米子北の熊野俊典「中学になると米子北でサッカーをすることが目標になったんです」

　7月26日から福島県で開催されているインターハイ男子サッカー。全国の予選を勝ち抜いた51校が、真夏の王者の座を懸けて激闘を繰り広げるなか、今大会では惜しくも敗れた「敗れし者たち」に焦点を当てていく。

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　第10回は、3回戦で飯塚を相手にクリーンシートで抑えながらもPK戦の末に敗れた米子北の2年生CB熊野俊典について。昨年は1年生ながらDFリーダーとしてインターハイベスト4入りに貢献したプロ注目のセンターバックを突き動かすものとは――。

　昨年は1年生ながら堅守・米子北のDFラインの中心に君臨し、インターハイベスト4を経験した。あれから1年、彼はフィジカルと精悍さを増して福島の地に戻ってきた。

「ベスト4に入れた喜びより、優勝できなかった悔しさのほうが強かったので、今年は2年生ですが自分が中心となってチームを引っ張るつもりで臨みました」

　この言葉通り、DFリーダーとして高い統率力と対人の強さ、空中戦の強さを披露し、今大会をクリーンシートで終えている。だが、チームは2試合で1点しか奪えず、前述したとおり3回戦でPK負けを喫した。

「無失点でしたが、もっと僕がゴールに直結するようなパスを出せていたら、もっと周りとコミュニケーションを取って、最終ラインをしっかりとコントロールできていたら、もっと攻撃の時間を増やせていたかもしれない。そこは自分の力不足を感じました」

　厳しい自己評価。試合後、一番号泣していたのは熊野だった。彼がそれほど強い責任感を持っているのは、チームに対する深い愛情があるからこそであった。

　大阪府出身の彼は小学生のときに高校選手権をテレビで見て、米子北のサッカーに大きな衝撃を受けたという。

「当時から米子北は堅守速攻のサッカーをやっていて、その戦い方がすごく好きだったんです。最初はそれが米子北とは知らないで、『白いチーム強くて面白いな』と思って見ていましたが、中学になると米子北でサッカーをすることが目標になったんです」

　高校進学時には大阪や府外の複数の強豪校から声がかかったが、米子北からは声が掛からなかった。だが、「もう米子北一択だったので、中学のコーチに頼み込んで連絡をしてもらい、練習参加を取り付けてもらいました」と自力でアプローチをし、練習参加の末にオファーをもらって即答した。

「実際に入学してから感じるのは、練習から1対1の激しさが凄まじくて、広い視野とキックの精度、運動量も求められる。試合になったら全員で声を出して、一体感が凄まじい。自分の長所である守備力を伸ばせるし、ビルドアップやフィードなどの短所も磨いてくれる、外から見ても、中から見ても素晴らしいチームだと思っています」

　待ち望んだ環境で力を磨く誇りと感謝の気持ちを抱いているからこそ、勝たせられなかったことへの悔しさが心の底からこみ上げてくる。彼が見せた涙は、チーム愛から湧き上がる、もっとうまくなりたい、もっと強くなりたいという純粋な思いの強さの表れだった。

「中学からずっとCBをやってきて、やればやるほどプレーする意義や楽しさを感じられるんです。FWのような輝きではなく、どちらかというと渋い光かもしれませんが、CBの醍醐味はシュートブロックや絶対的なピンチを凌いだ瞬間に味わう高揚感。1失点になるようなシーンを防ぐことも得点と同じ価値だと思っているので、CBというポジションにやりがいを感じています。

　だからこそ、もっともっとこだわりを持ちたいし、僕がいる代で米子北史上初の全国優勝（過去最高は2年生だったCB昌子源を擁した奈良インターハイと、FW佐野航大がいた福井インターハイの準優勝）を何がなんでも成し遂げたいので、ここから這い上がっていきたいです」

　米子北に憧れた純粋な心を持ち続ける注目CBは、自分の立てた本気の目標に向かって、ただ真っ直ぐに突き進んでいく。また来年、さらに強くなって福島の地に戻ってくることを誓って。