前年王者に悪夢…0-5大敗「飲み込まれた」 プロ注目ドリブラーの“一生忘れない敗戦”

昌平の長璃喜「本当に初めての経験でした。レベルが違いすぎました」
7月26日から福島県で開催されているインターハイ男子サッカー。全国の予選を突破した51校が真夏の王者の栄冠をかけて激しく火花を散らすこの大会で、躍動を見せながらも、志半ばで「敗れし者たち」をピックアップしていく。
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第15回は準々決勝において、大津との“プレミアリーグ対決”に0-5で敗れた昌平のプロ注目MF長璃喜について。ちょうど1年前のインターハイ決勝では2年生MFとして大車輪の活躍を見せ、神村学園を相手に2ゴール1アシストと大暴れを見せた俊英ドリブラーが、高校最後の夏で突きつけられた現実とは――。
「何をしても防がれるし、何をしても奪われるし、本当に初めての経験でした。レベルが違いすぎました」
素直な思いだった。2連覇をかけて臨んだ今大会、チームはプレミアリーグEASTで4連敗と、決して万全の状態で来たわけではなかった。それでも初戦を4-1で飾り、長も2点目をマークすると、3回戦では難敵の阪南大高を2-0と下してベスト8まで駒を進めた。
しかし、準々決勝で悪夢が待っていた。2日にわたって行われた試合で、前後半2本ずつしかシュートが打てず、逆に17本(前半7本)のシュートを浴びて大量失点を喫した。長もシュートを1本も打つことなく、タイムアップのときを迎えた。
「後半の立ち上がりの入りは良かったのですが、1回崩された(後半14分の失点)時に、そのまま飲み込まれてしまった。僕個人も完全な実力不足。チームが苦しいときに点を決めたり、個で打開したりする力が足りなかったです」
悔しさしか残らなかった。だが、この試合で気迫あふれるプレーを見せた山口に引っ張られるように、試合終盤にハーフウェーライン付近から何度もドリブルを仕掛け、前に運んでいく力強さは見せた。
大津も長と山口には必ず複数枚のマークを当てて、すぐに囲い込むなど徹底した包囲網を敷いてきた。そのなかで、20~30メートルの距離を一人で運んでいく2人のプレーに昌平の底力を感じた。
「昨年は3年生にいろいろ助けられてお膳立てしてもらった部分があった。今年は対策をされていくなかで、僕がボールを受けることで、周りの選手が前に行きやすい、向いやすいプレーをすることを心がけていたのですが……。運ぶドリブル、つなげるドリブル、周りを生かすドリブルをもっと磨いていかないといけないと思いました」
ドリブルは唯一無二の武器だ。繊細な両足のボールタッチと地を這うように加速し、変化したコースを辿っていくドリブルは分かっていても止められない。スピード、キレ、ドリブルからのパスと強烈なシュートを持ち、ゴール前に飛び込んでワンタッチのシュートも決めることができる。
アタッキングサードで持ち味を発揮されたら、相手にとって脅威しかない。だからこそ、そこに至るまでの過程にも目を向けて、彼は自己研鑽を続けている。
「Jクラブの練習に参加をしたときに、ちょっとしたポジショニングで相手を迷わせる、惑わせるなど、細かい技術がすごかった。たった1つのトラップ、ボールの置き所で選択肢が増えたり、判断が早くなったり、勝負は細部に宿っているんだなと。その一方で特徴があるという面では改めて自分の武器だと思ったので、両方を伸ばしてこうと思っています」
稀有なドリブラーに対し、複数のJ1クラブが獲得に動き出している。まだ進路は決まっていないが、今後プロサッカー選手として生きる術と必要なものを認識しながら前に進む彼にとって、こうしたショッキングな敗戦から学ぶことは多いだろう。一生忘れない敗戦として、自身の血肉に変えていくその姿をこれからも追いかけていきたい。
(FOOTBALL ZONE編集部)




















