三笘の爆発力は「他とは比べものにならない現象」 日本にプレミアリーグを浸透させる”鍵”

ブライトンで活躍する三笘薫【写真:ロイター】
ブライトンで活躍する三笘薫【写真:ロイター】

新規ファンとの接点を意識、数分のハイライトに詰めた“こだわり”

 イングランド・プレミアリーグは現地時間8月15日(日本時間8月16日)、2025-26シーズンの開幕を迎える。三笘薫(ブライトン)や遠藤航(リヴァプール)など多くの日本人選手が活躍する世界有数のリーグは日本でも高い関心を集めている。FOOTBALL ZONEでは、昨季からプレミアリーグを国内で独占配信する「U-NEXT」のTV・スポーツ本部フットボール部長の榎本耕次さん、同担当部長の菅原慎吾さんにインタビューを実施。既存のファンにとどまらず、日本でプレミアリーグの輪を広げていくための戦略やアプローチについて話を聞いた。(取材・文=石川遼/全3回の2回目)

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 2024-25シーズンから7年間のプレミアリーグ独占配信をスタートした「U-NEXT」の1年目シーズンが終わった。プレミアリーグを愛する既存のファンに満足してもらえることはもちろんだが、今後は新規やライト層にもリーグの魅力を浸透させていくことを目指していくという。

 そのために必要なアプローチとはどのようなものなのか。榎本さんは「とにかくまずはプレミアリーグに触れてもらわないことにはファンになってもらえません」と話す。配信事業者としての目標はフルタイムで試合を見てもらうことだが、「まずそこ(フルタイム視聴)にたどり着くための導線をどのように作っていくかが課題」ときっかけになる“タッチポイント(接点)”をどれだけ増やせるかが鍵になるという。

 プレミアリーグがいかに魅力的であるかを発信したとしても、新規のファンにいきなり90分の試合を見てもらうハードルは非常に高い。そこで初めの一歩として最も親しみやすい接点になるのは、試合のハイライト動画だろう。

 一口にハイライトと言っても、10分以上もある長いものが提供されることもあれば、ゴールシーンだけを1、2分にギュッとまとめたものなど媒体によって形はさまざまだ。もちろん、長ければ長いほど良いかといえばそういうものではなく「ハイライトだけで満足感が得られてしまい、フルマッチを見なくてもいいとなってしまえば本末転倒」(榎本さん)となりかねない。まずは気軽に試合の雰囲気を味わってもらえるよう、U-NEXTはYouTubeで比較的短いハイライトを公開するなど“見せ方”にこだわってきた。

「U-NEXT」のTV・スポーツ本部フットボール部長の榎本耕次さん【写真:FOOTBALL  ZONE編集部】
「U-NEXT」のTV・スポーツ本部フットボール部長の榎本耕次さん【写真:FOOTBALL ZONE編集部】

昨季も強烈な印象を残した三笘ら日本人選手の活躍は好材料

 ハイライト動画のニーズは、もちろん日本人選手の活躍時に爆発する。遠藤や三笘、鎌田大地(クリスタル・パレス)に加え、今季は昇格組リーズ・ユナイテッドのMF田中碧やトッテナム・ホットスパーに新加入したDF高井幸大にプレミアデビューの可能性がある。来年のワールドカップ出場も期待される選手たちの活躍は潜在的なプレミアリーグファンの熱を引き起こすポテンシャルを秘めている。

 昨季はブライトンの三笘がチェルシーやリヴァプールを相手にスーパーゴールを決めるなど強烈なインパクトを残した。ハイライト動画のアクセス数は一気に伸び、大きな反響を呼んだ。

菅原さんは「リーグ全体のストーリーを紹介していくような地道なアクションももちろん大切ですが、一方で三笘選手がすごいゴール決めた時の爆発力はほかとは比べものにならないくらいの現象」と振り返った。日本でも多く報道され注目度が高まった場面も多かったが、「そういった時の受け皿としてハイライト動画やSNSでの展開をしっかりとして、多くの人に触れてもらう準備は1年目から意識してやっていました」と頷いた。

「U-NEXT」のTV・スポーツ本部フットボール部担当部長の菅原慎吾さん【写真:FOOTBALL  ZONE編集部】
「U-NEXT」のTV・スポーツ本部フットボール部担当部長の菅原慎吾さん【写真:FOOTBALL ZONE編集部】

選手の“個”の注目度に依存しない多様なアプローチ

 一方で、選手の活躍ばかりにフォーカスしすぎると、今度は移籍を機にファンが離れてしまう可能性もある。属人的になりやすい性質があるなかで、より多くの人にプレミア自体の魅力を感じてもらうためには、選手やチームにスポットを当てるだけでなく、多種多様なアプローチをしていくことも不可欠となる。

 そのため、今季は現地で放送されている、日本未上陸のコンテンツを調達しようと戦略を立てている段階だという。「我々としてはオリジナルであるかどうかより『独占』であることが何より重要だと考えています。来季に向けては『食とフットボール』や『街とフットボール』というような、他のジャンルとの掛け合わせたものも集めていく予定です」(榎本さん)。配信2年目に向けて、新しいジャンルの開拓にも着手している。

 リヴァプールに新加入したドイツの至宝MFフロリアン・ヴィルツなど新たなタレントの上陸もリーグを盛り上げる大きな要因であり、ファンにとって楽しみなトピックにはなる。しかし、榎本さんは「これまでプレミアを観てこなかった人に見てもらうこと。それこそが我々のゴールであり、やらなければならないことです。そのためにはサッカーのことだけでは足りないと考えています」と現地の文化や歴史などから多角的にプレミアリーグを楽しむ方法があることを知ってもらいたいと言葉に力を込めていた。

※所属は2025年6月末現在

(石川 遼 / Ryo Ishikawa)



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