元Jリーガー監督の助言「運ぶプレーを」 ボランチ経験で開花…プロ見据える高校生CB

浜松開誠館の岩瀬琢朗「先輩たちのように将来的にはプロサッカー選手になりたい」
7月26日から福島県で開催されているインターハイ男子サッカー。全国の予選を勝ち抜いた51校が、真夏の王者の座を懸けて激闘を繰り広げるなか、今大会では惜しくも敗れた「敗れし者たち」に焦点を当てていく。
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第8回は、3回戦で山梨学院の前に後半立ち上がり4分間で2失点を喫し、0-2で敗れた浜松開誠館のCB岩瀬琢朗について。激戦区・静岡を堅守で制したDFリーダーが大切にしていることとは。
“破天荒”。浜松開誠館の横断幕、そして練習着にはこの3文字が大きく描かれている。
破天荒とは今まで誰も成し得なかったことを成し遂げること、前人未到の意味を持つ。2002年に浜松開誠館中学サッカー部に元Jリーガーの青嶋文明監督が就任してから、静岡学園、藤枝東、清水桜が丘(旧・清水商業)、浜名、東海大翔洋(旧・東海大一)といった古くからの名門校がひしめく静岡県において、新たな風を巻き起こし、浜松市から日本一のチームを創るというビジョンを掲げて歴史が始まった。
2004年に全国中学サッカー大会で初出場・初優勝を成し遂げ、2005年に高校のサッカー部が創部され、青嶋監督が初代監督に就任をした。
ここからプリンスリーグ東海に昇格を果たし、竹内涼(ファジアーノ岡山)、松原后(ジュビロ磐田)ら複数のJリーガーを輩出したが、全国大会が遠かった。2018年に悲願の全国大会初出場となる選手権に出場をすると、2022年にも2度目の出場を果たした。
しかし、夏だけが取れていなかった。この壁を打ち破ったのが今年のチームだ。県予選準決勝ではプレミアリーグWESTに所属する静岡学園と激闘を演じた。スコアレスドローのまま延長戦でも決着がつかず、PK戦の末に撃破。これで勢いに乗り、決勝では磐田東を1-0で下して、創部21年目で初のインターハイ出場を手にした。
チーム史上初の無失点優勝。堅守を構築したディフェンス陣の中枢となったのがセンターバックの岩瀬だった。182センチのサイズを持ち、ハードマークと空中戦の強さを持つが、彼の一番の魅力はボールを運ぶ力だ。
今年のチームは前線からの激しいプレスからのカウンターと最終ラインからのビルドアップから崩していく形の両方を状況に応じて使い分けられるのが強み。その強みをもたらしている1人が岩瀬で、最終ラインでボールを動かしながら、相手のトップ下やFWが食いついてきた瞬間にすかさずボールを前に運び出して、ボランチラインまで侵入をしてから刺すパスや展開するパスを供給する。
守れて、統率できて、運び出して配球もできる。ハイスペックなセンターバックが誕生したのは、青嶋監督からのアドバイスがきっかけだった。東京のForza’02からやってきた岩瀬は、「練習参加をしてみて、全員がチームのために戦っている印象を受けた。僕もここで熱く戦いたいと思った」と地元を離れる決意をした。
ハードマークが売りのセンターバックとして新たな環境に飛び込み、1年生からトップチームに帯同した。だが、高校2年生になるとポジション争いが激化したのと、足元の技術の高さに着目されてボランチにコンバート。
「ボールを運ぶことを得意としていなかったので、最初は戸惑いました。でも、青嶋監督から『運ぶプレーをもっとやったほうがいい』と背中を押されて意識するようになったら、成功することが出てきて、どんどん自信がついていきました」
ボランチとしてはレギュラーを掴めず、昨年はプリンス東海に2試合ほどしか出場をしていない。だが、新チームが立ち上がってセンターバックに再コンバートされると、大きな気づきを得ることができた。
「1枚剥がすことができたら、一気にプレーの選択肢が広がる。最終ラインから運び出すことの意味と強みを理解できるようになったので、最終ラインから運び出すことが自分の武器だと思えるようになりました」
360度からプレスが来るボランチと違って、センターバックは前から来るのみとプレスが限定されることで、相手のプレスが2年前よりもクリアに見えることに気づいた。
「相手が自分に対してパスコースを切ってきたり、プレッシャーを与えるプレスを仕掛けてきたりするのですが、相手の考えていることを読み取れるようになりました」
広がっていくプレーの幅。初のインターハイでも初戦の立命館守山戦では7-0とクリーンシートで大勝し、チームとして全国大会初勝利を手にした。3回戦の山梨学院戦でも安定した守備を見せていた。あの5分間以外は――。
スコアレスで迎えた後半開始直後の1分にPKを献上して先制されると、4分に追加点。そこからスコアは動かなかった。
「一瞬の隙というか、甘さが出ました。立ち上がりで相手の勢いを一気に受けてしまった」
試合後、彼は“魔の4分間”を悔やんだが、「チームとして初のインターハイで、僕自身も初の全国で、強豪校の強度を知ることができたことは大きなことだし、もっと隙を見せないで自分の色を出せるセンターバックになるために、ここから地道にやっていきたい」と大きな刺激と学びを手にした。
「これからも開誠館が大事にしている自分で考えて、率先して行動することを実践して、先輩たちのように将来的にはプロサッカー選手になりたい。まずは選手権予選で隙を与えずにもう一度激戦区を突破して、全国でリベンジをしたいと思っています」
受け継がれる“破天荒”。まだまだ成し遂げないといけない目標はたくさんある。卒業後もこの3文字を胸に刻んでサッカーに打ち込んでいく覚悟を持って、成長著しいセンターバックは前人未到の地を追い求めてチャレンジをしていく。
(FOOTBALL ZONE編集部)




















