夏補強の勝者は? 「異彩」を放つ新助っ人から残留の救世主まで…Jの終盤戦を彩る“新戦力

夏の移籍で活躍の場を移した選手たち【写真:長田洋平 / アフロスポーツ & 徳原隆元 & Noriko NAGANO】
夏の移籍で活躍の場を移した選手たち【写真:長田洋平 / アフロスポーツ & 徳原隆元 & Noriko NAGANO】

上位陣に優勝へのキーマン加入

 今シーズンのJ1リーグも24節まで消化。残すところ14節となり、優勝争いと残留争いもそれぞれ佳境に入ってきている。その戦いに大きく関わってくるのが夏の補強だ。2025年7月7日(月)から8月20日(水)の第2登録期間を利用して、すでに多くの移籍が行われている。そのなかでは主力選手の海外移籍に伴う、いわば”穴埋め補強”も生じている。

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 長谷部茂利監督が率いる6位の川崎フロンターレでは、日本代表のDF高井幸大がプレミアリーグのトッテナムに、E-1選手権に初招集されたFW山田新がスコットランドのセルティックへと移籍した。一方でクロアチア人のDFフィリップ・ウレモヴィッチとFWラザル ロマニッチを獲得した。首位の神戸とは勝ち点8差で逆転優勝も可能な位置にいる。この2人が短期間でフィットできるかは今後の優勝争いに大きく影響することが予想される。

 4位の京都サンガもMF川﨑颯太がドイツ1部のマインツに移籍したが、神戸からMF齊藤未月が期限付き移籍で加入した。大きな怪我を経験した齊藤が湘南ベルマーレで共闘した曺貴裁監督のもとで輝きを取り戻せば、攻守両面を活性化させる存在になることは間違いない。またブラジル2部のアヴァイFCからMFグスタボ・バヘットを獲得。テクニカルなタレントで、ハードワークをベースとする京都の中盤にアクセントをもたらせる存在だ。

 ピンポイントでチームにプラスをもたらしそうなのが、J2のモンテディオ山形から現在3位の柏レイソルに加わったMF小西雄大だ。ガンバ大阪のアカデミー育ちだが、高卒で徳島ヴォルティスに加入。リカルド・ロドリゲス監督のもとでJ1昇格までの4シーズンを過ごした。中断期間に行われたスタッド・ランス戦では、後半スタートからの登場で鮮やかなロングパスで決勝点の起点になる活躍を見せるなど、いきなり主力級のインパクトを放っている。

 首位の神戸は得点力アップに向けて、J2ブラウブリッツ秋田からFW小松蓮を獲得した。前半戦だけで10得点を記録したストライカーは第24節のファジアーノ岡山戦で終盤に投入された。天皇杯ラウンド16の東洋大戦では4-3-3のセンターフォワードでスタメン起用され、前半のみのプレーでありながらペナルティエリア内のクロスからMF井出遥也の先制点をアシストしている。神戸は大迫勇也が欠場し佐々木大樹が前線を引っ張っているため、本格派の大型FWである小松は国内カップ戦やACLエリートと並行して戦う終盤戦においてタイトル獲得のキーマンになりうる新戦力だ。

 上位陣の補強でも異彩を放つのが、韓国のFCソウルから5位サンフレッチェ広島が獲得した韓国代表DFキム・ジュソンだ。ミヒャエル・スキッベ監督が率いる広島は3バックが塩谷司、荒木隼人、佐々木翔という3人でほぼ固定されてきた。ウイングバックの中野就斗が3バックに入ることもあるが、空中戦の強さと機動力を併せ持つ左利きのキム・ジュソンは広島の最終ラインにハイレベルな競争をもたらし、ACLエリートとリーグ戦を戦うための選手層をアップさせる存在になりそうだ。

アルビレックス新潟が大幅補強、チーム再建へ

 残留争いを繰り広げる下位のチームでは18位の横浜F・マリノスが積極的な動きを見せている。前半戦は最下位に低迷し、2度の監督交代を経験したマリノスは大島秀夫監督のもとで軌道修正を図っており、直近3試合では2勝1分と好調だ。そこにDF角田涼太朗が1年半ぶりに戻ってきた。対人守備とビルドアップの両面に優れる角田は昨年イングランド3部カーディフ・シティに移籍し、その後ベルギーのコルトレイクに期限付き移籍した。しかし膝の怪我に悩まされていたこともあり、不完全燃焼な時期を過ごした。「お互いにとってベストなタイミング、状況での再会ではないかもしれません」と語るが、降格危機にあるチームで救世主になれば、代表復帰や挑戦の道も開けてくるはず。左センターバックが主戦場になるが、可変的に幅広いプレーが可能だ。

 マリノスから勝ち点7差で15位の名古屋グランパスも、残留の安全圏とは言えない状況にある。なかでも名古屋復帰から徐々に調子を上げていたFWマテウス・カストロの離脱は大きな痛手である。さらにブラジルから獲得したレレは州選手権の出場に関する認識の違いから、シーズン3チーム目となる名古屋では公式戦に出場できないことが判明した。そうした状況で、FW木村勇大を東京ヴェルディから完全移籍で獲得できたことは大きい。昨シーズン10得点の木村はここまで2得点と苦しんできたが、前線でターゲットマンになりながら裏抜けも狙えるストライカーは新天地で再覚醒できるか期待が高まる。

 昇格2年目となるヴェルディは木村の移籍が発表される直前に、J2の首位を走る水戸ホーリーホックからFW寺沼星文を獲得している。数字だけ見れば3得点1アシストだが、序盤戦は怪我で欠場しており、5月に復帰してからは前線で抜群のパワーと推進力を発揮して、水戸の大躍進を牽引してきた。ゴールに迫る力は木村に遜色ないため名古屋と同じ勝ち点28と、残留に予断を許さないチームの得点力不足を解消しうるタレントと言える。しかし、E-1選手権メンバーである綱島悠斗がベルギーのアントワープ、サイドの主力だった翁長聖がJ2のV・ファーレン長崎に移籍した穴をJ2秋田から186cmのDF井上竜太で補えているかについては引き続き注視が必要だ。

 そのほかの”残留争い組”では20位のアルビレックス新潟が、ドイツ2部ダルムシュタットに移籍したMF秋山裕紀など、6月以降に5人の主力選手がチームを離れた一方で、国内外から7人の選手を獲得するという大きな動きを見せた。柏レイソルから加入したMF白井永地など、7月中旬までに合流した4人は7月20日の広島戦で新潟デビューを果たしており、前半戦とは大幅に入れ替わった陣容で、入江徹監督がどうチームを再建していくかに注目したい。

 19位の横浜FCはJリーグで実績抜群のFWアダイウトンや J2愛媛から加入した俊敏なドリブラーのMF窪田稜が、リーグ最少14得点のチームで起爆剤になれるかに期待がかかる。17位の湘南ベルマーレは福田翔生(ブレンビー)、畑大雅(シント=トロイデン)、鈴木淳之介(コペンハーゲン)と主力3人が海外移籍という苦しい状況だが、ライバルの新潟から獲得したFW太田修介は加入2試合目の浦和戦で得点を記録するなど、複数のポジションをこなす仕掛け人として、かなり重要な戦力になっていきそうだ。

 ウインドーが閉じる8月20日まで2週間弱ある。その期間に新たな補強もあれば、逆に海外移籍などでの離脱もあるかもしれないが、まずはリーグ戦の再開となる今週末の試合で新戦力がチームを勝利に導く活躍を見せるのか期待したい。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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