浦和102億円vsレアル1672億円…“10倍超格差”の現実 欧州名門に学ぶJリーグ生存戦略

格差を埋める参考…Jリーグも中間目標に挙げているベンフィカ
サッカークラブの長者番付、デロイト社の「フットボール・マネーリーグ」における2023-24シーズンの収益トップはレアル・マドリードで約1672億円。一方、2024年Jリーグ収益トップの浦和レッズは約102億円なので10倍以上の差がある。
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Jリーグは収益倍増を目標に掲げているが、倍増したところで欧州トップ10の1000億円クラスには全く届かない。欧州と日本の収益格差を生み出しているのは放映権料だ。
プレミアリーグの放映権料は年間2700億円を超えている。一方、Jリーグは210億円。収益トップ10の6チームを占めているプレミア勢の放映権料はJリーグの約10倍なのだ。
収益構造を見ると欧州は50~60%が放映権料、対してJリーグは6.5%にすぎない。収益の割合が大きいのはスポンサー収入である(46.6%)。この収益構造が変わらないかぎり、欧州との収益格差も縮まらないわけだ。
かといって、Jリーグの放映権料を何倍増にもするのは困難だろう。アジア市場が鍵になるが、アジアの人々がプレミアリーグよりJリーグを見たがるとは現状思えない。一足飛びに欧州トップクラスと肩を並べるなど夢また夢なわけだが、その差を縮める手立てがないわけではない。そこで参考になりそうなのがベンフィカである。
ポルトガルのSLベンフィカは1904年創設の名門クラブ。2部降格がなく、FCポルト、スポルティングCPとともにポルトガルのビッグ3の地位を堅持してきた。サポーターは全世界に1400万人いるとされ欧州でも最大級。クラブを所有するソシオは20万人いる。ポルトガルの人口1070万人の半数以上の600万人がベンフィカのファンだそうだ。
2023-24シーズンの収益は25位(約307億円)。1000億円規模のプレミア勢、それに次ぐラ・リーガ、セリエAのビッグクラブには及ばないが、ベンフィカはその次くらいの位置づけになる。Jリーグも中間目標に挙げているクラブだ。
Jクラブ収益アップの近道は? これなしに収益を劇的に上げるのは困難
収益構造はスポンサー収入、入場料、放映権、その他に分類されるが、Jリーグが飛躍的に増やせる余地があるのは「その他」である。主に移籍金収入。ベンフィカは収益の50%が移籍金収入という、欧州トップクラスとしてはかなり特殊な収益構造になっている。移籍収支の黒字では世界トップクラス。優秀な若手を育成してトップチームに登用、ビッグクラブに売却して収益を上げ、それをまた育成に投資するというサイクルを作っている。
ベンフィカはエミレーツ航空など国際的なスポンサーを持ち、ホームのエスタディオ・ダ・ルスは6万5647人収容の規模。入場料、スポンサーの収入も大きいので、Jクラブはこの点も見習わなくてはならないが、着目すべきはやはり移籍金収入である。むしろこれなしに収益を劇的に上げるのは困難だろう。
Jリーグは優秀な選手を輩出する輸出型リーグになっている。これをさらに加速させ、移籍金収入を倍増させることが収益アップの近道になると思われる。これまで以上に世界的な選手を生み出すために正しく投資する、欧州クラブとのパイプを太くする、欧州ツアーなどで国際的な露出を高めるなど、知恵を絞って移籍金で稼ぐ体制作りが必要だろう。
Jリーグは2026-27シーズンからシーズン移行を開始する。8月開幕なので暑さ回避というより欧州、ACLとシーズンを合わせるのが目的である。移籍はよりスムーズになるはずで、まずは来年の夏の移籍動向がどうなるかが注目される。
(西部謙司 / Kenji Nishibe)

西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。




















