泣きじゃくった名門校10番「迷惑をかけた」 決めれば優勝のPK失敗…夏の激闘がもたらした経験

大津の福島京次【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】
大津の福島京次【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】

大津高MF福島京次に注目

 8月2日に幕を閉じたインターハイ男子サッカー。昨年度から5年間、福島県での固定開催となったこの大会は、全国の予選を突破した51校が激しい戦いを演じた末に、神村学園が初優勝を飾った。真夏の福島で躍動を見せながらも、志半ばで「敗れし者たち」をピックアップしていく。

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 第20回は決勝において神村学園と激戦を演じるも、2-2のPK戦の末に敗れた大津高のMF福島京次について。ボランチとしてチームの中枢を担う背番号10は、心身ともにチームの中心としてハードワークをやり遂げた。

 緊迫のPK戦。福島京次は4人目のキッカーとして登場した。すでに相手は1人目を失敗しており、ここで決めたらインターハイ初優勝に向けて一気に加速するタイミングだった。

 ボールをセットし、大きく深呼吸してから蹴ったボールは、神村学園のGK寺田健太郎に弾かれた。

 そこから全員成功で迎えた8人目。大津・MF松岡凛が外し、神村学園・MF東若泰雅が沈めて勝負あり。大津の2度目の全国制覇の夢は寸前で潰えた。

 試合後、泣きじゃくる福島をチームメイトは優しく励ました。ピッチ中央に君臨する背番号10の存在が、このチームにどれだけプラスの影響を与えてきたかは、チームメイトたちが誰よりも理解していた。同時に福島自身はこの大会でチームへの恩返しをすることを心に誓っていた。

「プレミアWEST前期で個人的に自分のプレーが思うようにできずに、チームに迷惑をかけてしまっていた。今年はゴールとアシストを増やしたいと思って臨んだにもかかわらず、ゴールは1点のみで、本当に悔しさしかない前期でした。だからこそ、インターハイできっちりと結果を出して、チームの勝利に貢献したいという気持ちが強いです」

大会を通じて好パフォーマンスを披露

 プレミアでは守備のウェイトが多かったことを反省し、今大会は積極的に前に出てプレーすることを意識した。事前にボランチコンビを組む福島悠士と話し合い、チャレンジ&カバーを徹底しながら、全体を前に押し上げることを意図的に行った。

「悠士が攻守をつなぐプレーをしてくれるので、その時に僕が積極的に前に行くことを意識しました。うちには松野(秀亮)と今井(獅温)という最終ラインからパスで刺せる2CBがいるので、彼らの特徴を引き出すためにも、僕らダブルボランチが重くならないように、前にボールを運んでいくプレーを意識しました」

 1回戦の丸岡戦では1-1で迎えた33分にMF山本翼の右からの折り返しを冷静なボールタッチから正確なシュートを突き刺して決勝弾を叩き出すと、2回戦の八戸学院大野辺地西戦でも松野の決勝弾をアシスト。7-0と圧勝をした高知中央戦では1ゴールをマークした。

 そこからゴールとアシストはなかったが、準々決勝・昌平戦ではテンポの良いパス出しと素早いサポートで、強力アタッカー陣を後押しし、準決勝・流通経済大柏戦では豊富な運動量と予測の鋭さを発揮して、守備面でアクセントを加えた。

 そして神村学園との決勝戦では延長を含めた90分を通して、研ぎ澄まされた集中力を発揮し、福島悠士とともにセカンドボールの回収やゴール前に飛び出してシュートを3本放つなど、攻守において存在感を見せた。

「どの試合も僕と悠士のダブルボランチが崩れたら、ゲームも壊れてしまうので、どんなに劣勢の時でも僕らの連携がずれないように、周りに声で発信できるようにし、どこかで必ず主導権を取り戻すという強い気持ちを持ってプレーしました」

 福島は今大会で6試合・421分間出場。これはGK村上葵、今井、DF村上慶に次ぐ出場時間の長さだ。攻守におけるハードワークを求められるボランチというポジションで、彼が精神的にも軸になり続けたからこそ、真夏の過酷な連戦で崩れることなくファイナルまで勝ち進めたし、決勝でも激闘を演じることができた。

 だからこそ、周りは彼を励ました。この6試合で彼が得た自信と経験は計り知れないものがある。そして優勝できなかった悔しさも相まって、ここからさらに逞しくなっていくはずだ。半年後の冬に、より逞しくなった10番を見せるために、福島京次は福島の地からリスタートを切った。

(FOOTBALL ZONE編集部)

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