進学クラス1位の頭脳明晰CB「悩んでいます」 J1複数クラブで練習参加も…揺れる進路選択

大津の松野秀亮【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】
大津の松野秀亮【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】

大津高CB松野秀亮に注目

 8月2日に幕を閉じたインターハイ男子サッカー。昨年度から5年間、福島県での固定開催となったこの大会は、全国の予選を突破した51校が激しい戦いを演じた末に、神村学園が初優勝を飾った。真夏の福島で躍動を見せながらも、志半ばで「敗れし者たち」をピックアップしていく。

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 第19回は決勝において神村学園と激戦を演じるも、2-2のPK戦の末に敗れた大津高のCB松野秀亮について。186センチのサイズを持つ左利きCBとして、今年に入り一気に注目を集めるようになった松野。頭脳明晰でもある彼の魅力とは。

 すらっとした体型が最終ラインで一際目立つ。大津のCB松野はスピード、足元の技術、左足のキックの精度を併せ持ち、最終ラインからミドルパスとロングパスで相手を揺さぶる一方で、ドリブルで持ち出してから刺すパスも得意とするビルドアップのスペシャリストでもある。

 守備面もフィジカル面が物足りないように見えるが、体幹がしっかりしており、寄せのスピードとターンの速さ、そして長い足でボールをからめ取るような守備で、相手のエースを封じ込める力強さも持つ。

 昨年からトップチームに所属していたが、同い年の村上慶と1学年上の五嶋夏生の2人が形成した不動のCBコンビの間に割って入ることは難しく、プレミアリーグWESTで4試合の出場に留まり、プレミアファイナルも後半アディショナルタイムのみ出場。選手権でも3試合中2試合に途中出場。流通経済大柏との3回戦での激闘でもアディショナルタイムのみの出場に終わった。

「悔しい気持ちはありましたが、正直、まだ自分は試合に出ている選手に達していないと思いました。特に流通経済大柏戦は、選手権独特の雰囲気もそうだし、流通経済大柏のチーム自体の雰囲気、迫力も凄まじくて、ベンチにいながら衝撃を受けました。少しだけ出場させてもらいましたが、『プレミアを優勝した大津でも勝てないんだ』と思いましたし、『自分も早くこのレベルで戦いたい』と思って新シーズンを迎えました」

 新チーム立ち上げから不動のCBとしての地位を確立すると、前期11試合に全試合フル出場をし、インターハイでもCB今井獅温と強固な壁を築き上げた。準々決勝ではプレミアEASTの昌平に5-0の完勝を演じ、準決勝では流通経済大柏をクリーンシートに抑えて、PK戦の末にリベンジに成功をした。

 神村学園との決勝戦は2失点をし、PK戦の末で敗退をして2度目の全国制覇は逃したが、松野は今大会の主役の一人として夏の福島を彩った。

学業も非常に優秀

 今大会を通じて見て、松野に感じたのはキックフォームの変化だった。春に見た時よりも綺麗なフォームで足を振り抜くし、驚いたのが左右両方向に飛ばす際に変わらないフォームであることだ。このことを彼に伝えると、それは努力の証であることが分かった。

「左足のキックはストロングなのですが、オープンに持って右に蹴ってばかりいると相手に読まれてしまうんです。なので、オープンに持った時に、左に蹴ることができれば、相手も困惑するので、その練習は徹底してやりました」

 さらりと言葉にするが、これは簡単なことではない。だが、彼はこれを意図的に磨いて実践に反映させていた。

「これをやることで、サイドが空いていたりする時に『広く見ているよ』と相手に対するメッセージになって、相手に対する抑止力になるんです。それを見せて、敢えて遠くに蹴らずに近くの選手につけたり、ドリブルで運んだりするなど、選択肢や相手を揺さぶる術が身についてきました」

 非常に賢い。話を聞いてそう思った。実際に彼は学業も非常に優秀で、テストでは常に学年1位をキープ。

 そもそも大津に入学する際に、他の多くの選手と同様にスポーツクラスに進学する選択肢もあったが、「もともと勉強が得意だったことと、サッカーにも必要になってくる自己解決能力や考える力を身につけたいなと。あと、英語だったら海外に行った時に使えたりするので、高校でも勉強もしっかりやろうと思った」という理由で、進学クラスを選択。

 進学クラスでも1位を取り、大学に関しては勉強でもいろいろな選択肢を持てているが、すでにJ1の複数クラブに練習参加をするなど、高卒プロの選択肢もある。

「プロに挑戦したい気持ちもありますし、大学でじっくり自分を磨きたいという思いもあります。悩んでいますが、ここでしっかりと自分と向き合って、プロか大学かをしっかりと考えてから決めたいと思います」

 悩める17歳はどういう決断を下すのか。いずれにせよ希少価値の高い大型レフティーCBの未来は明るいものであることは間違いない。

(FOOTBALL ZONE編集部)

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