“50m5秒台”のスピードスター J内定で「驚きました」…GMが期待する「ワクワクさせるもの」

名古屋高3年の山下翔大、プロからオファーで「逆にワクワク」
ユース年代における夏の全国大会は高体連のインターハイ、Jクラブや街クラブは日本クラブユース選手権。覇権を手にしたチーム、志半ばで敗れたチーム、全国にたどり着けなかったチーム。それぞれの思いを抱えながら、全国各地のフェスティバルや合宿で夏以降の捲土重来を誓う選手たちの思いを描く「真夏の挑戦者」シリーズ。
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第14回はインターハイ愛知県予選決勝で愛工大名電に0-3で破れ、全国出場を逃した名古屋高のMF山下翔大について。今月にJ2で首位を走る水戸ホーリーホック入り内定が発表されたスピードスターが切り開いた未来とは。
「水戸の練習参加をした時に、周りがみんなうまくて、僕は技術が足りていないと大きな差を突きつけられました。でも、やり続ければ伸びると感じましたし、自分のスピード、フィジカル、球際では戦えた手応えがあったので、技術などが身につけばより自分の武器を生かすことができると逆にワクワクしました」
萎縮しないメンタリティーの持ち主だ。山下の武器はなんといっても爆発的なスピードとずば抜けた身体能力にある。50mのタイムは5.86秒で、10mは1.52秒、30mは3.64秒と、2022年のインターハイ100m走・1位の走者の10m、30mのタイムを上回るなど、初速も加速も凄まじい数値を叩き出しているのがわかる。
さらに垂直跳びが54.7cm、激しい運動後の回復力を評価する「Yo-Yo Intermittent Recovery Test」でも1200mと、エリートランナーの平均数値を叩き出した。
山下が言うように技術面ではまだまだ荒さが残る。だが、やはり教えて身につくものと、身につかないものがあり、山下はなかなか身につかない、とんでもない身体能力を持っている。水戸はそこに将来を見出したのだった。
「圧倒的なスピードの中でも初速のスピードは見る者をワクワクさせるものを持っている。球際、コンタクトも強く、伸び代を大いに感じる選手」(水戸の西村卓朗GM)
プロをも唸らせるスピードは、小学時代から自信があった。しかし、中学時代は身長が伸びず、周りにスピード面で追いつかれてしまうことが増えた。Bチームでプレーする日々を送り、自信を失いかけた。その際に、「勉強は比較的得意なので、将来のことも考えて、サッカーだけにはならないようにした」と、勉強にも打ち込んだことで中学の成績はオール5。進路も文武両道の進学校・名古屋高を選択した。
「中3の途中から身長が伸び始めて、高1の時には153cmから173cmまで伸びた。そうしたら消えたと思っていたスピードが一気に復活するどころか、以前より速くなっていたんです」
もちろん本人の努力があってこそだが、成長期を迎えてフィジカルバランスが安定し、もともと持っていた身体能力は進化する形で再び現れた。
「中学時代に抱いていた喪失感がなくなって、もっとサッカーがうまくなりたい、もっと速くなりたいと思うようになりました」
山下のモチベーションはさらに向上し、よりサッカーにのめり込んでいった。自主トレの量を増やし、自分のスピードを磨き、今年5月に1度目の水戸の練習参加に行ってからは、より技術面での引き出しを増やす工夫を始めた。
「県内で1対1で負けたことがなかった分、ちょっと慢心していたところで水戸に行って、『これじゃダメだ』と目が覚めました。ドリブルの際のスピードの緩急、1つ1つのボールタッチ、オフ・ザ・ボールの動きをより意識するようになりました」
インターハイ予選決勝の愛工大名電戦。「3-5-2」の左ウィングバックでスタメン出場をした山下には、ボールを持つと2~3枚のDFが常についてきた。自陣でのプレー機会が増え、持ち味の突破のドリブルは見せられなかったが、マークを掻い潜って敵陣まで運ぶドリブルは冴えていた。その後、2度目の練習に呼ばれて大学とのトレーニングマッチに出場した。
「2回ほど突破からクロスを上げることができたのですが、正直、『もしかしたらオファーはもらえないかも』とビクビクしていました。でも、正式オファーをいただけた時は、本当に嬉しかったし、驚きました。これからはより責任感を持ってサッカーをしなければいけないと覚悟が生まれました」
そして、8月18日に来季からの水戸内定が発表された。9月6日からは愛知県リーグ1部が再開し、第11節終了時点で首位の愛工大名電と同じ勝ち点の2位につけるチームは、昨年寸前で逃したプリンスリーグ東海昇格へ向けて負けられない戦いが続く。さらに一昨年度に初出場ベスト8に輝いた選手権の愛知県予選も控える。昨年度に全国を逃した雪辱を果たすための舞台が待っている。
「これからはより警戒をされると思いますし、複数(のマーク)来るのがもっと当たり前になる。それでも打開する力を身につけていかないといけないですし、周りを生かす、ボールがない状況でいかに優位な状態を作り出せるかなど、やれることを増やしていかないといけません。ドリブルだけではなく、ミドルフィードやロングフィードなども磨いていきたいので、やるべきことが多くて楽しいです。もっと自分が成長をして、昨年果たせなかったプリンス昇格、選手権出場を成し遂げたいです」
大きな使命感と未来へ弾む鼓動を抱きながら、愛知のスピードスターはその凄まじい身体能力を見せつけていく。
(FOOTBALL ZONE編集部)



















