試合運営から大会の主役へ「1日中いいなと…」 初の決勝進出、歴代最強チームとの大一番

聖和学園フットサル部が初の決勝に挑む【写真:河合 拓】
聖和学園フットサル部が初の決勝に挑む【写真:河合 拓】

フットサル選手権の決勝ですみだファルコンズと聖和学園が対戦する

 高校年代のフットサル日本一を決める第12回U-18フットサル選手権大会が、浜松アリーナで開催されている。8月2日には準決勝が行われ、大会初の3連覇を目指すフウガドールすみだファルコンズと初の決勝進出を果たした聖和学園フットサル部が3日に行われる決勝進出を決めた。

【PR】DAZNを半額で視聴可能な学生向け「ABEMA de DAZN 学割プラン」が新登場!

 日本サッカー協会の公式HPにある歴代優勝チーム一覧を見ると、第1回大会の欄には「聖和学園FC」という名前がある。これは多くのプロサッカー選手も輩出している同校のサッカー部であり、フットサル部は県大会でサッカー部に敗れていたことで、全国大会の舞台に立てなかったのだ。

 続く第2回大会では、ゼビオアリーナと仙台市体育館が開催地となったことに加え、優勝枠もあったことから宮城県から1チーム、東北から2チームが出場可能となり、聖和学園のサッカー部2チーム(聖和学園FCとSC聖和学園)とフットサル部も大会に出場できた。この大会では聖和学園FCがベスト8入りを果たし、SC聖和学園も1勝を挙げたが、フットサル部は1次ラウンド3戦全敗に終わっていた。

 当時から指揮を執っていた菊池宏志監督は「何もできなかったところから始まった」と、この大会を振り返る。それでも、この経験を生かして次の全国大会で上位を目指すという流れになれば良かったが、より悔しい時期を過ごすこととなる。

 全国大会が仙台で開催された第3回大会、第4回大会も再び県大会でサッカー部に敗れて、フットサルの全国大会にも関わらずフットサル部ではなく、サッカー部が出るという状況に陥ったのだ。

「県大会で負けて全国大会に出られなくて、フットサル部はゼビオアリーナで運営をしていました。サッカー部が試合をしているなか、僕らはボールパーソンをやって1日中『いいな』と言っていました。でも、絶対にこの舞台でフットサルをして、戦えるようになって結果を出したいと思っていました」(菊池監督)

 穏やかな菊池監督は、自身の立てた誓いに邁進していく。フットサル部は当時、誰でも入部できる状況で多い年には部員数が50人を超えることもあった。しかし、指導の目を届かせきれないこと、十分な試合環境のない東北地域で選手を抱え過ぎることは子供たちのためにもならないと考えた菊池監督は、推薦入部の生徒を絞って指導を続けていった。

 潮目が変わったのは第5回大会だった。宮城県大会を聖和学園サッカー部の3チームに続く4位で突破した聖和学園フットサル部は、東北大会で快進撃を見せる。1次ラウンドを2戦全勝で突破すると、決勝ラウンドでも準決勝で聖和学園サッカー部ACに2-1で競り勝つ。そして決勝では聖和学園サッカー部U18と延長戦を終えて5-5という熱戦を演じ、最後はPK戦を3-2で制して東北大会を優勝して、全国大会の扉を開いた。地力をつけた聖和学園フットサル部は、この第5回大会から現在開催されている12回大会まで、東北代表として全国大会に出場し続けている。

 初めて全国大会に出場した第2回大会で3連敗を喫した際には、「東北に3枠は多いのではないか」という批判も浴び、悔しい思いをした菊池監督の率いるチームは、全国大会でも結果を出すチームになっていく。第9回大会では初めて準決勝進出を果たした。準決勝では、現在スペイン1部リーグで活躍している日本代表FP原田快を擁するペスカドーラ町田U-18に1-3で敗れたが、3位決定戦では藤井学園寒川高校に4-3で勝利し、フットサル部が初めてメダルを手にすることとなった。

 今大会で3大会ぶり2度目の準決勝進出を果たした聖和学園フットサル部は、関東王者の東急SレイエスFCフットサルU-18をPK戦の末に3-2で破り、初の決勝進出を決めた。勝利した直後、菊池監督は両手を広げて3度小さくジャンプして、10年以上を費やして成し遂げた全国大会の決勝進出を喜んだ。

 初の決勝進出に達成感を感じるなと言うほうが無理な状況だ。それでも菊池監督は「でも、日本一になることが目標だったし、『やるなら日本一を目指そう』とずっと言ってきたので」と喜びを抑えつつ、「何もないところから始まったチームですし、この子たちも決してフットサルのエリートではありません。一つひとついろんな人にお世話になって、ヴォスクオーレ仙台や東北の地域の方々に支えてもらって、目標になるようなチームになってきたかなと思います。どこに行っても聖和フットサル部らしく、積み重ねてこれたことが、今日勝ち切れた要因だったのかなと思います」と、頂点に王手をかけたチームに胸を張った。

 近年では聖和学園フットサル部からFリーグのクラブや強豪大学フットサル部に進む選手も多い。今年のチームにもFクラブや大学から声をかけられている選手が複数いて、今後もフットサル界での活躍が期待される。そんな選手たちが対戦するのは、大会前から優勝の筆頭候補に挙げられていたフウガドールすみだファルコンズだ。

 すみだファルコンズには、すでにフウガドールすみだの主力としてFリーグのピッチにも立つ高校2年生のU-20フットサル日本代表FP行木詩心優を筆頭に、高いスキルを持つ選手がそろっている。そのうえ、前人未到の大会連覇を果たして今大会は3連覇に挑んでいる東京の名門は、大会史上最も完成度の高いチームに仕上がっており、準決勝では聖和学園フットサル部が1次ラウンドで0-2のスコアで敗れていたペスカドーラ町田U-18を1-0で下している。

 大会のボールパーソンからファイナリストになった聖和学園フットサル部。彼らが手にするメダルの色を決める大一番は、3日の13時にキックオフを迎える。

(河合 拓 / Taku Kawai)



page 1/1

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング