部分はこれまでと全然違うので大変ですね」

 早川は「もちろんフィールドの選手が次のプレーが出来るポジションをとっていれば、すぐ投げられるのですが、まだ全部が全部そうじゃない」と、8秒ルールが導入されたことでフィールドプレーヤーの動きが変わってくる可能性も語った。

 一方、同じく日本代表GKの谷晃生は「カウントが分かるので、どこまでボールを持っていていいかハッキリする」と語る。いつまでにボールを蹴るなり放るなりすればいいか分かって、反則を取られる心配がないというのだ。

 それでも、いつからカウントするかにはレフェリーの主観が入る。というのは、GKがボールを持っただけではなく、次のプレーできるようになったときからカウントがスタートするのだ。たとえばGKの近くに相手選手がいてプレーを妨害できる可能性がある場合はカウントを始めない。そのカウントを始めるタイミングは主審の判断になる。

 この点について谷は「試合前にレフェリーの方と話をすることが多い」と言う。レフェリーに「相手が目の前に立っていたらどうしてくれますか」と確認するのだ。そして「相手が前に立っている間は数えませんし、カウントに入りませんという審判もいます。相手がブロックに入ったときに、GKに対して(妨害だと)見てくれるというのはあります」とレフェリーの配慮を感じているようだった。

 ところで、この8秒ルールのせいで消えていくプレーもある。というのも、GKにとって審判がカウントを始めたということは、自分の周りに相手選手がいないということを意味する。ということは、もしも審判がカウントしていないようだったら、自分の見えていないところに相手選手がいるということだ。

 これまで賢いFWは、GKが油断してボールを転がしたときに背後から現れてボールを奪ってゴールを決めることがあった。しかし今後はGKがしっかり審判を見ることで、このプレーは阻止されてしまうことになる。GKにとって背後からボールを奪われることは不名誉だったに違いないから、「8秒ルール」はGKの味方なのかもしれない。

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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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