日本代表の股抜き失点が起きるのも魅力 誰でも楽しめる「歩くサッカー」の世界

ゲーム性も備えている「ウォーキングフットボール」【写真:徳原隆元】
ゲーム性も備えている「ウォーキングフットボール」【写真:徳原隆元】

JFAが普及に努めているスポーツ「ウォーキングフットボール」

 日本サッカー協会(JFA)が普及に努めているスポーツに「ウォーキングフットボール」がある。

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「ウォーキングフットボール」は、その名のとおり歩いてプレーするサッカーのことだ。高齢者の健康のためにイングランドで始まった。日本ではサッカー未経験者や障がい者でも一緒にプレーできるように工夫されている。

 初心者や子供が臆することなく経験者と一緒に楽しめるし、怪我の心配も少ないため、気軽に始めることができる。サッカーの入り口としても、そしていくつになっても楽しめるスポーツとしても適しており、ゲーム性も備えているのが「ウォーキングフットボール」なのだ。

 実は、この「ウォーキングフットボール」を日本に広めてほしいと勧めるのは川淵三郎JFA相談役だった。2011年にイングランドで55歳以上の人たちの健康のために行われ、その「ウォーキングフットボール」に取り組みたいという話をJFA職員から聞いた川淵氏が「日本中に広めてほしい」と伝えたという。

 川淵氏は宮本恒靖JFA会長との対談の中で、「これからもっと余暇の時間が増えてくるだろうし、健康寿命の延伸のためにもスポーツは大切」「でも運動嫌いな人って意外と多い。そういう意味でもウォーキングフットボールはそういう人たちにもってこいのスポーツ」と語っている。

 では「ウォーキングフットボール」とは、どんなスポーツなのか。ピッチの広さは、フットサルコートと比べて縦が4分の3(30メートル)、横は同じ20メートル。各チーム5人で行われ、ボールはフットサルボールやサッカー4号球などを使用し、競技時間は最大10分ハーフで「速足は禁止」にしている。

 さらに「全員歩いてプレー」「スライディング禁止」「ヘディング禁止」「オフサイドなし」「ボールはゴールの高さ(1.2メートル)を超えて上げてはいけない」「フィールドプレーヤーはゴールエリアに進入禁止」というルールもある。

 そして日本のローカルルールで重要なのは「ボールを取りにいかない」、つまり相手がボールを持った時は前を塞ぐこと以外できないという規則があること。これによって年齢や性別、身体的ハンデを超えて一緒に楽しむことができる。

講習会修了→認定団体の承認を経て、様々なサポートを受けることも可能に

 JFAはこの「ウォーキングフットボール」普及のため、JFAサイトの中で「ウォーキングひろば」というページを設けた。そこでは各地での体験会の予定を知ることができる。また、家族や仲間でチームを作って参加できる「キリンファミリーチャレンジカップ」も開催している。

 今年5月31日に千葉で行われた「キリンファミリーチャレンジカップ2025」には、抽選で選ばれた32チームが、日本代表の遠藤航(リバプール/イングランド)や鈴木彩艶(パルマ/イタリア)、元日本代表の森脇良太氏や柏木陽介氏とプレーを楽しんだ。

 また、「ウォーキングひろば」では参加するだけではなく、イベントを開催するための方法も示されている。具体的には1人以上が「ウォーキングフットボールコーディネーター講習会」を修了し、その後JFAに申請を行って承認を受け「認定団体」になること。そうすればJFAのサイトへの情報掲載や、チラシ/横断幕のテンプレートの提供など、様々なサポートが受けられるようになる。

 この「ウォーキングフットボール」に興味が湧いたら、6月に刊行された「はじめよう! ウォーキングフットボール」(松田薫二・日本ウォーキングフットボール連盟代表理事・日本障がい者サッカー連盟専務理事)に、初歩から戦術的な動きまで説明されているので、そちらを参考にしていただきたい。

 なお、「キリンファミリーチャレンジカップ2025」では遠藤が股を抜かれて失点してしまう、プレミアリーグでは見られないような珍しい場面もあった。こういう意外なことが起きてしまうのも、この「ウォーキングフットボール」の魅力と言っていいだろう。

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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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