託された伝統の“14”「完全に蚊帳の外」から1年…初の優勝旗へ導いた縁の下の力持ち

神村学園伝統の14番を背負う3年生MF福島和毅【FOOTBALL ZONE編集部】
神村学園伝統の14番を背負う3年生MF福島和毅【FOOTBALL ZONE編集部】

神村学園3年MF福島和毅「自分の役割を全うすること」

 8月2日に幕を閉じたインターハイ男子サッカー。昨年度から5年間、福島県での固定開催となったこの大会は、全国の予選を突破した51校が激しい戦いを演じた末に、神村学園と大津がファイナリストとなった。決勝は激闘の末に2-2からのPK戦で神村学園に軍配が上がった。

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 昨年度のインターハイ決勝で昌平に延長戦の末に2-3で敗れ涙を飲んでから1年。同じ場所で初の栄冠を手にした神村学園のキーマンたちの物語を紹介していく。

 第1回は神村学園伝統の14番を背負う3年生MF福島和毅。インサイドハーフ、ボランチ、トップ下と中央のポジションならどこでも出来る彼が、今大会徹したこととは。

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 橘田健人(川崎フロンターレ)、大迫塁(SC相模原)、名和田我空(ガンバ大阪)らが背負ってきた神村学園の14番を託された福島は、1年時からレギュラーとしてプレーしてきたチームの要。運動量があり、ボールキープや運ぶ力、展開力に長ける。2列目から飛び出して果敢にゴールを狙うプレーが持ち味だが、今大会では前に出るというより、後方から全体を支えるプレーが多かった。

 チームは当初、【3-4-2-1】システムを敷いていた。この際、福島は佐々木悠太とダブルボランチを組み、3バックからのパスを受けて、左の荒木仁翔と右の竹野楓太に展開をしたり、徳村楓大と日髙元のインサイドハーフにパスをつけたりと、ビルドアップの起点になった。

準決勝から【4-3-2-1】となって3ボランチの右に入ると、荒木と竹野の両サイドバックを高い位置に押し上げて、アンカーの堀ノ口瑛太と連携をしてサイドと中央のスペースを埋めながらボールを動かす潤滑油の働きをした。

「今大会は有村(圭一郎)監督から『特徴のある選手がいるから、それをお前がコントロールして欲しい』と言われているので、それを意識してやっています」

もちろんその意図を福島自身もきちんと理解し、納得した上でのプレーだった。

「真夏の連戦なので、ボールを握って、どんどん動かすことで相手の体力を奪うことができるし、奪われてもきちんと対応できてすぐにマイボールにできれば、より相手の体力を奪い、かつ自分たちのアタッカー陣をよりゴールに向けられる。自分の役割を全うすることと、その上でドリブルなどの特徴を出すことを意識しています」

 彼が与えられたタスクを安定したプレーで全うしたからこそ、チームに安定感が生まれ、システムを変えてもバランスを崩すことなく、それぞれのシステムの特性を発揮して結果に繋げることができた。本人は「まだボールロストが多く、まだ自分の武器を出し切れていないのかなと思っています」と厳しい自己評価を下していたが、間違いなく昨年よりも成長した姿を示した。

 思い起こせば昨年のインターハイ。福島はコンディションが上がらないまま大会に突入し、勝ち上がっていくチームの勢いに乗り切れず、スタメンから外されるなど苦しい思いを味わった。昌平との決勝戦でスタメンに復帰し、先制点をマークするが、手首を負傷して無念の前半での交代。「完全に蚊帳の外のような感覚でした」ともがき苦しんだ経験を考えれば、1年後にチームの中心として5試合すべてに出場し、優勝旗も手にすることができたことは、彼にとって非常に意味のあることだった。

「これで満足することなく、プレミアリーグ、選手権に向けて積み重ねていきたいと思います。個人的には高卒プロか大学かはまだ決まっていないので、しっかりと自分と向き合っていきたいと思います」

 派手さこそはないが、真夏の福島県でまさに縁の下の力持ちとして渋い輝きを放った背番号14。献身性と創造力を兼ね揃えている選手だからこそ、経験を積み重ねてより渋く、時には煌くプレーを見せてくれることを期待したい。

(FOOTBALL ZONE編集部)

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