名門ユースに現れた1年生ストライカー「俺が、俺が…」 兄弟2トップ結成で「兄は本当に凄い」

1年生ながら鹿島ユースで活躍をする髙木瑛人【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】
1年生ながら鹿島ユースで活躍をする髙木瑛人【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】

鹿島ユース1年FW髙木瑛人「いろいろ感じることができた」

 高校生たちにとって全国大会が終わったこれからが本当の夏を迎える。高体連はインターハイ、Jクラブユース選手権。覇権を手にしたチーム、志半ばで敗れたチーム、全国にたどり着けなかったチーム。それぞれの思いを抱えながら、全国各地のフェスティバルや合宿で夏以降の捲土重来を誓う選手たちの思いを描く『真夏の挑戦者』シリーズ。

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 第7回は日本クラブユース選手権で優勝を遂げ、プレミアリーグEASTでも前期1位で折り返した鹿島アントラーズユースの1年生ストライカー・FW髙木瑛人について。2つ上の兄・輝人を押し除けて、レギュラーの座を掴んでいる瑛人には、負けん気の強さと兄を慕う気持ちとライバル心を内に秘めていた。

「いろいろ感じることができた大会でした」

 和倉ユースサッカー大会(以下・和倉ユース)の閉会式後、髙木瑛人はこうこぼした。結果は決勝戦で同じプレミアリーグに所属し、WESTの1位であるヴィッセル神戸U-18に1-1からのPK負け。この試合で彼は左からのクロスをヘッドで合わせて同点ゴールを奪うも、優勝には届かなかった。

「年代別代表では自分の力を発揮することを求められて、チームではそれプラス、時には周りに合わせて、チームとして力を発揮できるプレーをしないといけない。もっともっと自分は周りと合わせる力を身につけていかないといけないと感じているので、主張しながらも、相手の意見を聞いて合わせないといけないと感じました」

 見るからに負けん気の強さがにじみ出ている。「俺が、俺がタイプだと思います」と自己分析するように、その勝気な性格はまさにストライカー向きだ。その一方で、それだけではやっていけないということも理解している。

「僕は結構思ったことを言ってしまうタイプ。もちろんピッチ内で言い合うことは大事なのですが、相手の意見も聞かないといけないと改めて感じました」

 和倉ユースにおいて、兄と兄弟2トップをずっと組んでいた。同じピッチに立ってコンビを組むのは、プレミアEAST開幕戦以来のことだった。久しぶりに兄と組んだことで、彼はより自分の課題を明確に感じたという。

「お兄ちゃんは合わせてくれるタイプなのですが、それに甘えず、この大会では僕がお兄ちゃんとの距離を近くして、サポートしようと思った。お兄ちゃんは身体が強くて収められる選手なので、そこで僕がもっと合わせることができたらよかったと反省しています」

 面白いのはこの発言をしたのは単独取材の時で、2人揃って話を聞いた時は「今日はやりづらかったです、輝人が僕に合わせてくれないんで」と言い、輝人は「本当そうだね。足を引っ張っちゃったね」と答えるやりとりだった。

 そこには深い絆があると感じたからこそ、単独で話を聞いたときに本音を伺うと、両方が家族としてだけではなく、人間として、選手としてリスペクトを抱いていることが分かった。

「ずっと一緒に生活をしてきて、合う部分は合うのですが、合わない部分は本当に合わないんです(笑)。でも、兄は本当に凄い。僕がプレミアに出場をしているのは当たり前のことではないし、兄がいない時は『兄の分まで戦おう』と思っています。今大会、率直に兄弟でコンビを組めるのは嬉しいのですが、自分は根っからの負けず嫌いですので、負けたくない気持ちも再確認できました。いろんな感情はありましたが、やっぱりライバルの1人であることに変わりはないです」

 そして瑛人にはもう1人、絶対に負けられない存在がいる。

「僕の中で(1学年上の)吉田湊海選手の存在は大きいです。普段から仲良くさせてもらって、一緒にご飯に行ったりするのですが、ピッチに立ったら絶対に負けたくない存在で、ライバル視をしています。湊海選手も俺が、俺が。僕も俺が、俺が。湊海選手の気持ちの強さに引っ張られている部分はあります」

 和倉ユースにおいて吉田はトップチーム帯同のために不在だった。それゆえに自分が決めるという意思は固かった。

「山梨学院戦でハットトリック出来たり、決勝で点をとったりはしたのですが、同じFWのライバルの1人である正木裕翔選手も凄くいいプレーをしていました。ポジション争いは激しいなと思いましたし、僕も湊海選手のようにトップに参加したいので、負けていられません」

 期待の高校2年生ストライカーに触発され、和倉ユースではすぐ隣にいるライバルたちに大きな刺激を受けた。

「ピッチに立ったら、俺が、俺がの気持ちを持ちながら、仲間にリスペクトの気持ちを持って、良さを引き出し合える選手になりたいです」

 気づきが少年を大人に変えていく。多くのものを学んだ1年生ストライカーは、その獰猛さを残しつつ、賢く、勇しく、周りと繋がって最前線に君臨する。

(FOOTBALL ZONE編集部)

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