1年生に奪われた定位置…心の中で「なぜ」 鹿島ユース守護神「このまま終われない」

鹿島ユースの菊田修斗「大下や仲間たちに負けないように努力をしていきたい」
高校生たちにとって全国大会が終わったこれからが本当の夏を迎える。高体連はインターハイ、Jクラブユース選手権。覇権を手にしたチーム、志半ばで敗れたチーム、全国にたどり着けなかったチーム。それぞれの思いを抱えながら、全国各地のフェスティバルや合宿で夏以降の捲土重来を誓う選手たちの思いを描く“真夏の挑戦者”シリーズ。
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第4回は日本クラブユース選手権で優勝を遂げ、プレミアリーグEASTでも前期1位で折り返した鹿島アントラーズユースの3年生GK菊田修斗について。今年、不動の守護神の座を掴み取ったかに見えたが、和倉ユースサッカー大会(和倉ユース)で待っていたのは、とてつもなく厳しい現実だった。
プレミアリーグEAST前期においてチーム唯一の全試合フル出場。日本クラブユース選手権でも3人でGKを回したグループリーグ以外は、準々決勝から決勝までの3試合フル出場。準決勝のFC東京U-18戦ではPK戦で2本セーブし、チームを28年ぶりの決勝進出に導いた。
しかし、和倉ユース決勝トーナメント初戦の山梨学院戦まで出場していた彼が、準々決勝の前橋育英戦ではベンチスタート。ピッチに立っていたのは1年生GK大下幸誠だった。大下はこの試合で再三ビッグセーブを見せると、1-1で迎えたPK戦でも相手のキックをストップして準決勝進出に導いた。
続く準決勝も大下がスタメンフル出場。履正社の決定機を3本もビッグセーブで凌ぎ、試合終盤にはボールをキャッチしてからハーフラインを越えるスローで、一気にカウンターの起点となり、FW正木裕翔の決勝ゴールを導き出した。
決勝でも大下がフル出場。安定したゴールキーピングを見せ、1-1で迎えたPK戦では敗れはしたが、2本のPKセーブ。大車輪の活躍を見せたのだった。
「山梨学院との試合で勝ちはしたのですが、2失点を喫して、僕のミスもあった。それで完全にポジションを奪われる形になってしまいました」
履正社との準決勝が行われた後の大津高Bチームとのトレーニングマッチに菊田は出場をしていた。
「最初は心の中で『なぜだ』とこみ上げる気持ちはあったのですが、すぐに『自分の実力不足だ』と思いました。大下が試合に出ているときは全力で彼をサポートしようと思ったし、大津とのトレーニングマッチでも『このままでは終われない、ここから巻き返す』という強い気持ちを持ってプレーしました」
これまでずっと守り抜いていた守護神の座を夏のフェスティバルで1年生に奪われる。悔しさは計り知れないが、彼はこれまでもずっと順風満帆なサッカー人生を送ってきたわけではなく、謙虚に、かつ反骨心を持って努力することは当たり前のものとして持っている。
小学校6年生のときにFC東京のアドバンススクールのキーパークラスに所属をしていたが、FC東京U-15深川のセレクションには落選。地元の強豪クラブであるジェファFCU-15に進むと、180センチを超える大型GKとして頭角を現して、高校進学時には複数のJユースからオファーが届いた。
そのなかで鹿島ユースを選択。1年生のときはセカンドチームとして茨城県1部リーグでスタメンをつかんでいたが、ミスが多く、スタメンから外されてからは半年近く奪い返せない日々が続いた。
それでも腐ることなく努力を続け、その年の国体では茨城県選抜の正GKとして実に49年ぶりの優勝に導いた。12月のプリンスリーグ関東2部昇格戦でスタメン復帰を果たしたが、脳震盪で途中交代。
昨年はプレミアEASTで背番号1を託されるも、プレミア出場はゼロ。茨城県1部リーグでも出場したりしなかったりと、序列は4、5番手だった。
「僕はそこまでスーパーな選手だと思っていないからこそ、どんな状況になっても自分の実力を積み重ねることが大事だと思っています。それは常にGKコーチから言われていて、積み重ねていかないとチャンスも来なくなるので」
諦めることを知らない彼は、常にチャンスを待ち続け、プレミア終盤にベンチ入りを果たすと、セカンドチームのプリンス関東2部参入決定戦では帝京第三を相手にビッグセーブを見せ、延長戦の末に3-2の勝利。悲願のプリンス関東昇格を手にした。
そして今年は前述した通り、不動の守護神となったが、彼の謙虚な気持ちは一切変わらなかった。
「プレミアもクラブユースも1試合、1試合が必死で、先のことを考える余裕が一切なく、毎試合緊張感を持って全力でプレーしていました。ただ、プレミアでは逆にチームの足を引っ張ってしまった部分があります。東京ヴェルディユース戦、昌平戦は僕のミスで負けてしまった。GKはミスがそのまま失点につながるし、優勝をするためにはそういう負けが響いてしまうので、自分の未熟さに反省をしています。
クラブユースも周りのおかげで優勝GKという立場になったに過ぎません。だからこそ、もっと周りから信頼されるようにならないと、今回のようにすぐにポジションは奪われてしまいます。まだまだ積み重ねが足りない証拠だと思うので、ここから大下や仲間たちに負けないように努力をしていきたいと思います」
真夏の金沢で味わった思いは、必ず自分の糧となり、これからの行動こそが自分の将来を左右していく。
「試合に出られていない時間こそがとても重要だということは、ユースでの2年半で学んできたことなので、これからも変わらず反骨心を持ってやっていきたいと思います」
プレミア後期、再び守護神としてゴール前に君臨し、悲願のプレミア優勝に導けるように。謙虚でへこたれない菊田の逆襲が始まる。
(FOOTBALL ZONE編集部)



















