夏の王者を支えた“眼”「僕がやる必要がない」 戦況を見て判断…福島で光った二刀流

神村学園・堀ノ口瑛太【写真:FOOTBALL ZONE】
神村学園・堀ノ口瑛太【写真:FOOTBALL ZONE】

神村学園3年MF堀ノ口瑛太「守備で貢献しよう」

 8月2日に幕を閉じたインターハイ男子サッカー。昨年度から5年間、福島県での固定開催となったこの大会は、全国の予選を突破した51校が激しい戦いを演じた末に、神村学園と大津がファイナリストとなった。決勝は激闘の末に2-2からのPK戦で神村学園に軍配が上がった。

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 昨年度のインターハイ決勝で昌平に延長戦の末に2-3で敗れ涙を飲んでから1年。同じ場所で初の栄冠を手にした神村学園のキーマンたちの物語を紹介していく。

 第3回はチームを陰で支えた頭脳派DF堀ノ口瑛太について。「3-4-2-1」では右CB、「4-3-2-1」では3ボランチのアンカーを務めた彼は、MF福島和毅と共にインテリジェンス溢れるプレーでチーム全体のバランスと変則的な布陣を支えた。

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「3バックの時は中央を突破されないように持ち場を大事にしながらプレーして、アンカーの時は全体のバランスを見ながらも横移動を多くして、いずれも守備でチームに貢献しようと思いました」

 与えられたポジションとタスクを徹底してこなす。その一方でただ言われたことをやるのではなく、危険なスペースを察知して埋めたり、「ここぞ」という時には持ち場を離れて、一気にボールにアタックに行ったり、戦況を見た自発的なプレーも随所に光った。

 1番のハイライトは準決勝の尚志戦だ。この試合からチームは「4-3-2-1」システムをスタートから採用し、右の竹野楓太と左の荒木仁翔の両サイドバックがサイドの高い位置を取り続けた。

 しかも通常は両サイドバックが上がった時は、後ろの2CBが開いてできた中央のスペースに3ボランチの真ん中に入った堀ノ口が落ちて、3枚で守備をしたり、ビルドアップをしたりするのが普通だが、この試合ではそうしたプレーをしなかった。そこには冷静な判断力と決断力があった。

「あまり相手がプレスをかけてこなかったので、ビルドアップ面では僕が真ん中に落ちて3枚までやる必要がないと思いました。CB2枚でボールを持ち出せると思ったので、僕は落ちずに角度を取ってパスコースを作ったり、相手のプレスを弱めたりするポジションを取りました。守備面ではボールを奪われた時に、相手は両サイドバックが上がって出来たスペースを狙ってくることは分かっていたし、中を空けたくなかったので、CBに行かせずに自分が行くことを意識しました」

 この言葉通り、堀ノ口がポジションを落とさなかったことで、福島和毅と佐々木悠太の3ボランチの左右が高い位置でプレーすることができ、攻撃に厚みをもたらした。さらにカウンターを受けた際も、サイドのスペースを埋めたり、相手のサイドハーフの仕掛けを食い止めたりしてくれたおかげで、2CBは中央を固めることができたし、左右のボランチも一枚落ちて堀ノ口のスペースを埋めれば良く、運動量を抑えることができた。

 その分、かなりの運動量が必要となったが、最後の最後まで難しく、ハードなタスクをやり切った。結果、前半25分に先制こそ許したが、後半は攻め続けて相手のシュート1本で抑え、かつ佐々木が後半14分に同点ゴール。後半アディショナルタイム8分には絶好の位置でFKを得て、またもや佐々木が直接突き刺して劇的逆転勝利を飾った。

「攻守の切り替えで僕が奪い返せばピンチになることはないし、逆にチャンスが増えて、自分たちのペースに持っていける。決勝でもチームがより前に行けるようにプレーしたいと思います」

「全部跳ね返せるような王者の風格を示したい」

 決勝の大津戦でも同様のフォーメーションで挑み、後半14分に先制を許したが、交代を告げられた後半アディショナルタイム1分まで豊富な運動量で広範囲をカバーし続けた。チームはその5分後に追いつき、延長戦の末にPK戦で初の優勝を手にした。

「大津はプレッシャーを前からかけてきたので、ボールを受ける場所は少し変化を加えました。守備も両サイドバックが中に入ってきたので、そのコースを切るとこと、FWの9番(山下虎太郎)にシンプルに当ててきた時にプレスバックとカバーリングを意識しました。失点はしましたが、仲間が追いついてくれて、PKでも勝利を掴んでくれて感謝しています」

 真夏の福島できらりと光ったいぶし銀のプレー。これからもチームを支える献身的なプレーは続けるが、それだけでは終わらない強い決意が最後の言葉に凝縮されていた。

「これからの対戦相手は、『日本一のチームをつぶす』という意識でくるので、それを全部跳ね返せるような王者の風格を示したい。個人的にはCBだったらどんなFWでも負けないような選手になって、ボランチだったらもっと守備強度を上げて、福島や佐々木のように攻撃でチャンスを作れる選手になりたいと思います」

(FOOTBALL ZONE編集部)

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