リバプールが日本で示した“課題”と“収穫”は? 500億超の大変革がもたらした「副作用」

横浜FM戦で新戦力を起用したリバプール
プレミアリーグ王者リバプールは7月30日、「明治安田Jリーグワールドチャレンジ2025 presented by 日本財団」で横浜F・マリノスと対戦し、3-1で逆転勝利を飾った。今夏の移籍市場で大刷新を図るチームにとって、日本での一戦は、事実上の試運転の場にもなったなか、“課題”と“収穫”が垣間見える内容となった。
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近年は移籍市場で控えめな姿勢を見せていたリバプールだが、今夏は一転して積極的な補強に踏み切っている。プレミア史上最高額となる総額1億1600万ポンド(約228億円)で獲得したドイツ代表MFフロリアン・ヴィルツを筆頭に、オランダ代表DFジェレミー・フリンポン、ハンガリー代表DFミロシュ・ケルケズ、フランス人FWウーゴ・エキティケといった若きトッププレーヤーたちを加え、総額はすでに約500億円を突破している。加えて、スウェーデン代表FWアレクサンデル・イサクの獲得にも1億2000万ポンド(約238億円)を投じる構えだという報道もある。
そのなかで、右ウイングのエジプト代表FWモハメド・サラーを除く攻撃陣は、大幅に刷新されることとなり、横浜FM戦では7月23日に加入したばかりのエキティケが最前線でスタメン起用され、ヴィルツはトップ下に配置された。しかし、前半はほとんど見せ場がなく、横浜FMに押し込まれる展開が続き、スコアレスでハーフタイムを迎えた。注目のヴィルツは持ち味を発揮しきれず、期待されていたほどの働きを示せなかった。
もちろん、リバプールはオフシーズンの遠征であり、長距離移動や時差ボケなどの影響から、コンディションはおおよそ20~30%程度というのが実情だった。しかし、それを差し引いても、改善すべき点が浮き彫りになったのも事実だ。エキティケはまだ合流から日が浅く、連携面での成熟はこれからだが、そのプレースタイルがヴィルツのプレーに与える影響は否定できない。フランクフルト時代のエキティケは、前線で構える典型的なストライカーというよりも、トップ下や左サイドに流れてゲームを組み立てる“チャンスメーカー”としての動きが目立っていた。
英放送局「BBC」のアナリスト、ウミール・イルファン氏も「エキティケはボールを持つと中盤まで降りてきて、うまく立ち回る。まるでフィルミーノのようだ」と評し、かつて“偽9番”として活躍した元ブラジル代表FWロベルト・フィルミーノの役割に類似していると指摘。しかし、当時の4-3-3システムとは異なり、現在のシステムはトップ下にヴィルツを置く4-2-3-1システム。エキティケが中央に降りることで、トップ下エリアが密集し、ヴィルツにとってスペースのない“窮屈”な状況が生まれていた。レバークーゼン時代のように、センターFWにボールを当ててゴール前へ侵入する持ち味を、うまく発揮することができず、横浜FM戦の前半が厳しい内容になったのは、ある種の「副作用」と言えた。
そう考えると、エキティケが加入してもなお、イサク獲得に本腰を入れているのにも合点がいく。フロントの考えとして、エキティケは、おそらく今月頭に交通事故で急死したポルトガル代表FWディオゴ・ジョタの後任として獲得した要素が大きかったのだろう。ウルグアイ代表FWダルウィン・ヌニェスの退団が決定的となっている今、生粋の“ストライカー”タイプを補う必要性が改めて浮き彫りとなった。
16歳新鋭はディアスの「“穴”を埋めうる存在」
一方、最大の収穫は、16歳の新鋭FWリオ・ングモハの躍動だ。後半18分から途中出場すると、左サイドからの鋭いドリブル突破で何度もチャンスを演出。後半42分には、自陣中央付近でボールを受けると、そのままドリブルでペナルティーエリア手前まで運び、相手守備網に囲まれながらも右足を一閃。試合を決定づける3点目を叩き込んだ。
現地取材していたリバプール番記者のジェームズ・ピアース氏も、「個の打開力で違いを生むディアスの退団は痛手だったが、ングモハの切れ味を見れば、すでにその“穴”を埋めうる存在がスカッドにいると考えるのが自然だ」と太鼓判を押している。
センターバックの層の薄さは依然として不安材料だが、横浜FM戦では日本代表MF遠藤航がCBの一角を任される場面も見られ、今季はそのポジションでも計算されている可能性がある。今夏、アーセナルやチェルシーといったライバルクラブも次々と大型補強を行っており、例年以上に熾烈な優勝争いが予想される。今夏に大変革を施したリバプールもまた、プレミア連覇を達成するべく、王者として迎え撃つ準備を着実に整えている。
(城福達也 / Tatsuya Jofuku)




















