1年生でプレミア出場も…4カテ下に転落 配置転換で開花した逸材「最初は驚きました」

履正社の攻撃を牽引する鳥山陽斗【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】
履正社の攻撃を牽引する鳥山陽斗【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】

履正社の鳥山陽斗「危機感を覚えてから走り込みをずっとやってきたので」

 高校生たちにとって全国大会が終わったこれからが本当の夏を迎える。高体連はインターハイ、Jクラブユース選手権。覇権を手にしたチーム、志半ばで敗れたチーム、全国にたどり着けなかったチーム。それぞれの思いを抱えながら、全国各地のフェスティバルや合宿で夏以降の捲土重来を誓う選手たちの思いを描く“真夏の挑戦者”シリーズ。

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 第2回はインターハイ大阪府予選準々決勝で東海大仰星に0-1で敗れ、福島の地を踏むことはできなかった履正社のMF鳥山陽斗。トップ下で攻撃のリズムメーク、フィニッシュワーク、そして守備の起点と多くの役割を担うフリーマンの高校3年間とは。

 純白のユニフォームが伝統になりつつある大阪の履正社高。これまで林大地(ガンバ大阪)、町野修斗(ボルシアMG)、田中駿汰(セレッソ大阪)、名願斗哉(ベガルタ仙台)と多くのプロを輩出してきたチームは、今年のプリンスリーグ関西1部において前期終了時点で1位と好調を維持している。しかし、インターハイには出場できなかった。

「履正社は全国に出ないといけないチーム。昨年度の選手権予選、今年のインハイ予選と悔しい思いをしたので、冬は何がなんでも出場したいと思っています」

 こう悔しさと決意を口にした鳥山。セレッソ大阪西U-15からU-18に昇格できずに、履正社の門を叩いたアタッカーには今年にかける強い思いがあった。

「ずっとユースに上がりたいと思っていたのですが、もしダメだったら高体連に行こうと思っていました。選手権に少し憧れているなかで、中学3年生のときに履正社がプレミアリーグWESTに所属していたことも大きかった。それに当時、名願選手がいて、ドリブルが凄まじくて、僕はドリブラーというタイプではないのですが、あれくらいドリブルができるようになったらもっとサッカーが楽しくなるだろうなと憧れを抱いていました」

 当時、サイドハーフをやっていた鳥山は、偉大な先輩と全国への憧れを持って履正社にやってきた。高い技術と両足のキックを評価され、プレミアWEST第20節の静岡学園戦でプレミアデビューを飾ると、いきなり初ゴールをマーク。最終節の横浜FCユース戦でも途中出場をし、翌年の主軸候補として大きな期待を集めた。

 しかし、昨年、彼がプレーしていたのは降格したプリンスリーグ関西1部ではなく、セカンドチームの大阪府リーグ2部だった。1年生で出場していたプレミアから実に4カテゴリー下のリーグでプレーする日々。

「正直、僕のなかで『プレミアに出た』という気持ちが、変に余裕を生み出してしまって、慢心があったのかもしれないと思っています。セカンドチームにいるときも、『いつか上がれるだろう』と思ってしまっていた。もちろん運動量やパス、ドリブルなどは磨いていましたが、心のどこかでそういう思いがあったのを、スタッフの人たちは見ていたのだと思います。でも、秋になって、選手権予選が近づいてきたときに、『もうすぐ3年生になるし、このままではいよいよやばい』と強く思うようになってから大きく変わりました」

 本気でやっていた“つもり”から、本気でやらないと先がないという強烈な危機感が生まれたことで、目の色が変わった。それを平野直樹監督始め、スタッフ陣は見逃さなかった。

 選手権予選でトップに引き上げられると、プリンス関西1部にも出場。選手権予選は決勝に進出するも、阪南大高に0-5の大敗を喫し、今年を迎えた。

「今年こそはフルで出る」と心に誓っていた鳥山に大きな転機が訪れる。高校に入ってグッと伸びた身長は180センチに到達。徐々にフィジカルが向上し、うまさの中に力強さと、運動量がついてきたことで、平野監督は「攻撃の中心に置きたい」とサイドハーフだった彼をトップ下にコンバートしたのだった。

「最初は驚きましたが、やっていくにつれて、サイドハーフをやっているときより、トップ下の方がより点に多く絡めるようになりました。昨年、危機感を覚えてから走り込みをずっとやってきたので、中央でよりスプリントの強度、量を出せるようになってきて、タイミングも徐々に掴んできました」

 コツコツと積み重ねた成果が一気に表に出てきた感覚だった。新しいポジションでより自由度を与えられたことで、より責任感が強くなった。

「履正社のプレースタイルは全員攻撃、全員守備。前からもプレスをかけるし、後ろに戻って守備もする。トップ下として両方に全力に関わらないといけないからこそ、もっと運動量を増やして、周りから信頼される守備もゲームメイクもアタッカーもできる選手になっていきたいと思います」

 8月上旬に開催された和倉ユースサッカー大会では、トップ下として大きな存在感を放った。グループリーグ3試合で市立船橋、桐生第一、帝京長岡の強豪を相手に18得点2失点という圧倒的な成績で1位通過すると、決勝トーナメントではラウンド16で日体大柏に1-0、準々決勝では川崎フロンターレU-18に2-2からのPK戦勝利でベスト4に駒を進めた。

 準決勝の鹿島アントラーズ戦では相手より多くの決定機を作り出した。鳥山が自由自在に動いて縦パスを引き出し、ワンツーやドリブルなどで攻撃を活性化。終了間際のGKからのカウンターで失点し、0-1で敗れたが、鳥山を中心に見せた攻撃の質は非常に高かった。

 3位決定戦では藤枝東を2-0で下し、3位で大会をフィニッシュ。9月から始まるプリンス関西1部、その先の選手権予選に向けて弾みのつく大会となった。

「もっとプレーの幅を広げていきたい。周りとの関わりを増やして、チームを勝利につなげられるような選手になりたいです」

 本当の自由には大きな責任が伴うことを彼はよく理解している。大学経由でプロを目指す鳥山は、この夏でのさらなる成長と、高校最後の半年間でチームを全国に導くことを責任として受け止め、不断の努力を重ねていく。

(FOOTBALL ZONE編集部)

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