世界最高峰のプレミアリーグ配信の重責 “突然”の決定に旅行はキャンセル…トラブル連続の舞台裏

U-NEXTは昨季から7年の長期契約でプレミア放映権を獲得「いつかは配信したいと考えていた」
イングランド・プレミアリーグは現地時間8月15日(日本時間8月16日)、2025−26シーズンの開幕を迎える。三笘薫(ブライトン)や遠藤航(リヴァプール)など多くの日本人選手が活躍する世界有数のリーグは日本でも高い関心を集めている。FOOTBALL ZONEでは、昨季からプレミアリーグを国内で独占配信する「U-NEXT」のTV・スポーツ本部フットボール部長の榎本耕次さん、同担当部長の菅原慎吾さんにインタビューを実施。昨夏の開幕直前に突如として始まった7年間の長期契約の配信1年目を振り返ってもらった。(取材・文=石川遼/全3回の1回目)
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イングランド・プレミアリーグは日本時間8月16日に2025−26シーズンの開幕を迎える。日本における放映権は2022−23シーズンから「SPOTV NOW」が保有していた。しかし、昨季の開幕を前に突如、配信終了が発表され、ファンの間に「どうやって試合を見ればいいんだ」という不安が広がった。そうしたなか、入れ替わる形で7年間の放映権を新たに獲得したのが「U-NEXT」だった。
榎本さんは「詳しい契約の内容についてはお話しできませんが」と前置きしたうえで、「我々は各ジャンルのトップ・オブ・トップを集めようという戦略をとっています。フットボールの配信は2年前のラ・リーガから始まりましたが、プレミアリーグはまさに世界のトップです。以前から、いつかは配信したいと考えていた」と語る。その言葉を聞き、菅原さんも「3番手、4番手のコンテンツだけでは生き残れない世界。欧州フットボールを配信するうえで、プレミアリーグ級のコンテンツは不可欠だったはずです」と頷いた。
各国を代表する選手が集結し、レベル、人気ともに世界最高峰のプレミアリーグでは三笘や遠藤など日本代表選手が活躍しており、日本にも多くのファン・サポーターがいる。そのコンテンツが持つパワーはやはり凄まじいものだった。今年2月に行われた第25節のブライトン対チェルシー戦、三笘が超絶トラップから決めた“ゴラッソ”が残したインパクトは特に大きく、榎本さん曰くYouTubeで配信したハイライトは「群を抜いて多く再生された」という。「プレミアは優勝争いをしているクラブだけでなく、他のチームの試合もしっかりと観られる。タイトルや降格が決まった後でも、視聴数的にガクッと落ちるということもなかった」。クラブに対するロイヤリティー(愛着)が高く、強固なファンベースが築かれているからこそ多くの人を惹きつけるプレミアリーグの魅力を肌で感じた。

突如の放映権獲得に現場は混乱「試合じゃない映像が流れて…」
放映権の獲得が発表された昨夏、現場では混乱も起きていた。ラ・リーガだけを配信していた前年に比べて機材やスタジオなどの設備、中継スタッフなど人的リソースの確保など様々な対応に追われた。榎本さんも予定していた旅行を急遽キャンセルし、配信の準備に取り掛かった。
「(放映権獲得が決まり)スタジオのスタッフも驚いていました。ラ・リーガとプレミアリーグでは現地からの映像を受け渡す回線が異なるので、オペレーションの面でも苦労しました。最初の配信がコミュニティー・シールドでしたが、試合ではない映像が流れてしまうトラブルもありました」。翌週にはリーグ開幕が控えるハードなスケジュール。そこからの1週間は会議に会議を重ねた。
もちろん、試合を楽しみに待つファンに対して社内の事情やトラブルを言い訳にすることはできない。菅原さんは、独占配信を行う立場としての責任を強調し、ファンの期待に応えるような配信を届けると決意した。
「我々には責任があります。2年前から配信を始めたラ・リーガに関しては、我々のキャスティングや制作内容に不満があれば他サービスで観るという選択肢がありますが、プレミアリーグは独占配信です。我々のプレミアリーグ配信は“こう”だというものをしっかりと示していかなければならないですし、常に最高のものを提供しなければならないという責任感を持って取り組んでいます」
連覇を狙う新王者リヴァプールに対し、復権を期すマンチェスター・シティらライバルたちがどのように挑むのか注目の新シーズン。3年連続2位からの王座奪還に燃えるアーセナルと長い低迷期から脱出を目指すマンチェスター・ユナイテッドがいきなり激突する開幕戦はもちろん、昇格組リーズに所属するMF田中碧のプレミアデビューの行方も見逃せない。日本でも熱視線を集める世界最高峰の戦いがまもなく始まる。
(石川 遼 / Ryo Ishikawa)





















