ソシエダは久保建英をどう生かす? チームスタイルの弊害…求められる”意図の通じる相棒”

久保はエスパニョール戦で全得点に関与
レアル・ソシエダは現地時間8月24日に行われたラ・リーガ第2節でエスパニョールと対戦し2-2のドローに終わった。前半に2点を先行されたが、後半に盛り返して追いついた。
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久保建英は2得点の起点だった。60分の得点は久保からパブロ・マリン、アンデル・バレネチェアと渡ってゲット。69分の同点弾も久保からミケル・オヤルサバルとつないでオーリ・オスカルソンが決めた。
得点の起点になった、という時には攻撃の始まりがたまたまその人だったという場合もありがちなのだが、この2点に関しては紛れもなく久保が得点につながる流れを作っている。
得点シーンだけでなく、久保がボールを持つたびにチャンスの匂いがした。ボールを持てばほぼ奪われない。右サイドから縦にも中にも行けるドリブルが相手にとっては厄介。左足で引きずるような持ち方は、いわゆる軸足リード型だが、そのときすでに身体は右側へ傾いている。対面のDFは久保の持ち方から縦を警戒するが、そうすると細かいステップを入れながらカットインで外す。外した後には上手く身体でボールを隠していて、DFにしてみればボールに届きそうで届かない。久保は右手で相手のコンタクトを制御していて、しかもコンタクトに対しても強く体勢が崩れない。
このカットインを警戒されれば縦へ持ち出して抜く。すでに身体が右側に傾斜していて右足も縦方向に先行しているので、運び出しが速い。しかも相手はカットインを警戒しているから反応は遅れる。
久保は機敏だが爆発的なスピードはない。しかし、ドリブルが常に後出しジャンケンみたいなものなので確実に逆をとって外していく。相手の様子、重心を非常によく見ているわけだが、対面のDFのさらに奥を見ている。ドリブルで相手を抜いてから何かしようというより、抜く前からDFの背後の状況を観察しながら仕掛けている。
優れたウイングプレーヤーの特徴だ。リバプールで得点とアシストを量産するモハメド・サラー、バイエルンで高い得点関与率のマイケル・オリーセ、バルセロナの10番となったラミン・ヤマル。彼らは対面の相手を抜かないままラストパスを出す。とくにサラーはその得点、アシストの多くがDFを抜かないまま成功させている。
これはサイドと利き足が反対の逆足ウイングの特徴でもあり、久保もサイドからフィニッシュへの多彩なルートがある。カットインからのパス、シュートや縦突破からのクロスボールだけでなく、ポケットへ走る味方を使う、中へ入って短いパスでの攪乱など、プレーの引き出しが多い。
少し残念なのは、レアル・ソシエダがこの別格のチャンスメーカーを活かし切れていないところだ。
敵陣で前向きにボールを持たせるだけで自動的にチャンスを作れる選手がいるのに、前向きに持たせる回数がやや少ない。エスパニョール戦でも前半は背後にDFが貼りついている久保にパスしていた。しかも近くにサポートもいない。オーソドックスなスタイルのクラブで、それが育成面での良さにもつながっているのだが、もう少し工夫がほしいところ。オヤルサバルの他にも意図の通じるパートナーが出てくれば違ってくるような気もする。
チームとともに成長してきた久保だが、現在は久保がチームの成長を促す存在になっている。
(西部謙司 / Kenji Nishibe)

西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。





















